トップ > 公式ブログ > その物忘れ、大丈夫?気をつけたい記憶力の変化とは

その物忘れ、大丈夫?気をつけたい記憶力の変化とは

「今、何をしようとしていたんだっけ?」「切れた調味料を買いに行ったはずなのに、なぜか全然違うものを買って帰ってきた」——そんな物忘れを多くの方が経験したことがあるのではないでしょうか。

また、年齢を重ねるにつれて「最近、物忘れが増えてきた気がする」と感じる人も少なくありません。実際、記憶力は加齢の影響を受けやすく、ある程度の変化は自然なものだといえます。

しかし、一口に物忘れといっても、そのすべてが同じではありません。物忘れには、加齢に伴って起こる心配のいらないものと、脳の機能低下が背景にあり、注意が必要なものとが存在します。これらを区別せずに放置してしまうと、脳からのサインである重要な変化を見逃してしまう可能性もあります。

そこで今回は、物忘れが起こるメカニズムや、記憶力を支えている脳の働きについてわかりやすく解説するとともに、記憶力を維持するために日常生活で取り入れたい効果的な取り組みについて紹介します。

「物忘れが増えた」と感じるのはなぜか

ではまず、「物忘れ」とはどのような状態を指すのか、一度整理してみましょう。

「昔からの友人の名前がどうしても思い出せない」「目的があってスマートフォンを手に取ったのに、何をしようとしていたのか忘れてしまった」——こうした、いわゆる「度忘れ」を経験したことがある人は多いのではないでしょうか。

このような物忘れは、脳の中にすでに存在している必要な情報にうまくアクセスできないことで起こる現象です。先ほどの例で言えば、「友人の名前」や「スマホでやろうとしていた用事」という情報自体は脳に保存されているものの、そこへつながる経路が一時的に見つからなくなっている状態といえます。ただし、一度は思い出せなくても、しばらくしてから「そうだ、あの人は〇〇さんだった」「昨日届いたメッセージに返信しようとしていたんだ」と、後から思い出せるのであれば、これは一時的な脳の機能低下によるものと考えられ、過度に心配する必要はありません。

人が物事を記憶する際には、脳内にある神経細胞と、その細胞同士をつなぐシナプスと呼ばれる連絡部分が組み合わさり、情報が記憶として蓄えられています。若い頃は、この神経細胞とシナプスの組み合わせが豊富に存在しており、使いやすい経路を選びながら、効率よく情報を記憶することができます。幼少期や10代の頃に、友人の名前やマンガのキャラクター名をすぐに覚えられたのは、脳の中に「情報を処理しやすい神経回路」が多く、新しい情報をスムーズに取り込めていたからです。

一方で、脳に蓄積される情報は年齢とともに増え続ける一方、神経細胞やシナプスの数は加齢とともに少しずつ減少していきます。その結果、新しい情報を記憶するための空き回路が減り、記憶の効率が徐々に落ちていくのです。

さらに、記憶を呼び起こすために必要な電気信号の働きも、加齢とともに衰えやすくなります。これらが重なることで、「思い出そうとしているのに出てこない」といった度忘れが、以前より増えたように感じられるのです。

その物忘れ、大丈夫?気をつけたい記憶力の変化とはのイメージ画像
画像素材:PIXTA

記憶力はどのように変化していくのか

脳は非常に可塑性の高い器官です。若く、まだ蓄積されている情報が少ない状態の脳は、たとえるなら乾いたスポンジのようなもの。新しい情報をぐんぐん吸収し、そのまま保持することができます。しかし、年齢を重ねるにつれて、脳の中にはこれまでの経験や知識が次々と蓄積されていきます。すでに多くの水分を含んだスポンジに、さらに水を含ませようとすると難しくなるように、新しい情報を定着させることは徐々に大変になっていきます。

実際、近年の研究では、脳機能のうち情報処理能力や一般的な記憶力のピークは10代後半〜20代前半、さらに人の名前を覚えるといった記憶力のピークは20代前半と報告されています。こうした変化の背景には、加齢に伴う脳の構造的な変化、いわゆる脳の萎縮が関係していると考えられています。

人の脳の容量は20歳前後をピークに、その後はゆるやかに減少していきます。20代と80代の脳を比較した画像を見たことがある人もいるかもしれませんが、その違いは加齢によって脳が少しずつ萎縮していくために生じるものです。そこに年齢とともに増え続ける情報の蓄積が重なることで、「新しいことが覚えにくくなった」と感じるようになるのは、生理的に自然な変化ともいえるでしょう。

