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その物忘れ、老化じゃないかも?原因と見分け方について解説

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「最近、物忘れが増えたかもしれない」と感じたことはありませんか。名前がすぐに出てこなかったり、ついさっき置いたものの場所を思い出せなかったり――そんな小さな変化に、不安を覚える方も多いでしょう。

物忘れは、疲労やストレス、睡眠不足といった日常的な要因でも起こるため、年齢に関係なく誰にでも見られる現象です。一方で、年齢を重ねるにつれて物忘れが増えるのも自然な変化のひとつであり、多くの場合は過度に心配する必要はありません。

しかし、すべての物忘れが「よくあること」として片付けられるわけではありません。中には認知症が背景にあるケースもあり、本人だけでなく家族や周囲の生活にも大きな影響を及ぼす可能性があります。そのため「いつもと違う」と感じるサインに早めに気づき、適切な対応につなげることが、将来の生活の質を大きく左右します。

そこで今回は、物忘れを引き起こす主な原因を解説し、あわせて注意すべきサインの見分け方や、日常生活の中でできる予防について紹介していきます。

最近物忘れが増えたと感じたときに、まず知っておきたいこと

誰にでも起こる「物忘れ」とは

まず知っておきたいのは、「物忘れ」そのものは決して特別な現象ではありません。日常生活の中で、誰にでも自然に起こりうるものです。

例えば「学生時代の先生の名前がすぐに出てこない」「昔読んだ本のタイトルが思い出せない」といったように、出来事の一部分だけが抜け落ちてしまうことがあります。こうしたケースはいわゆる「度忘れ」と呼ばれるもので、多くの人が経験するごく一般的な現象です。

このような度忘れの特徴は、「何を忘れているのか」を自分で把握できている点にあります。つまり、「あの先生の名前が思い出せない」「あの本のタイトルが出てこない」と、忘れている対象そのものは認識できている状態です。そして、調べたり人に聞いたりすることで、「そうだった、●●先生だった」「このタイトルだった」と記憶を補い、思い出せるのであれば、基本的には心配する必要はありません。

放置してよいケース・注意すべきケース

前述のような「思い出すことができる物忘れ」が一時的に増えているだけであれば、基本的には深刻に捉える必要はありません。特に、疲労がたまっているときや忙しい時期に限って頻度が高まる場合であればなおさらです。

というのも、記憶を司る脳の働きは繊細で高度な機能であり、心身が安定した状態でこそ本来の力を発揮できるものです。疲労やストレスが蓄積していると、注意力や集中力が低下し、その結果として記憶の抜けやすさが目立つようになります。いわば一時的に脳のパフォーマンスが低下している状態です。そのため、多少の物忘れが起こるのは自然なことです。しっかりと休息をとることで心身の疲労が回復し、「物忘れの頻度が減ってきた」と実感できるのであれば、大きな問題ではないと考えられます。

一方で、注意が必要なケースもあります。例えば、「最近、物忘れが多くない?」と家族や同僚など周囲の人から指摘されることが増えた場合や、十分に休んでも物忘れの頻度がなかなか減らない場合です。こうした変化が見られるときは、単なる疲労によるものではない可能性も視野に入れ、慎重に経過を見守ることが大切です。

注意すべき物忘れの特徴

物忘れの中には、見過ごさないほうがよいサインもあります。特に、「物忘れが増えているのに自覚が乏しい」といった場合には注意が必要です。このようなケースでは、単に記憶機能だけが一時的に低下しているのではなく、より広い範囲の脳機能に変化が生じている可能性が考えられます。

通常、疲労やストレスによる物忘れであれば、「最近忘れっぽいな」と自分で気づくことが多いものです。しかし、自覚が薄いまま物忘れが進んでいる場合、背景には一時的なコンディションの問題ではなく、持続的な脳機能の低下が関係している可能性も否定できません。このような変化が続く場合には、早めに専門機関へ相談することも選択肢のひとつです。

