親の物忘れ、どう接する?やってはいけない対応と対策のためのポイントを解説
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最近、親に会ったのはいつでしょうか。もししばらく会っていない場合、最後に会ったときの印象を思い出してみてください。どこか「小さくなった」と感じたことがあるのではないでしょうか。
子どもにとって、親という存在は長い間「大きなもの」です。精神的にも身体的にも頼れる存在として記憶に刻まれているため、自分が大人になったからといって、そのイメージがすぐに変わるわけではありません。久しぶりに会ったときに感じる違和感は、そうした記憶とのギャップから生まれるものでもあります。
それと同時に、多くの人が親の「老い」を感じる瞬間でもあったのではないでしょうか。日本は世界でも有数の長寿国で、平均寿命はおよそ男性81歳、女性87歳と非常に長くなっています。その人生の中で、人は長い時間を「老い」と向き合いながら過ごします。身体の変化や体力の低下だけでなく、記憶力の変化もその一つです。
こうした中で、親の「物忘れ」が気になった経験はないでしょうか。物忘れ自体は疲労やストレスなどによって、年齢に関係なく誰にでも起こるものです。しかし、高齢の親の場合は注意が必要なケースもあります。「もしかして認知症ではないか」と、不安を感じたことがある人も少なくないでしょう。
高齢者の物忘れの中には、認知症の初期サインが隠れている可能性もあります。そのため、親の物忘れが気になりはじめた段階で適切に対応することは、認知症対策だけでなく、将来的な要介護状態を防ぐことにもつながる可能性があります。
そこで今回は、親の物忘れに気づいたときに避けたほうがよい対応について解説し、合わせて対策のためのポイントについて紹介していきます。
親の物忘れに気づいたとき、知っておきたいこと
物忘れは誰にでも起こるもの
まず知っておきたいのは、物忘れは決して特別なことではないという点です。
私たちの記憶は、単に「覚える」という働きだけで成り立っているわけではありません。記憶とは、脳に情報を定着させて「記録」する、その記録した情報を必要なときに「取り出す」という、二つの機能が連携する働きです。
この二つのうち、特に影響を受けやすいのが「取り出す」機能です。ストレスや疲労、睡眠不足といった要因があると、この働きが一時的にうまく機能しなくなることが知られています。
例えば、徹夜明けや仕事が多忙なときに、「さっき言われたことを度忘れした」「今やろうと思っていたことを思い出せない」といった経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。これは、脳や心身が疲れていることで、記憶を取り出す働きが一時的にうまく機能せず、いわゆる「度忘れ」が起きている状態です。
ですが、このような物忘れの多くは、しっかり睡眠を取る、休日にしっかり休むといった形で体を休めることで改善するケースがほとんどです。つまり、多くの場合で一時的な変化であり、深刻な問題ではありません。このような一時的な物忘れはめずらしいことではなく、むしろ「休んだほうがいい」という脳や体からのサインともいえるでしょう。

画像素材:PIXTA加齢による物忘れと認知症の違い
しかし一方で、年齢を重ねるにつれて物忘れが増えるのもまた事実です。
その理由の一つに、脳の記憶機能を担う「海馬」の存在があります。海馬は記憶の形成や整理に重要な役割を果たす領域ですが、脳の中でも比較的早い段階から老化の影響を受けやすいとされています。そのため、加齢に伴って海馬の働きが弱まると、記憶を取り出す力が低下し、以前より物忘れが増えたと感じることがあります。
ですが、加齢による物忘れと認知症による物忘れには、症状の進行の仕方に違いがあるといわれています。加齢による物忘れは、多少増えることはあっても急激に進行することはあまりありません。一方で、認知症が背景にある場合は、物忘れが徐々に増え、時間とともに進行していく傾向があります。
また、加齢による物忘れでは、思い出せないことがあってもヒントをきっかけに思い出せることが多いのが特徴です。例えば、昔の出来事ははっきり話せるのに、最近の出来事を思い出せないことがあっても、「こういうことがあったよね」と周囲から説明されると「ああ、そうだった」と思い出すケースが少なくありません。これは、記憶そのものが消えてしまったわけではなく、記憶を取り出す機能が加齢によってやや弱まっているためです。つまり、記憶のすべてが衰えているわけではなく、機能の一部に変化が起きている状態といえます。
