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認知機能を鍛えるには?日常生活でできるトレーニング方法と認知機能低下について解説

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近年「認知」という言葉を耳にする機会が増えています。「メタ認知」や「認知の偏り」といった表現に触れたことがある方も多いのではないでしょうか。

そもそも「認知」とは、物事をどのように捉え、理解し、意味づけるかという働きを指す言葉です。もともとは心理学や脳科学の分野で使われてきた用語ですが、現在では日常生活の中でも広く用いられるようになりました。そして、この「認知」を支えているのが、脳が担っている「認知機能」です。

人の顔を覚える、状況を判断する、会話の流れを理解するといった日常生活で欠かせない働きはすべて認知機能によって支えられています。そのため、私たちが日々の生活をスムーズに送るためには、この認知機能が適切に働いていることが欠かせません。

しかし、この認知機能は加齢、病気やストレス、生活習慣の乱れなどによっても低下することが知られています。その影響は日常生活の質に影響するだけでなく、場合によっては認知症の発症につながることもあります。

そこで今回は、認知機能低下について基本的な知識をわかりやすく解説するとともに、日常生活の中で無理なく取り入れられるトレーニング方法について紹介します。

認知機能を鍛えるためには

認知機能とはどんな働きか

認知機能を高める方法を考える前に、まずは「認知機能とは何か」を正しく理解しておくことが大切です。

認知機能とは、思考や言語、計算、見当識(時間や場所、自分の状況を把握する力)など、脳が担う知的な働きを幅広く含んだ総称です。つまり、特定の一つの能力を指す言葉ではなく、私たちの脳が行っているさまざまな働き全体を指しています。

その範囲は幅広く、言葉を理解し使う「言語機能」や、数を扱う「計算機能」といった学習の基盤となる力に加え、時間や場所を認識する「見当識機能」、物の位置関係や自分の立ち位置を把握する「空間認識機能」なども含まれます。さらに、認知機能は味覚・嗅覚・触覚・聴覚・視覚といった五感を支える重要な役割を担っています。

こうした認知機能の特徴は、それぞれが独立して働くのではなく、相互に連携しながら機能している点にあります。例えば、会話ひとつをとっても、言葉の理解、記憶、注意力、さらには相手の表情を読み取る視覚情報など、複数の機能が同時に関わっています。

認知機能を鍛えることとは

認知機能は脳の働き全般を指す言葉ですが、それを鍛えるということは、すなわち「脳そのものの働きを高めること」につながります。日常生活の質を維持・向上させるうえでも、認知機能を意識的に使い、保つことは重要な意味を持ちます。

ここで押さえておきたいのが、「認知機能トレーニング」と、一般的に知られている「脳トレ」とは同じものではないという点です。脳トレはパズルや計算問題など、特定の能力を集中的に使うものが多く、手軽に取り組めることから広く親しまれています。一方、認知機能トレーニングはもう少し広い視点に立ったアプローチです。

前述のとおり、認知機能は単一の能力ではなく、複数の機能が連携して働くことで成り立っています。そのため、認知機能を鍛えるとは、特定の力だけを伸ばすことではなく、さまざまな脳の働きを同時に使いながら、全体としてのパフォーマンスを高めていくことを意味します。

つまり、認知機能トレーニングの目的は「一部の能力を強化すること」ではなく、「脳全体をバランスよく使い、機能同士の連携を促すこと」にあります。この視点を持つことで、日常生活そのものがトレーニングの場となり、より実践的かつ持続的な取り組みにつながっていきます。

なぜ認知機能は低下するのか

一方で、認知機能を支える脳は、加齢とともに容量が減少する「萎縮」という形で変化が生じます。その影響は、もの忘れが増えたり、新しいことを覚えにくくなったりといった形であらわれます。そのため、ある程度の低下が避けられないものでもあります。しかし、その衰え方は一様ではなく、個人差が大きいことが特徴です。

その理由の一つに、脳の「使い方」が挙げられます。脳は日常的に使われている領域ほど機能が維持されやすく、反対にあまり使われない領域は衰えやすい性質があります。生活習慣や職業、日々の行動パターンによって、どの機能を頻繁に使うかは人それぞれ異なるため、結果として「衰えやすい部分」と「維持されやすい部分」に違いが生まれます。