ただし、ここで注意しておきたいのは、脳全体のピークが若い頃にすべて過ぎ去ってしまうわけではないという点です。実は、集中力は40〜50代にかけて高まりやすいとされ、理解力や新しい知識を学ぶ力も40代以降に伸びる側面があることが指摘されています。こうしたことから、脳機能のすべてが若年期に衰えていくわけではありません。

記憶力は比較的早い段階でピークを迎えるため、年齢による変化を実感しやすい機能ではありますが、それだけで「脳全体が衰えている」と判断するのは早計です。脳は年齢に応じて役割や得意分野を変えながら、使い方次第で力を発揮し続ける器官なのです。

その物忘れ、大丈夫?気をつけたい記憶力の変化とはのイメージ画像
画像素材:PIXTA

疲れやストレスが物忘れに与える影響

ここまで、加齢による物忘れの変化について見てきましたが、記憶力の低下を招く要因は年齢だけではありません。「忙しいときにメールを確かに読んだはずなのに、内容が頭に残っていない」「強いストレスのかかる状況で、ついさっき聞いた話や頼まれごとをすぐに忘れてしまった」——こうした経験に心当たりのある人も多いのではないでしょうか。

実際、疲労やストレスが脳機能を一時的に低下させ、物忘れを増やすことが、さまざまな研究から明らかになっています。体感としても「疲れているときほどミスが増える」「余裕がないと記憶が抜け落ちやすい」と感じる方は少なくないはずです。

その背景には、脳のエネルギー事情があります。脳は、胃や腸といった他の臓器とは異なり、多くのエネルギーを使いながら働いている器官です。私たちは意識していなくても、日常生活の中で判断や選択を絶えず繰り返しており、その処理のために脳は休みなく稼働し続けています。脳が働くということは、神経細胞が電気信号を発し続けるということでもあり、そのためには大量のエネルギーが必要です。しかも、脳が利用できるエネルギー源は基本的にブドウ糖が中心であり、必要なときに一気に供給量を増やすといった柔軟な調整が難しい面があります。そのため、脳は常に余裕の少ない状態で働いているのです。

このような状態では、疲労が蓄積すれば脳機能が一時的に低下するのも自然なことです。さらに、疲労していても脳は動き続けるため、神経が酷使されることによる負担は修復されにくく、回復にも時間がかかることが分かっています。

ストレスもまた、記憶力に大きな影響を与えます。ストレスには、ケガや病気による身体的ストレスだけでなく、人間関係のトラブルや睡眠不足、過度なプレッシャーなどによる精神的ストレスがあります。これらに長期間さらされると、脳の視床下部や下垂体の働きが乱れ、自律神経や神経系全体に悪影響を及ぼす可能性があります。

その結果、脳は「ストレスに対処すること」を最優先に働く状態になり、記憶を定着・再生するための機能が後回しにされます。こうして、副次的に物忘れや記憶力の低下が起こりやすくなるのです。

つまり、疲れやストレスによる物忘れは、「気のせい」や「注意力の問題」ではなく、脳が限界に近い状態を示すサインとも考えられます。物忘れが増えたと感じたときは、年齢だけでなく、日々の疲労やストレスの状態にも目を向けることが欠かせません。

年齢による物忘れと注意が必要な物忘れの違い

ここまで、「加齢による記憶力の変化」や「疲れ・ストレスによる一時的な脳機能の低下」について見てきました。これらはいずれも、脳の性質や身体の仕組みを考えれば、ある程度は避けられない変化といえます。しかし、こうした物忘れの中には、注意が必要なサインを含む物忘れである場合もあります。

記憶力は非常に高度な脳機能である一方、年齢による身体的変化や、疲労・ストレスといったコンディションの影響を受けやすい側面も持っています。そのため、「年のせい」「忙しかったから」と片づけられる物忘れが多いのも事実です。一方で、そうした要因とは別に、脳そのものに重要な変化が生じている場合にも、記憶力に変化があらわれることが知られています。うつ病などの精神疾患、パーキンソン病といった神経変性疾患、さらには認知症の初期段階においても、記憶に関する違和感が比較的早い段階から表れることがあります。

「認知症は高齢者の病気」「まだ若いから関係ない」と感じる方もいるかもしれません。しかし、確かに発症数は多くないものの、若年性認知症のように20代・30代で診断されるケースも存在します。そして、そうした方々が診断に至る前に自覚していた変化の一つが、これまでとは異なる記憶力の違和感であったことも少なくありません。

先に触れたように、記憶力は非常に繊細な機能です。その分、影響を受けやすく「問題のない物忘れ」と「注意が必要な物忘れ」の両方が存在します。だからこそ、どのような物忘れが心配のいらないものなのか、どのような変化には注意すべきなのかをあらかじめ知っておくことが重要です。知識があれば、違和感にいち早く気づき、状況が深刻になる前に適切な対処につなげることができます。