さらに、加齢による物忘れでは、本人が物忘れを自覚していることが多いのも特徴です。家族や周囲から「最近ちょっと忘れっぽくない?」と指摘された場合でも、「確かに最近そうかもしれない」と、自分の感覚と周囲の指摘が一致することが多く、強く否定したり過剰に不安になるケースはあまり見られません。
一方で、認知症では自分の物忘れを自覚しにくいという特徴があります。物事を俯瞰して状況を把握したり、自分の状態を客観的に認識したりするには、記憶力だけでなく判断力や理解力など、さまざまな認知機能が関わっています。認知症では、こうした認知機能全体が徐々に低下していくことが特徴です。そのため、本人は物忘れが増えていることに気づきにくく、家族から指摘されても強く否定したり、認識が食い違ったりすることがあります。
このように、記憶を取り出す力の変化が中心の加齢による物忘れと、認知機能全体の低下を伴う認知症では、その性質に違いが見られることがあります。
家族が感じやすい不安と葛藤
ですが、実際には加齢による物忘れと認知症の初期症状を見分けるのは簡単ではありません。認知症の初期段階では記憶力の低下から目立ちはじめることが多く、症状が加齢による物忘れと似ているためです。そのため、単なる年齢による変化なのか、それとも認知症の始まりなのか、家族や周囲の人が判断に迷い、不安を抱きやすくなります。
さらに、親世代の中には認知症に対する理解が十分でなかったり、偏見を持っていたりする人も少なくありません。認知症が「認知症」という名称で、医療やケアの対象として広く認識されるようになったのは比較的最近のことです。それ以前は「痴呆(ちほう)」という言葉で呼ばれており、侮蔑的な意味合いを伴うこともありました。
こうした背景もあって、家族が心配して物忘れについて話題にしても、子どもの意見を素直に受け止めてもらえなかったり、「私はボケていない」と強く否定されたりすることがあります。周囲が受診を勧めても、医療機関に行くこと自体を拒んでしまうケースもめずらしくありません。
しかし、物忘れの様子が気になる状態が続いているにもかかわらず、本人が受診を拒むとなると、家族としてはどうすればよいのか分からなくなってしまうものです。不安が募るのも当然でしょう。「本人の気持ちを尊重すべきなのか、それとも将来のために受診を勧めるべきなのか」——そんな葛藤を抱えてしまうのは決してめずらしいことではありません。

画像素材:PIXTA親の物忘れに対してやってはいけない対応
親の物忘れが気になりはじめると、「早く病院で診てもらったほうがいいのでは」と焦ってしまうこともあるでしょう。ですが、不安だからといって強く指摘したり、無理に病院へ連れて行こうとしたりする対応は、本人にとって負担になってしまうことがあります。
その背景には、これまで見てきたように、加齢による物忘れと認知症の初期症状は見分けがつきにくいという点にあります。特に初めて診察する医師の場合、これまでの生活や性格、普段の様子などを知らないため、一度の受診だけで現在の状態が、医学的に注意が必要な状態なのかどうかを判断するのは簡単ではありません。
そのため、本人が納得していない状態で無理に受診しても、十分な情報が得られず、適切な判断につながりにくいことがあります。
さらに、認知症の診断では、神経心理学的検査などの認知機能検査がおこなわれることがあります。これらの検査の多くは、医師や心理士などの専門スタッフからの質問に対する本人の回答や、そのときの様子をもとに評価されるものです。つまり、本人が落ち着いた状態で協力的に検査に参加することが、正確な評価のためにとても重要になります。
もし、無理に受診させたことで本人が不信感を抱いてしまうと、検査への協力が得られにくくなり、結果として適切な判断が難しくなる可能性もあります。また、認知症の検査だけでなく、その後の治療や生活面での対策を進めていくうえでも、本人の理解と協力は欠かせません。そのため、家族との関係性が損なわれる対応は、長い目で見るとあまり得策とはいえないのです。
もちろん、家族として不安を抱くのは自然なことです。ただ、不安が強いときほど、頭ごなしに否定したり責めたりせず、本人の気持ちに配慮しながら関係性を保つことが大切です。
親の物忘れへの正しい向き合い方
ここからは、親の物忘れに気づいたとき、どのように向き合っていけばよいのかを見ていきましょう。