さらに、認知機能の低下は加齢だけが原因ではありません。ストレスや睡眠不足、体調不良、環境の変化など、さまざまな要因によって一時的に認知機能が落ちることもあります。こうした変化は多くの場合、適切な休養や生活の見直しによって回復が期待できます。

しかし注意したいのは、この「一時的な低下」を放置してしまうケースです。本来であれば回復するはずの状態でも、低下したままの生活が長く続くと、その状態が常態化し、「それが普通」として定着してしまう可能性があります。

認知機能の変化は、日々の積み重ねによって左右されます。だからこそ、小さな変化を見過ごさず、早めに気づき、適切に対処していくことが大切です。ここからは、認知機能低下を引き起こす原因と、具体例を見ていきましょう。

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ストレスや睡眠不足

自力では解消しきれないストレスが蓄積しているときや、慢性的に寝つきが悪い状態が続いているときに、「さっき聞いたことが思い出せない」「普段ならしないようなミスが増える」といった変化を感じることがあります。

このようなとき、脳の働きそのものが一時的に低下しており、それに伴って認知機能も影響を受けています。いわば一時的にパフォーマンスが落ちている状態です。しかし、こうした低下は多くの場合、可逆的なものです。十分な休養を取り、睡眠やストレスの状態が改善されれば、認知機能も回復していくケースがほとんどです。

生活習慣・環境が与える影響

認知機能の低下には、加齢や疾患だけでなく、日々の生活習慣や環境の変化も大きく関わっています。特に見落とされがちなのが、生活リズムの乱れや生活環境の変化による影響です。

例えば、就寝時間が日によって大きく異なる生活や、頻繁な移動を伴う不規則な生活は、脳にとって少なからぬ負担となります。また、退職や長期の療養生活といった大きなライフイベントも、日常の活動量や外部からの刺激を変化させ、結果として認知機能に影響を及ぼすことがあります。

こうした環境要因による認知機能の低下は、徐々に進行するケースも多く、気づきにくいのが特徴です。そのため、一度低下した状態を元に戻すには時間がかかることもあり、生活全体を見直しながら、長期的に改善していく視点が求められます。

アルコールによる低下

アルコールも認知機能に影響を与える要因の一つです。飲酒によって酩酊した状態では、「聞いたことを覚えていない」「直前の出来事を思い出せない」といった経験をしたことがある方も多いでしょう。これはアルコールによって一時的に脳の働きが抑制され、記憶や判断に関わる機能が低下しているためです。

通常、このような変化はアルコールが体内から抜けることで回復します。しかし、過度な飲酒を繰り返したり、休肝日を設けない状態が続いたりすると、認知機能の低下が慢性的にあらわれることもあります。さらに進行すると、専門的な対応が必要となるケースも少なくありません。

このように、認知機能の低下には「一時的で回復が見込めるもの」と、「継続的な対策が必要となるもの」が存在します。それぞれの違いを理解し、早い段階で適切に対処していくことが、将来的なリスクを抑えるうえで重要です。

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認知症との関係性

これまで見てきたように、認知機能はさまざまな要因によって低下するものの、その多くは一時的であり、適切な対応によって回復が見込めるケースが少なくありません。

しかし、例外的なケースとして挙げられるのが「認知症」です。

認知症とは、単なるもの忘れや加齢による変化とは異なり、心身のトラブルや疾患によって認知機能が低下し、その結果として社会生活や日常生活に支障をきたしている状態を指します。つまり、「認知機能が落ちていること」そのものではなく、「生活に影響が出ている状態」であることが重要なポイントです。

認知症の原因となる疾患は非常に多岐にわたり、代表的なものとして知られるアルツハイマー病をはじめ、その数は100種類以上あるとされています。中には、甲状腺機能障害などのように、適切な治療によって改善が期待できるタイプも存在します。

一方で、多くの認知症は、現時点では完全に元の状態へ回復することが難しいとされています。まず、原因となる疾患自体が、認知症と診断される段階に至るまでに進行していることが多く、根本的な治療が難しいケースが少なくありません。さらに、加齢による脳の変化や、長年の生活習慣の影響なども複雑に絡み合い、症状の進行に関与しているなど、その背景には、いくつかの要因が重なっています。