次からは、注意が必要な物忘れの特徴について具体的に見ていきましょう。

その物忘れ、大丈夫?気をつけたい記憶力の変化とはのイメージ画像
画像素材:PIXTA

物忘れの内容をなかなか思い出せない

物忘れには「問題のないもの」と「注意が必要なもの」があります。その見分け方のひとつとしてよく挙げられるのが、「忘れたことをあとから思い出せるかどうか」です。

一時的に思い出せなくても、時間が経ったり、何かのきっかけで「そういえばあれだった」と思い出せる場合は、心配のいらない物忘れであることが多いとされています。これは、記憶そのものが失われたのではなく、必要な情報に一時的にうまくアクセスできなかった状態のためです。加齢や疲労、ストレスなどの影響によって、記憶を引き出す働きが弱まることは誰にでも起こります。この場合、後から思い出せるのであれば、再び情報にアクセスできたと考えられます。

一方で注意が必要なのは、物忘れの内容そのものをいつまでも思い出せない状態です。これは、必要な情報に継続してアクセスできていない可能性を示しています。こうした物忘れは、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患の初期段階で見られることがあります。また、脳機能が著しく低下している可能性も否定できません。気になる状態が続く場合は、早めに医療機関や専門機関に相談することをおすすめします。

物忘れを指摘されることがよくある

周囲から「最近、物忘れが多いね」と指摘されることがよくある場合、それは単に物忘れが起きているだけでなく、自分自身ではその物忘れに気づけていない可能性を示しています。

この「物忘れを自覚できていない」状態が問題となる理由のひとつに、自己を客観的に捉える力、いわば自分を俯瞰して見る機能が低下している可能性がある点が挙げられます。自分自身と、それを取り巻く環境を一歩引いた視点から捉える力は、非常に高度で複雑な脳の働きです。自分の行動や周囲の反応、さまざまな立場からの情報を統合しながら状況を判断するため、処理すべき情報量も多くなります。物忘れをしているにもかかわらず、それを自覚できていない場合、脳がこうした複雑な情報処理を十分におこなえていない状態とも考えられます。

さらに注意したいのは、一度だけでなく、繰り返し指摘されている場合です。これは、過去に指摘された事実そのものを忘れてしまっている可能性を示唆します。

つまり、物忘れを何度も指摘される状態は、物忘れが慢性的に起こっているだけでなく、そのこと自体を覚えていられない、あるいは認識できていない状態であるといえます。このような物忘れは、注意深く様子を見守ることが大切です。

物忘れが不安で心配していることが多い

「物忘れが心配で何度も確認する」「忘れないようにと念入りに準備するあまり荷物が増えてしまう」――このような行動は、多くの場合「心配性」の範囲に収まることがほとんどです。自分の失敗に自覚的で、対策まで講じている点では、むしろ適応的な行動だといえるでしょう。一方で、「自分は物忘れをしているのではないか」という不安や心配が、理由もなく頻繁に頭に浮かぶ場合には、少し注意が必要かもしれません。

というのも、物忘れには必ず「忘れる対象」があります。たとえば、「切れた調味料を買いに行ったのに、何を買いに来たのか忘れた」「以前やり取りのあった取引先の担当者の名前を思い出せない」といったケースでは、忘れてしまった内容が明確です。

しかし、物忘れへの不安が強い場合、心配している対象は「何かを忘れた」という事実ではなく、「自分が何を忘れているのか分からない」という状態そのものであることがあります。

この状態は、物忘れが実際に増えており、周囲から指摘されることもある一方で、「何を忘れたのか」「どこが抜けているのか」を自分では把握できていない状態ともいえます。こうした変化は、一部の認知症でも見られることがあります。もちろん、すぐに深刻な問題があると決めつける必要はありませんが、こうした不安な状態が長期間続いている場合には、一度専門家に相談してみることも大切です。

その物忘れ、大丈夫?気をつけたい記憶力の変化とはのイメージ画像
画像素材:PIXTA

記憶力を良好に保つための取り組み

ここまで、記憶力が低下する仕組みや、注意が必要な物忘れについて見てきました。では最後に、記憶力をできるだけ良好に保つために、私たちが日常でできる取り組みについて考えていきましょう。

記憶力を維持するうえで最も大切なのは、脳のコンディションを良好に保ち、その状態をできるだけ長く維持することです。では、「脳のコンディションを良好に保つ」とは、具体的に何を意味するのでしょうか。結論からいえば、それは特別なことではなく、健康管理そのものになります。

脳は目に見えず、触れることもできない器官ですが、身体の一部であることに変わりはありません。身体の調子が整ってこそ、脳も本来の働きを発揮することができます。つまり、脳を良好に保つことは、身体を良好に保つことと同義なのです。