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物忘れの主な原因とは?考えられる5つの原因

では、そもそも物忘れはどのような原因によって起こるのでしょうか。

一般的に「物忘れ」と聞くと、年齢を重ねることで増えていくもの、というイメージを持つ人は多いかもしれません。実際、加齢によって記憶力に変化が生じるのは自然なことです。

しかし、物忘れは高齢者に限った現象ではありません。若い世代であっても、生活習慣や心身の状態によっては、物忘れが増えることがあります。つまり、物忘れの背景には加齢以外にもさまざまな要因が関係しているのです。ここからは、物忘れを引き起こす主な原因について、5つに分けて見ていきましょう。

原因①加齢による脳機能の変化

「若い頃はすぐに覚えられたのに、年齢とともに物覚えが悪くなった」と感じることはないでしょうか。このような感覚は決して間違いではありません。

というのも、年齢を重ねるにつれて脳内に蓄積される情報量は増え続けていきます。若い頃に比べて記憶のストックが膨大になるため、その中から特定の情報をすぐに取り出せず、「思い出せない」という状態が起こりやすくなるのです。これが、いわゆる「度忘れ」の一因と考えられます。

さらに、脳の中で記憶に深く関わる「海馬」と呼ばれる部位は、比較的早い段階から加齢の影響を受けやすいことが知られています。そのため、年齢とともに物忘れが増えるのは、ある程度自然な変化だと言えるでしょう。

ただし、ここで押さえておきたいのは、こうした変化はあくまで記憶機能の一部に関わるものであり、脳の働き全体が一様に低下するわけではないという点です。加齢による変化を過度に悲観する必要はありませんが、変化の性質を正しく理解しておくことが大切です。

原因②ストレスや疲労の影響

物忘れは、ストレスや疲労といった日常的なコンディションの影響によっても増えることがあります。こうした状態では、脳の働きが一時的に鈍くなってしまうためです。

近年、「脳疲労」という言葉を耳にする機会が増えていますが、これは脳が十分に回復しきれず、慢性的に疲労が蓄積した状態を指します。脳が疲弊した状態では、注意力や集中力が低下し、その結果として記憶の定着や想起がスムーズにいかなくなり、物忘れが起こりやすくなります。

さらに、ストレスや疲労も、脳が処理しなければならない情報のひとつです。外部からの刺激に反応し続けることで、脳には常に負荷がかかります。こうした負担が積み重なると、本来の働きが十分に発揮できなくなり、その結果として物忘れが起こりやすくなることがあるのです。

原因③睡眠不足

睡眠不足が心身や脳の健康に悪影響を及ぼすことはよく知られており、物忘れの一因にもなります。ただし、その影響は記憶力の低下にとどまりません。思考力や判断力の低下に加え、感情のコントロールが難しくなるなど、脳機能全体に影響が及ぶのが特徴です。物忘れは、こうした変化の一側面としてあらわれるものです。

また、睡眠不足による物忘れには特徴があります。それは、単に「思い出せない」といった度忘れだけでなく、新しい情報を覚える力そのものが低下する点です。本来であれば一時的に情報を保持する短期記憶の働きが弱まり、そこから長期的な記憶へと定着させるプロセスも働きにくくなります。その結果、「新しいことが覚えづらい」という感覚が増えやすくなるのが、睡眠不足による物忘れの特徴です。

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原因④生活習慣の乱れ

生活習慣の乱れも、物忘れを引き起こす要因のひとつです。例えば、睡眠時間が不規則だったり、栄養バランスの偏った食事が続いたりすると、身体への負担が蓄積し、その影響が脳機能の低下としてあらわれることがあります。

脳と身体は切り離された存在ではなく、密接につながっています。そのため、体調が崩れれば、脳のコンディションにも影響が及ぶのは自然なことです。特に、体内のバランスを調整する自律神経の働きが乱れると、集中力や判断力といった脳のパフォーマンス全体が低下しやすくなり、その結果として物忘れが増えることもあります。