このように、認知症は単一の原因で起こるものではなく、さまざまな要因が重なり合って生じる状態です。だからこそ、日常的に認知機能の変化に目を向け、早い段階で気づき、適切に対応していくことが重要なのです。

日常生活でできる認知機能トレーニング方法

認知機能を支える脳は、「可塑性(かそせい)」と呼ばれる性質を持っています。これは、経験や学習によって構造や働きが変化するという特徴であり、年齢を重ねてもなお、適切な刺激によって機能の維持・向上が期待できることを意味します。

実際、脳にはいまだ解明されていない部分も多く残されており、その可能性については現在も研究が進められています。そうした中で、脳の可塑性の高さを示す興味深い例としてしばしば紹介されるのが、アルツハイマー病の所見がありながらも、生前ほとんど認知機能の低下が見られなかったとある修道女(シスター)のケースです。

この修道女は、亡くなった後の解剖によって、アルツハイマー病特有の脳の萎縮が確認されました。しかし生前は、明晰な思考力や深い洞察力を保ち続けていたとされ、晩年に書かれた手紙からもその知的な状態がうかがえます。

この現象は、「認知予備能(cognitive reserve)」と呼ばれる考え方で説明されることがあります。日頃から知的活動を積み重ね、脳をよく使ってきたことで、仮に脳に物理的な変化が生じても、それを補うだけの余力が備わっていたのではないか、という見方です。

この例からもわかるように、認知機能の維持において重要なのは、「脳を継続的に使うこと」です。特別なトレーニングだけでなく、日々の生活の中で意識的に頭を働かせることが、大きな意味を持ちます。

次の項目では、日常生活に取り入れやすい具体的なトレーニング方法について見ていきましょう。

運動で集中力を向上

運動が心肺機能や基礎体力の向上といった身体面に良い影響をもたらすことは広く知られていますが、運動がもたらすポジティブな効果はそれだけにとどまりません。近年の研究では、運動が脳の働きや認知機能の向上に寄与することが示されています。

その理由の一つが、脳のエネルギー消費の大きさにあります。脳は体重の約2%ほどの重さしかありませんが、全身のエネルギーの約20%を消費する、非常に活動量の多い器官です。そして、この脳に必要なエネルギーや酸素を届けているのが血流です。

運動を行うことで血流が促進されると、脳へのエネルギー供給もスムーズになり、結果として脳の働きが活性化しやすくなります。また、体力が向上することで疲れにくくなり、集中力の維持にもつながります。さらに、肩こりや腰痛の改善といった副次的な効果も期待でき、日常生活全体の快適さを底上げしてくれる点も見逃せません。

認知機能の向上を目的とした運動は、特別なものである必要はありません。ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなど、自分が無理なく続けられるもので十分です。ポイントは、「少し息が弾む程度」の強度で、楽しみながら継続することです。

慣れてきたら、有酸素運動の時間や頻度を少しずつ増やしていくのもよいでしょう。血流がより促進され、脳の活性化にもつながりやすくなります。日常の中に無理なく運動を取り入れることが、認知機能を支えるシンプルで効果的な習慣となります。

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判断力・段取り力を使う習慣

認知機能の中でも、日常生活に大きく関わる重要な働きの一つが「実行機能」です。これは、物事を整理し、判断し、手順に落とし込み、計画的に実行していく一連のプロセスを支える機能を指します。

実行機能が活躍する場面は非常に幅広く、例えば「献立を考えて必要な食材を買い揃え、段取りよく料理を作る」といった一連の家事や、「会議に向けて情報を整理し、目的や議題を明確にして準備する」といったビジネスシーンにも深く関わっています。いずれも、「今この瞬間」だけでなく、その先を見通しながら行動を組み立てる力が求められます。

こうした実行機能は単独で働くわけではなく、記憶や注意力、思考力など、さまざまな認知機能と連携して成り立っています。そのため、判断力や段取り力を意識的に使うことは、結果として脳全体をバランスよく活用することにつながります。