「もし親が認知症だったらどうしよう」と想像すると、不安を感じる人も多いでしょう。介護が必要になるのだろうか、費用はどれくらいかかるのか、自分が面倒を見ることになるのか――。考えはじめると、次から次へと不安が浮かんでくるものです。そうした気持ちになるのは、とても自然なことです。自身の将来にも関わる問題だからこそ、簡単に割り切れるものではありません。
一方で、不安な気持ちのまま立ち止まってしまっても、状況が良い方向に変わるとは限りません。むしろ、心配ばかりが膨らみ、本人も家族も疲れてしまう可能性があります。もちろん、「落ち着いて考えましょう」と言われても、すぐに気持ちが整理できるわけではないでしょう。それでも、親の物忘れにどう向き合えばよいのかを知ることで、必要以上に不安に振り回されず、今何をすればよいのかが少しずつ見えてくるはずです。
ここからは、親の物忘れに気づいたときに家族ができる具体的な対応や、将来に備えるためのポイントについて紹介していきます。
一人で抱え込まない
親の物忘れに向き合ううえで、まず大切にしたいのは一人で抱え込まないことです。
親の健康問題は、短期間で答えが出るものではありません。長い時間をかけて向き合っていく可能性があるからこそ、最初から一人で背負い込もうとしないことが重要です。もちろん、物忘れの多くが必ずしも認知症につながるわけではありません。しかし、高齢になるほど認知症のリスクが高まるのも事実です。
また、仮に今の段階で大きな問題が見られなかったとしても、年齢を重ねるにつれて認知症のリスクは徐々に高まっていきます。つまり、「今は大丈夫だったから、これからもずっと問題ない」とは言い切れるものではないのです。だからこそ、早い段階から無理をしてしまうと、後になって心身ともに疲れてしまう可能性があります。
「自分が何とかしなければ」と思い詰めたり、不安や負担を感じている自分の気持ちを否定したりする必要はありません。長く向き合う可能性があるからこそ、無理のない形で関わっていくことが大切です。
また、家族の中でも温度差が生まれることもめずらしくありません。自分だけが親の変化を心配しているのに、兄弟姉妹は楽観的だったり、あまり関心を示してくれなかったりするケースもあります。その結果、「自分が全部考えないといけない」と感じ、負担が重くなってしまうこともあるでしょう。
そうしたときには、家族の中だけで抱え込まず、外部の支援や交流の場を活用するのも一つの方法です。例えば、認知症の本人や家族が集まり交流する「オレンジカフェ(認知症カフェ)」と呼ばれる場があります。同じような悩みを抱える人たちと話すことで、情報を得られたり、気持ちが軽くなったりすることもあります。
親のことだからこそ真剣に考えてしまうものですが、一人で背負い込まず、周囲の力を借りながら向き合っていくことが、将来にわたるサポートや介護に向けた、最初の一歩になります。

画像素材:PIXTA否定せず受け止めるコミュニケーション
親と物忘れについて話すときに大切なのは、否定せず、かといって無理に肯定もせず、まずは「受け止める」姿勢で向き合うことです。家族として不安を感じているかもしれませんが、実は親本人もまた、不安を抱えている可能性があります。
先ほど触れたように、認知症では自分の状態を自覚しにくい特徴があります。自分の記憶や判断が以前とどう変わっているのかを、本人自身がうまく把握できない場合もあるのです。こうした状態は、本人にとっても大きな戸惑いにつながります。
特に、本人は「自分は問題ない」と思っているのに、周囲からは「最近忘れっぽいよ」「最近ちょっと変じゃない?」などと指摘されると、何が起きているのか分からず混乱してしまうことがあります。自分のどこが問題なのかが分からないまま周囲から心配されることで、不安や戸惑いが強まってしまうのです。
さらに、認知機能の低下によって、自分の気持ちや状況をうまく言葉にできなくなることもあります。その結果、会話そのものを避けるようになったり、気持ちを閉ざしてしまったりするケースもめずらしくありません。
だからこそ、まずは相手の話を否定せずに受け止め、「そう感じているんだね」「そういうことがあったんだね」と寄り添う姿勢が大切です。そうしたコミュニケーションを積み重ねることで、親子の信頼関係を保ちやすくなり、必要なときに相談しやすい関係も築きやすくなります。