さらに、過度なアルコール摂取も記憶機能に影響を与える要因として知られています。習慣的な飲酒量が多い場合、記憶の定着や想起に支障をきたす可能性があるため注意しましょう。

原因⑤認知症による物忘れ

物忘れの中には、認知症の初期症状としてあらわれるケースもあることが知られています。

まず知っておきたいのは、「認知症」は特定のひとつの病名ではないという点です。脳や身体のさまざまな疾患やトラブルによって認知機能が低下し、その結果として日常生活や社会生活に支障が生じている状態を指す総称であり、原因となる疾患は100種類以上あるともいわれています。

そのため、認知症にはいくつものタイプが存在しますが、なかでも多くのケースで見られる特徴のひとつが、認知機能の低下に伴う物忘れの増加です。単なる度忘れとは異なり、体験そのものが抜け落ちるような記憶の障害としてあらわれることもあります。

ただし、「認知症=物忘れ」と単純に結びつけるのは適切ではありません。あくまでも物忘れは、認知機能の低下によってあらわれる症状の一部に過ぎないという点を理解しておくことが重要です。物忘れの背景にある変化を正しく捉えることが、早期の気づきと適切な対応につながります。

物忘れと認知症の違いをわかりやすく解説

ここまで、物忘れを引き起こすさまざまな要因について見てきましたが、多くの場合、「物忘れ」は単独で起こるものではなく、何らかの影響によってあらわれる現象の一側面ともいえます。

例えば、疲労やストレス、睡眠不足などによって脳のコンディションが低下すると、記憶機能がうまく働かなくなり、その結果として物忘れが増えることがあります。つまり、物忘れは原因そのものではなく、「脳の状態」を映し出すサインのひとつと捉えることができます。

認知症による物忘れも同様です。認知症では、記憶に限らず判断力や理解力など、認知機能全般が低下します。その影響の一部として、物忘れが目立つようになるのです。

ただし、一般的な物忘れと認知症による物忘れには、いくつかの重要な違いがあります。ここからは、それぞれの特徴の違いについて、より具体的に見ていきましょう。

忘れ方の違い

物忘れと一口にいっても、その「忘れ方」には違いがあります。特に、認知症による物忘れには特徴的な傾向が見られます。

加齢による一般的な物忘れでは、出来事の一部を忘れることが多いとされています。例えば「今日、友人と会う約束をしていたが、待ち合わせ場所を忘れてしまった」というケースです。この場合、忘れているのはあくまで「場所」という一部の情報であり、手帳やメモを見返せば「そうだった」と思い出すことができます。

一方で、認知症による物忘れでは、出来事そのものを忘れてしまうことが特徴です。同じ例でいえば、「友人と会う約束をしていたこと自体を覚えていない」という状態です。そのため、手帳やメモを確認しても、「そんな予定はあっただろうか」と感じてしまい、記憶を補うことが難しくなります。

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自覚の有無の違い

認知症による物忘れのもうひとつの大きな特徴が、本人の自覚の有無です。

前述のように、認知症では「出来事そのもの」を忘れてしまうことがありますが、それに加えて、自分が忘れているという認識自体が乏しい傾向があります。医学的には「病識を持ちにくい」と表現される状態です。

そのため、周囲から指摘を受けたときの反応にも違いが見られます。例えば、約束をしていた相手から「どうして来なかったの?」と聞かれた場合でも、本人はそもそも約束した記憶がないため、「そんな話は聞いていない」と感じてしまうことがあります。このような状況では、自分の物忘れを自覚して対策を取る、メモで補うといった行動につなげることが難しくなります。結果として、同じような出来事が繰り返されやすくなるのです。