日常の中でこの力を鍛えるには、少しだけ「考える余白」を持った行動を取り入れるのがおすすめです。例えば「休日にレシピを調べて献立を組み立て、買い物から調理、盛り付けまでを一通り行ってみる」、あるいは「会議後に内容を整理し、要点をまとめて関係者に共有する」といった取り組みが挙げられます。

会話・人との関わりを活かした刺激

人と会話をすることは、実は脳にとって非常に高度で、多くの機能を必要とする活動です。単に言葉を交わすだけでなく、その裏側では多くの認知機能が同時に動いています。

例えば、相手の話を聞き取り、内容を理解し、さらに表情や声のトーン、場の空気を読み取りながら、適切な返答を考えて発言する。この一連の流れには、記憶力、注意力、言語機能、判断力など、さまざまな機能が関わっています。

また、自分が話す側に回る場合も同様です。伝えたい内容を整理し、相手に伝わる形で言葉として表現しながら、相手の反応を見て話し方を調整する。このプロセスもまた、複数の認知機能を連携させて行う複雑な作業です。

さらに、人と対面する場面では、相手の表情を読み取り、その場にふさわしい振る舞いを選択するといった「社会的な判断」も求められます。こうした環境に応じた行動の選択も、脳にとっては重要な刺激となります。

このように、人と会い、会話をすることは、脳のさまざまな領域をバランスよく使う機会になります。特に、日常生活がルーチン化していたり、人と関わる機会が少ない環境にある場合には、意識的に会話の機会を増やすことが、脳への良い刺激となります。

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認知機能トレーニングに期待できること・できないこと

ここまで日常生活の中で取り入れられる認知機能トレーニングについて見てきましたが、いわゆる「特別なトレーニング」というよりも、日々の行動を少し工夫する内容が中心のため、「思っていたよりも簡単だな」と感じた方もいるかもしれません。

認知機能トレーニングにおいて、あらためて押さえておきたいのは、脳の性質です。脳は可塑性が高く、使い方によって変化する一方で、「よく使う領域は維持されやすく、使わない領域は衰えやすい」という特徴を持っています。つまり、認知機能トレーニングの本質は、特定の能力だけを伸ばすことではなく、脳全体をバランスよく使う機会を増やすことにあります。

そのため、日常の中で「考える」「判断する」「人と関わる」といった行動を意識的に増やすだけでも、十分に意味があるのです。さらに、これまであまり経験してこなかったことや、少し苦手意識のあることに挑戦する場面では、脳はより活発に働きます。新しい刺激に触れること自体が、認知機能にとって良いトレーニングになります。

トレーニングだけでは補えない部分

しかし、ここまで紹介してきた認知機能トレーニングは、決して万能ではありません。

特に、疲労や睡眠不足といった身体的な不調、強いストレスや環境の変化といった外的要因による認知機能の低下に対しては、トレーニングだけで元の状態に戻すことは難しいとされています。この場合は、まず原因となっている状態そのものを整えることが優先されます。

また、脳梗塞などの脳血管疾患や、アルツハイマー病に代表される神経変性疾患など、脳そのものに変化が生じているケースでは、認知機能トレーニングによって一定の回復や進行の抑制が期待されることはありますが、完全に元の状態へ戻すことは難しいのが現状です。

つまり、認知機能トレーニングはあくまで「脳の働きを引き出し、維持・補助するための手段」であり、すべての問題を解決するものではありません。その効果を十分に発揮するためには、土台となる心身の健康や生活環境が整っていることが前提となります。

ここからは、認知機能トレーニングの効果をより高めるために、日常生活の中で意識したい心身と脳の健康を守る取り組みについて紹介していきます。

認知機能トレーニングをより活かすために

生活習慣の改善

認知機能トレーニングの効果を十分に引き出すためには、その土台となる生活習慣を整えることが欠かせません。どれだけ意識的に脳を使っていても、日々のリズムが乱れていては、その効果が十分に発揮されない可能性があるからです。

私たちの身体には「概日リズム(サーカディアンリズム)」と呼ばれる体内時計が備わっています。昼になると空腹を感じ、夜になると眠くなり、朝には自然と目が覚める――こうした日常のリズムは、この体内時計が正常に働くことで保たれています。