ただし、このようなコミュニケーションは、受け止める側にもある程度の余裕が必要です。気持ちに余裕がないときや、疲れているときに無理をすると、かえってストレスが大きくなってしまうこともあります。そのため、相手の体調や気分だけでなく、自分自身のコンディションにも目を向けることも大切です。
できていることに目を向ける姿勢
親の物忘れや変化に気づいたとき、どうしても目につきやすいのが「これまでできていたことが、できなくなった」という部分です。特に子どもの立場から見ると、頼もしかった親の姿を知っているだけに、その変化を受け入れるのが難しく感じられることもあるでしょう。こうした背景から「前はできていたのに」「どうして忘れてしまうの?」と、できなくなったことをつい指摘してしまうのも無理のないことです。
しかし、本人がその変化を自覚しているかどうかはまた別の問題です。もし本人が自分の変化を十分に認識できていない場合、できなくなったことを指摘されることは、自尊心を強く傷つける可能性があります。場合によっては大きな心理的ショックとなり、気持ちが落ち込みやすくなってしまうこともあります。
こうした落ち込みが続くと、気力や活動量が低下し、結果として認知機能の低下が進みやすくなるという悪循環につながることもあります。したがって「できなくなったこと」を繰り返し指摘するのは、できるだけ避けたほうがよいでしょう。
その代わりに大切なのは、「できていること」に目を向ける姿勢です。高齢になると、できなくなったことを以前の状態まで完全に取り戻すのは、現実的に難しい場合も少なくありません。それよりも、今できていることをできるだけ長く続けていくことが大切になります。
日常生活の中でできていることを見つけ、「それは助かるね」「してくれてありがとう」といった形で伝えることで、本人の意欲が高まることもあります。こうした前向きな関わりは、活動意欲の維持や脳の活性化にもつながり、結果として「できること」を長く保つ助けになると考えられています。
できなくなったことに目が向きがちな場面だからこそ、意識して今できていることに目を向ける。その姿勢が、親の自信や意欲を支える関わり方につながります。

画像素材:PIXTA家族だけで抱え込まないためにできること
ここまで、親の物忘れに気づいたときの向き合い方について紹介してきました。ここからは、家族だけで抱え込まないために知っておきたいことについて見ていきましょう。
親の変化に向き合ううえで大切なのは、接し方を工夫することだけではありません。家族自身が疲弊してしまわないことも非常に重要です。「家族の問題だから自分たちで何とかしなければ」と思い込んでしまう家族は少なくありません。しかし、すべてを家族だけで背負おうとすると、心身の負担が大きくなり、結果として長く続けることが難しくなってしまいます。
そのため、できるだけ早い段階から「自分たちだけで解決しようとしない」という意識を持つことが大切です。そして、困ったときに利用できる支援やサポートについて、あらかじめ把握しておくことが、将来の負担を軽減することにつながります。というのも、本当に困った状況になってから情報を探そうとしても、すでに心身が疲れてしまっていて、落ち着いて調べる余裕がないことも多いからです。事前にどのような支援があるのかを知っておくだけでも、いざというときに「頼れる場所がある」という安心感にもつながります。
親の物忘れや認知症の問題は、家族だけで抱え込む必要はありません。使える制度や支援をあらかじめ知っておくことが、大切な備えになります。
家族内で情報を共有する・役割を分担する
親の物忘れや認知症の可能性に向き合う際に大切なのは、家族の中の一人だけに負担を集中させないことです。
先ほど触れたように、認知症は長い時間をかけて向き合っていく必要がある可能性があります。場合によっては、数年から十数年という長期にわたることもめずらしくありません。そのような状況で、特定の家族だけで世話やサポートを担い続けると、その人が精神的にも身体的にも追い込まれてしまうことがあります。結果として、健康を損ねてしまうケースも少なくありません。
だからこそ、家族全員でフォローし合う体制を作ることが重要になります。
そのための第一歩は、家族内で情報を共有することです。たとえ同居している家族であっても、親の体調や日々の変化を細かく把握するのは簡単ではありません。気づいたことや気になる変化を共有できる仕組みをつくったり、定期的に話し合う時間を設けたりすることで、状況を家族全体で理解しやすくなります。