一方、加齢による物忘れであれば、「うっかりしていた」「最近忘れっぽいな」と本人が自覚していることが多く、指摘に対しても比較的受け入れやすい傾向があります。

日常生活への影響の違い

こうした認知症の特性は、日常生活への影響の大きさにも表れます。実際に、認知症とは「認知機能の低下によって、日常生活や社会生活に支障が生じている状態」を指す言葉であり、ここが単なる物忘れとの大きな分かれ目となります。

加齢による物忘れの場合、多くは本人に自覚があります。何を忘れたのかも把握できているため、手帳をこまめに確認したり、メモを取ったりといった工夫によって、生活への影響をある程度抑えることが可能です。

一方、認知症による物忘れでは、何を忘れているのかが分からず、自覚も乏しいという特徴があります。そのため、本来であれば可能なはずの記憶を補う行動が難しくなり、気づかないうちに日常生活や社会生活に影響が及ぶようになります。さらに、認知症は徐々に進行していくため、初期の段階では影響が限定的であっても、時間の経過とともにその範囲は少しずつ広がっていきます。

このように、生活への影響の有無や広がり方は、単なる物忘れか、それとも認知症による変化なのかを見極めるうえでの重要なポイントのひとつです。日々の様子の中で、どの程度生活に支障が出ているのかに目を向けることが、早期の気づきにつながります。

受診を検討したい要注意な物忘れのサイン

次項からは認知症の可能性も視野に入れておきたい、具体的な物忘れのサインについて見ていきましょう。

物忘れは誰にでも起こりうるものですが、なかには見過ごさずに向き合うべき変化も存在します。もしこれから紹介するような状態に当てはまる場合には、早めに専門機関への受診を検討することが大切です。

現時点では認知症を完全に治すことは難しいとされています。そのため、もっとも重要なのは「早期発見・早期対策」です。できるだけ早い段階で変化に気づき、適切な対応につなげることができれば、症状の進行を緩やかにし、日常生活への影響を抑えることが期待できます。また、本人だけでなく家族や周囲の負担を軽減することにもつながります。

小さな違和感であっても、「いつもと違うかもしれない」と感じたときには、そのサインを見逃さず、早めの相談や受診につなげることが重要です。

同じことを何度も繰り返す

「同じ話を何度もする」「同じ質問を繰り返す」といった変化が見られる場合は、注意が必要です。

こうした行動は、本人がすでに話した内容や聞いた内容そのものを覚えておらず、さらに忘れているという自覚も乏しいことによって起こります。そのため、本人に悪気はなく、自然な流れで同じやり取りを繰り返してしまうのです。

もし、こうした場面が頻繁に見られるようになったり、「それ、さっきも話していたよね」「さっきも聞いたよね」と周囲から指摘されることが増えてきた場合には、単なる物忘れではなく、認知機能の変化が背景にある可能性も考えられます。

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時間や場所がわからなくなる

認知症による変化は、「出来事の記憶」だけにとどまりません。時間や場所の感覚が曖昧になることも、代表的なサインのひとつです。

これは「見当識」と呼ばれる認知機能の低下によって起こるもので、今がいつなのか、ここがどこなのかといった基本的な情報の把握が難しくなります。その結果、本人の中で状況が整理できず、混乱を招くことがあります。

例えば「通い慣れている通勤路で現在地がわからなくなる」「よく利用しているスーパーで迷ってしまう」といったケースです。本来であれば迷うはずのない場所で戸惑う様子が見られるのは、特徴的な変化といえるでしょう。

こうした変化は、本人にとっても周囲にとっても違和感のある出来事としてあらわれます。もし同様の場面が繰り返し見られる場合には、単なるうっかりではなく、認知機能の低下が関係している可能性を考え、早めに専門機関へ相談することも検討しましょう。

理解力・判断力の低下

認知機能の低下により、記憶だけでなく理解力や判断力といった、高度な機能の変化も目立つようになります。

物事を正しく理解し、適切に判断するためには、前提となる情報を正確に把握できていることが不可欠です。しかし、認知症の特徴である「出来事そのものを忘れる」「忘れていることへの自覚が乏しい」といった状態では、情報の把握に抜けや偏りが生じやすくなります。