しかし、昼夜が逆転した生活や、不規則な睡眠習慣、外出や運動の機会が極端に少ない生活が続くと、このリズムが乱れてしまいます。その結果、自律神経のバランスが崩れたり、慢性的な疲労やストレスを感じやすくなったりと、心身にさまざまな影響があらわれます。こうした状態では、認知機能そのものにも悪影響が及び、せっかくのトレーニング効果も十分に活かせなくなってしまいます。

だからこそ、まず見直したいのが生活習慣です。規則正しい睡眠、適度な運動、日中の活動量の確保といった基本的な要素を整えることが、結果として脳の働きを支え、認知機能トレーニングの効果を高めることにつながります。

次からは、こうした生活習慣を具体的にどのように整えるか、その実践方法について詳しく見ていきましょう。

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認知機能を支える食生活

私たちの身体はもちろん、脳もまた日々の食事によって支えられています。どのようなものを食べるかは、心身の健康だけでなく、認知機能の状態にも大きく影響します。

「五大栄養素」という言葉にあるように、私たちの身体は、たんぱく質・脂質・糖質といったエネルギー源に加え、ビタミンやミネラルなど、さまざまな栄養素によって成り立っています。そして、これらは基本的に食事から摂取する必要があります。

そのため、認知機能を支える食生活の基本は、特定の食品に偏ることではなく、さまざまな栄養素を過不足なく取り入れる「バランスの取れた食事」にあります。主食・主菜・副菜を意識した食事や、色の異なる食材を取り入れる工夫など、日々の積み重ねが重要です。

近年では、脳の働きに良い影響を与えるとされる食品や栄養素についても多く紹介されていますが、それらはあくまで補助的なものです。土台となる食生活のバランスが整っていてこそ、その効果が活かされます。

まずは無理のない範囲で、栄養バランスを意識した食事を心がけてみましょう。そのうえで、自分の好みや生活スタイルに合わせて、脳に良いとされる食材を適宜取り入れることをおすすめします。

質の良い睡眠で心身と脳をリフレッシ

睡眠が脳にとって欠かせないものであることは広く知られていますが、近年の研究では「どれだけ眠るか」だけでなく、「どれだけ質の高い睡眠をとれているか」が、脳のコンディションに大きく影響することが明らかになっています。

特に睡眠中、脳は日中の活動で生じた老廃物を排出し、情報の整理や記憶の定着を行う「メンテナンス」の役割を担っています。つまり、十分な睡眠を確保することは、その日の疲れを取るだけでなく、将来にわたる脳の健康を守るうえでも非常に重要なのです。

また、睡眠の質は睡眠時間と密接に関係しています。いくら睡眠環境を整えても、そもそもの睡眠時間が不足していては、質の高い睡眠を得ることは難しくなります。日本人は主要先進国の中でも睡眠時間が短い傾向にあるとされており、日常的に睡眠を削る習慣は、知らず知らずのうちに脳へ負担をかけている可能性があります。

さらに、「睡眠負債」と呼ばれる、慢性的な睡眠不足の蓄積にも注意が必要です。短時間睡眠が続くと、その影響は少しずつ積み重なり、集中力や判断力の低下といった形であらわれてきます。

質の良い睡眠を確保するためには、まず十分な睡眠時間を確保することが前提となります。そのうえで、就寝・起床時間をできるだけ一定に保つ、寝る前の過ごし方を見直すといった工夫を取り入れることで、より安定した睡眠リズムを整えていくことが大切です。

『認知症と向き合う365』を活用したセルフモニタリング

認知機能トレーニングや生活習慣の改善に取り組むうえで、もう一つ意識しておきたいのが「自身の状態を定期的に把握すること」です。脳の健康は目に見えにくく、自覚しづらいからこそ、客観的に変化を捉える視点が重要になります。

脳は、直接見たり触れたりできる器官ではありません。一般的な健康診断では詳しくチェックされる機会も少なく、脳ドックを定期的に受けるとなると、時間や費用の面でハードルを感じる方も多いでしょう。