さらに、役割を分担することも大切です。あらかじめ役割を決めておくことで、特定の人に負担が偏ることを防ぎやすくなります。また、「自分は何を担当するのか」が明確になることで、心理的な負担を軽減する効果も期待できます。 例えば、
- 病院や相談先を調べて予約をする
- 薬の管理を担当する
- 親の家事をサポートする
といった形で役割を分けることで、それぞれができる範囲で関わることができます。
家族の問題だからこそ、一人で背負い込むのではなく、家族全体で支える体制をつくることが、長く続くサポートを無理なく続けていくための大切なポイントになります。
相談先や支援サービスを知っておく
親の物忘れや認知症の可能性に備えるうえでは、相談先や支援サービスについて事前に知っておくことも大切です。実際に治療や介護がはじまってから慌てて調べるのではなく、余裕のあるうちに情報を集めておくことで、いざというときに落ち着いて対応しやすくなります。
というのも、行政の支援制度や介護サービスの中には、利用までに手続きが必要だったり、利用条件が設けられていたりするものが少なくありません。そのため、必要になった時点で初めて調べはじめると、思っていたよりも時間がかかったり、条件に合わず利用できなかったりする可能性もあります。
もし「利用できると思っていた支援がすぐに使えない」といった状況になると、家族の負担が一気に大きくなってしまうこともあります。そうした事態を防ぐためにも、早めに情報を把握しておくことが重要です。
調べる方法としては、インターネットで情報を探すのももちろん有効ですが、地域包括支援センターを利用するのもおすすめです。
地域包括支援センターには、保健師や看護師、社会福祉士などの専門スタッフが在籍していることが多く、高齢者の生活や介護に関するさまざまな相談に対応しています。まだ具体的な問題がはっきりしていない段階でも相談できるため、「何から調べればよいのかわからない」という場合でも頼れる存在です。
こうした相談先や支援制度をあらかじめ知っておくことで、将来的に必要になったときにスムーズに活用しやすくなります。家族だけで抱え込まず、利用できる支援を上手に活用することも、親の物忘れに向き合ううえで大切なポイントです。

画像素材:PIXTA早めに第三者の力を借りるメリット
家族だけで抱え込まないためには、親族や親の友人など、身近な第三者にも早めに状況を共有しておくことも大切です。
人は基本的に自分と直接関わりのない人の状況には、それほど注意を向けないものです。だからこそ、あらかじめ事情を伝えておくことで、「最近どうしているだろう」と気にかけてもらいやすくなり、いざというときに力を貸してもらえる可能性も高まります。
また、親子関係ならではの難しさもあります。子どもがどれだけ心配して言葉をかけても、親が素直に受け入れてくれないことはめずらしくありません。しかし、親族や昔からの友人など、親にとって信頼している相手からの言葉であれば、意外と受け入れやすいこともあります。例えば、「最近少し疲れているみたいだから、一度健康チェックをしてみたらどう?」といった形で、第三者から自然に声をかけてもらうことで、医療機関への受診や相談につながるケースもあります。
もちろん、親の物忘れや健康状態はとてもプライベートな話題です。周囲に打ち明けることに抵抗を感じる人も多いでしょう。しかし、家族だけで無理をして抱え込んでしまうと、精神的な負担が大きくなり、長く続けることが難しくなる場合もあります。
だからこそ、頼れる人には早めに頼るという姿勢も大切です。使える支援や人の力を上手に活用し、自分自身の余裕を確保することが、結果として親と長く向き合うための支えにもなります。
継続的な見守りが家族の安心につながる
もし医療機関で診察を受けた結果、今回は「認知症ではない」と診断されたとしても、それで今後もずっと問題がないとは限りません。これまで見てきたように、年齢を重ねるにつれて認知症のリスクは少しずつ高まっていくからです。
しかし、家族が心配するあまり、定期的に病院へ連れて行ったり、生活習慣を細かく管理したりするのは現実的とは言えません。仕事や家庭など、自分自身の生活もあるでしょう。そこで検討したいのが、継続的に認知機能の変化を見守る仕組みの利用です。その一例として『認知症と向き合う365』があります。
このサービスでは、定期的におこなう認知機能のセルフチェックに加え、MRI画像をAIが解析する「BrainSuite®」という解析技術を組み合わせています。これにより、認知機能の変化と、萎縮などの脳の物理的な状態の両面から確認することができ、将来的な変化の兆しにも気づきやすくなります。