その結果、状況を正しく理解できなかったり、これまでであれば自然にできていた判断が難しくなったりと、次の行動につなげるプロセスに支障が出てきます。

また、理解力や判断力は認知機能の中でも特に高度な働きを担う領域であるため、変化があらわれた際には日常生活のさまざまな場面で影響が出やすいのも特徴です。

性格や行動の変化

物忘れの増加や、理解力・判断力の低下が進むと、周囲から「性格や行動が変わった」と感じられる場面が増えることがあります。

認知症の特徴のひとつに、「自分の変化を自覚しにくい(病識を持ちづらい)」という点があります。そのため、本人はこれまで通り問題なく過ごしているつもりでも、周囲から指摘を受ける機会が増え、認識のズレが生じやすくなります。

こうした状況の中で、自分を保とうとするあまり、つじつまを合わせるような言動、いわゆる取り繕いが増えることもあります。また、周囲との認識のギャップによって混乱が生じ、怒りっぽくなったり、反対にふさぎ込んだりと、感情面の変化があらわれることも少なくありません。その結果、周囲からは「以前とは別人のようだ」と受け取られてしまうこともあります。

このような変化が一時的ではなく、一定期間続く場合には、認知症に限らず、他の疾患やトラブルが背景にある可能性も考えられます。違和感を見過ごさず、早めに専門機関への相談を検討することが大切です。

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物忘れを改善・予防するための対策

これまで見てきたように、物忘れは脳や心身のコンディションが低下したときに起こりやすい変化のひとつです。多くの場合、生活習慣や体調を整え、良好な状態を維持できれば、物忘れが日常生活に与える影響は大きくありません。

しかし裏を返せば、物忘れは心身の状態を映し出す「サイン」でもあります。以前よりも頻度が増えている、あるいはその状態が続いている場合には、身体や脳に負担がかかっている可能性が考えられます。こうした変化を見過ごさず、早めに向き合うことが重要です。

物忘れは決して軽視してよいものではありません。日々の小さな違和感に気づき、適切に対処することが、将来的な認知機能の維持にもつながります。

ここからは、物忘れの改善・予防や将来の認知機能の維持に役立つ、日常生活で取り入れやすい具体的な対策を紹介していきます。

脳に良い食生活

食事は単に空腹を満たすためのものではなく、私たちの身体、そして脳そのものを形づくる大切な基盤です。体内で合成できない栄養素を補うという意味でも、日々の食事は健康維持に欠かせない役割を担っています。

そのため、毎日の食事内容に目を向け、栄養バランスの整った食生活を意識することは、心身だけでなく脳のコンディションを保つうえでも非常に重要です。例えば、DHAやEPAを豊富に含む青魚や、抗酸化作用が期待されるリコピンを多く含む色の濃い野菜など、脳の健康に良いとされる食品は数多くあります。

ただし、ここで最も大切なのは「特定の食品に偏らないこと」です。私たちの身体は多様な栄養素を必要としており、どれほど優れた食品であっても、それだけで十分ということはありません。

まずは主食・主菜・副菜を基本としたバランスの良い食事を整えることを優先し、そのうえで脳や身体に良いとされる食品を無理なく取り入れていくことが、健やかな毎日を支える第一歩となります。

運動で心身をリフレッシュ

運動がもたらす恩恵は、心肺機能や基礎体力の向上・維持にとどまりません。身体を適度に動かすことで心地よい疲労が生まれ、睡眠の質が高まり、結果として日中の集中力向上にもつながります。こうした好循環は、日々の生活の質そのものを底上げしてくれるものです。

さらに、無理のない範囲で身体を動かすことは、気分転換やストレスの軽減といった心身のリフレッシュにも効果的です。特別に強度の高い運動である必要はなく、軽い負荷でも十分にその効果が期待できます。そのため、体力に自信がない方や運動習慣がない方にも、無理なく取り入れやすい方法といえるでしょう。