しかし、こうした中でも、小さな変化に早く気づくことができれば、認知症の早期発見や、重篤な状態へ進行する前の対応につながる可能性が高まります。そのため、日常的に脳の状態を把握する手段を持っておくことは大きな意味を持ちます。

そこで活用したいのが、『認知症と向き合う365』です。このサービスでは、定期的な認知機能のセルフチェックに加え、MRI画像をもとにAIが解析をおこなう「BrainSuite®」が提供されており、脳の機能と構造の両面から状態を確認することができます。

これらの機能が追加料金なしで利用できるため、継続的なモニタリングを比較的取り入れやすい仕組みになっているのが特徴です。日々のトレーニングや生活習慣の見直しに加え、このようなサービスを活用して「現状を知る」ことを習慣化することで、より効果的に脳の健康管理を行っていくことができるでしょう。

まとめ

今回は、認知機能の維持・向上を目指すためのトレーニング方法と、その効果をより高めるための具体的な取り組みについて紹介してきました。

認知機能は、私たちの日常生活を支える基盤ともいえる重要な働きです。しかし、それが当たり前に機能しているからこそ、普段は意識されにくいものでもあります。ですが、長い間運動をしていなかった人が急に体を動かそうとしても思うようにいかないように、脳の働きもまた、使わなければ徐々に衰えていきます。

認知機能を数十年という長いスパンで維持していくために大切なのは、特別なことをすることではありません。日常の中で脳をまんべんなく使うこと、そして心身ともに健やかな状態を保つこと。この二つを意識して積み重ねていくことが何より重要です。

どれも難しい取り組みではありません。ただし、継続するためには「習慣化」が鍵となります。新しいことを一度に取り入れる必要はなく、できることから少しずつ始めていくことが大切です。時間をかけて積み重ねていくことで、無理なく日常の一部として定着していきます。

まずは、今日できる小さな一歩からはじめてみましょう。そうした積み重ねが、将来の脳の健康と認知機能を守ることにつながっていきます。

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【参考文献(ウェブサイト)】

【参考文献(電子ジャーナル)】

【参考文献(書籍)】

  • 秋下雅弘(2023). 目で見てわかる認知症の予防. 成美堂出版.
  • 朝田隆(2025). 軽度認知障害(MCI)がわかる本. 講談社.
  • 旭俊臣(2022). 増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症. 幻冬舎.
  • 浦上克哉(2021). 科学的に正しい認知症予防講義. 翔泳社.
  • 大平哲也(2025). 健康な人の小さな習慣. ダイヤモンド社.
  • 加藤俊則(2021). ビジュアル図解 脳のしくみがわかる本. メイツ出版.
  • 佐藤成美(2022). 本当に役立つ栄養学. 講談社.
  • 樋口満(2025). 健康寿命と身体の科学. 講談社.
  • 中村丁次(2025). ニュートン超図解新書 最強に面白い 食と栄養. ニュートン.
  • 森勇馬(2023). 認知症は予防が9割. マガジンハウス.
  • 柳沢正史(2024). 今さら聞けない 睡眠の超基本. 朝日新聞出版.
  • 山田悠史(2022). 最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM. 講談社.
  • 和田秀樹(2024). みんなボケるんだから. SBクリエイティブ.
  • クリスティーン・ボーデン・著/桧垣陽子・訳(2003). 私は誰になっていくの?. クリエイツかもがわ.

この記事の監修者

佐藤俊彦 医師

佐藤俊彦 医師

福島県立医科大学卒業。日本医科大学付属第一病院、獨協医科大学病院、鷲谷病院での勤務を経て、1997年に「宇都宮セントラルクリニック」を開院。
最新の医療機器やAIをいち早く取り入れ、「画像診断」によるがんの超早期発見に注力、2003年には、栃木県内初のPET装置を導入し、県内初の会員制のメディカル倶楽部を創設。
新たに 2023年春には東京世田谷でも同様の画像診断センター「セントラルクリニック世田谷」を開院。
著書に『ステージ4でもあきらめない 代謝と栄養でがんに挑む』(幻冬舎)『一生病気にならない 免疫力のスイッチ』(PHP研究所)など多数。