さらに特徴的なのは、プレゼント機能がある点です。本人が自分で申し込まなくても、家族が費用を負担してサービスを利用してもらうことができます。検査結果はプレゼントした側も確認できるため、離れて暮らしている場合でも状況を把握しやすくなります。
こうしたサービスを活用しながら継続的に見守る仕組みを持つことが、家族にとっての安心につながる一つの方法です。
まとめ
今回は、親の物忘れが気になったときに知っておきたいポイントや、家族としてできる具体的な向き合い方について紹介しました。
認知症はさまざまな要因が重なって発症すると考えられており、特定の原因だけで説明できるものではありません。しかし、発症リスクに大きく関係するとされている要因の一つが加齢です。
実際に、年齢が高くなるほど認知症の有症率は上昇するとされており、特に85歳以上では有症率が大きく高まります。こうした背景を考えると、ある程度の年齢になれば、誰にとっても身近な可能性のある問題だといえるでしょう。
だからこそ大切なのは、過度に恐れることではなく、早い段階で変化に気づき、適切に対応していくことです。早期に気づくことができれば、医療や生活面でのサポートを取り入れながら、本人らしい生活をできるだけ長く続けていくことにもつながります。
親の物忘れに気づいたときは、一人で抱え込まず、家族や周囲の人、専門機関の力も借りながら向き合っていくことが大切です。日頃から見守る仕組みや相談先を知っておくことで、将来への不安を少しずつ軽くすることにもつながります。
- 画像素材:PIXTA
【参考文献(ウェブサイト)】
- 厚生労働省(n.d). 平均寿命と健康寿命. [オンライン]. 2026年4月1日アクセス,
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/hale/h-01-002 - 国立長寿医療研究センター(2024). あたまとからだを元気にするMCIハンドブック. [オンライン]. 2026年4月1日アクセス,
https://www.mhlw.go.jp/content/001272358.pdf
【参考文献(書籍)】
- 秋下雅弘(2023). 目で見てわかる認知症の予防. 成美堂出版.
- 朝田隆(2014). まだ間に合う!今すぐ始める認知症予防. 講談社.
- 朝田隆(2025). 軽度認知障害(MCI)がわかる本. 講談社.
- 朝田隆/森進(2023). 認知症を止める「脳ドック」を活かした対策. 三笠書房.
- 朝田隆(2023). 認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること. アスコム.
- 旭俊臣(2022). 増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症. 幻冬舎.
- 浦上克哉(2021). 科学的に正しい認知症予防講義. 翔泳社.
- 北原逸美/ながさき一生(2025). 認知症の教科書 増補改訂版. ニュートン.
- 加藤俊則(2021). ビジュアル図解 脳のしくみがわかる本. メイツ出版.
- 高島明彦/村上もとか(2022). JIN-仁-と学ぶ認知症「超」早期発見と予防法. 集英社クリエイティブ.
- 森勇馬(2023). 認知症は予防が9割. マガジンハウス.
- 山田悠史(2022). 最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM. 講談社.
- 山田悠史(2025). 認知症になる人 ならない人. 講談社.
- 和田秀樹(2024). みんなボケるんだから. SBクリエイティブ.
この記事の監修者
佐藤俊彦 医師
福島県立医科大学卒業。日本医科大学付属第一病院、獨協医科大学病院、鷲谷病院での勤務を経て、1997年に「宇都宮セントラルクリニック」を開院。
最新の医療機器やAIをいち早く取り入れ、「画像診断」によるがんの超早期発見に注力、2003年には、栃木県内初のPET装置を導入し、県内初の会員制のメディカル倶楽部を創設。
新たに 2023年春には東京世田谷でも同様の画像診断センター「セントラルクリニック世田谷」を開院。
著書に『ステージ4でもあきらめない 代謝と栄養でがんに挑む』(幻冬舎)『一生病気にならない 免疫力のスイッチ』(PHP研究所)など多数。