健康づくりのための運動で大切なのは、「頑張りすぎないこと」です。ウォーキングやラジオ体操など、心地よいと感じられる程度の運動を日常生活に取り入れ、無理なく続けていくこと。それこそが、健やかな毎日への第一歩となります。

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楽しめる趣味が、脳をいきいきと保つ

年齢を重ねると、記憶力だけでなく「感情」や「意欲」といった心の働きにも変化が見られるようになります。これらを司る前頭葉や側頭葉は、記憶に関わる海馬と同様に、加齢の影響を受けやすいことが知られています。

こうした変化を放置すると、次第に心の動きが乏しくなり、結果として認知機能の低下につながる可能性もあります。そのため、大切なのは、感情や意欲が自然に引き出される環境を保つことです。

その具体例として、「楽しめる趣味」や「興味を持てること」を持ち続けることです。何かに没頭したり、新しいことに関心を向けたりする体験は、脳にとって良い刺激となります。喜びや驚きといった感情には、脳を活性化させる働きが期待できます。

運動によって筋肉が維持されるように、脳も適度に使い続けることで、その機能を保ちやすくなります。日常の中で小さな「楽しい」や「気になる」を大切にし、心地よい刺激を与え続けることが、いきいきとした毎日と認知機能の維持につながっていきます。

まとめ

今回は、物忘れの主な原因や見逃してはいけないサインについて解説しました。物忘れは、脳や心身のコンディションが低下したときに起こりやすい変化のひとつです。そのため、過度に不安になる必要はありませんが、同時に身体からの重要なサインでもあります。放置せず、適切に向き合うことが大切です。

また、物忘れの中には認知症の兆候が含まれている場合もあります。ある程度の年齢を迎えたら、自身の物忘れを安易に「年のせい」と片付けるのではなく、注意が必要なものかどうかを意識的に見極める姿勢が求められます。

しかし、認知症による物忘れと一般的な物忘れの違いは、本人だけでは判断が難しいケースも少なくありません。そうしたときに活用したいのが、『認知症と向き合う365』のようなサポートサービスです。定期的な認知機能のセルフチェックに加え、MRI撮影とAI解析を組み合わせた検査「BrainSuite®」によって、脳の状態を機能面と構造面の両方から確認できます。日常のちょっとした変化とあわせて把握することで、注意すべきサインに気づきやすくなるでしょう。

さらに、医師や心理士などの専門スタッフへ直接相談できる体制が整っている点も安心材料のひとつです。気になることがあった際に、早い段階で相談できる環境は、大きな支えとなります。

認知症対策において重要なのは、「早期発見・早期対応」です。将来に備える取り組みに、早すぎるということはありません。できることから無理なく始め、自分らしい毎日を守るための一歩につなげていきましょう。


【参考文献(書籍)】

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  • 山田悠史(2025). 認知症になる人 ならない人. 講談社.
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  • 和田秀樹(2022). 医者が教える50代からはじめる老けない人の「脳の習慣」. ディスカヴァー・トゥエンティワン.
  • 渡辺恭良/水野敬(2018). 疲労と回復の科学. 日刊工業新聞社.

この記事の監修者

佐藤俊彦 医師

佐藤俊彦 医師

福島県立医科大学卒業。日本医科大学付属第一病院、獨協医科大学病院、鷲谷病院での勤務を経て、1997年に「宇都宮セントラルクリニック」を開院。
最新の医療機器やAIをいち早く取り入れ、「画像診断」によるがんの超早期発見に注力、2003年には、栃木県内初のPET装置を導入し、県内初の会員制のメディカル倶楽部を創設。
新たに 2023年春には東京世田谷でも同様の画像診断センター「セントラルクリニック世田谷」を開院。
著書に『ステージ4でもあきらめない 代謝と栄養でがんに挑む』(幻冬舎)『一生病気にならない 免疫力のスイッチ』(PHP研究所)など多数。