誰しも、「今日はなんだか調子が悪い」「今日は頭が冴えている」といった体調の波を感じた経験があるでしょう。こうした体調の変化には、必ず何らかの要因があります。体調を崩した理由、逆に調子が良かった理由が、日常のどこかに存在しているはずです。

体調管理とは、体調を悪くする要因をできるだけ減らし、体調を良好にする要因をできるだけ増やしていくことにほかなりません。そこに、特別な才能や極端な努力は必要ありません。

ここからは、日々の生活の中で無理なく取り入れられる、脳や記憶力を良好に保つための具体的な取り組みについて紹介していきます。

運動習慣をつける

健康管理の中でも、特におすすめしたいのが運動習慣を持つことです。脳を健やかに保ち、身体の機能を維持するうえで、運動ほど幅広い効果が期待できる取り組みはそう多くありません。

そもそも、私たちの身体は動くことを前提に作られています。運動をほとんど必要としない現代の生活様式のほうが、むしろ例外的だと言えるでしょう。運動は生命活動の基本ともいえる存在なのです。実際に、さまざまな研究から「よく歩く人は認知機能が低下しにくい」「歩行量が多いほど記憶力を維持しやすい」といった傾向が示されています。記憶力を長期的に保つという観点でも、運動は非常に重要な役割を果たします。

ここで押さえておきたいのは、脳や記憶力のために必要な運動は必ずしも激しいものである必要はないという点です。ウォーキングや散歩、エスカレーターを使わずに階段を選ぶこと、無理なく全身を動かせるラジオ体操など、運動経験に左右されず誰でも取り入れやすい動きでも、血流を促進し、脳を活性化させる効果が期待できます。さらに、運動にはストレス解消効果があり、適度な疲労によって睡眠の質が向上しやすくなるなど、記憶力にとってプラスとなる効果がいくつもあります。まさに一石三鳥の習慣と言えるでしょう。

なお、厚生労働省が発表する「健康づくりのための身体活動・運動ガイド」では、「日常生活の中でこまめに身体を動かすこと」や「息が弾む程度の運動を継続すること」などが推奨されています。 まずは「少し歩く時間を増やす」ことから、無理のない範囲で運動を生活の一部に取り入れていきましょう。

その物忘れ、大丈夫?気をつけたい記憶力の変化とはのイメージ画像
画像素材:PIXTA

メンタルケアでストレスを溜めない

ストレスが脳に影響を及ぼすことについては先ほど触れましたが、過度なストレスは脳だけでなく、心身全体に悪影響を及ぼすことが、研究によって示されています。

では、そもそもストレスとは何でしょうか。一般的に使われる「ストレス」とは、外部からの刺激(ストレッサー)によって引き起こされるストレス反応のことを指します。これは、身体の状態が乱された際に、それを元に戻そうとする働きであり、一種の防衛反応でもあります。そのため、社会生活を送る以上、ストレスそのものを完全になくすことは現実的ではありません。しかし、問題となるのはストレスが長く続き、慢性化することです。その状態が続くと、ストレスの影響は脳にとどまらず、全身に及ぶ可能性があります。

近年の研究では、ストレスによって分泌されるホルモンの一つである「コルチゾール」が、遺伝子を傷つける作用を持つことが示されています。遺伝子は加齢によって少しずつ損傷を受けるものですが、ストレスが強い状態が続くと、そのスピードが早まる可能性があると考えられています。つまり、ストレスを放置することは、老化を早めるリスクを高めることにもつながるのです。

とはいえ、ストレスは外部刺激に対する自然な反応である以上、完全に消し去ることはできません。そこで重要になるのが、ストレスを溜め込まず、早めに解消することです。 そのためには、まず自分自身のストレス状態に気づくことが欠かせません。ストレス解消の方法には個人差がありますが、特別な準備や道具がなくてもできるケアはたくさんあります。たとえば、「首・肩・背中をゆっくり回すストレッチする」「仕事や家事の手を止めて、1分ほど目を閉じる」といった、短時間でできる方法でも十分に効果が期待できます。

こうした小さなケアを日常の中でこまめに取り入れ、ストレスを深刻化させない習慣をつくることが、脳や記憶力を守るうえでの大切なポイントです。

質の良い睡眠

心身と脳のコンディションを良好に保つうえで、睡眠は欠かすことのできない要素です。特に睡眠不足は、肥満や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病だけでなく、うつなどの精神疾患、さらには認知症とも関連があることが、国内外の研究から示されています。健康管理を考えるうえで、睡眠は軽視できない存在と言えるでしょう。

裏を返せば、睡眠をおろそかにすることは、そのまま健康を損なうことにつながるということでもあります。忙しい日々の中で削られがちな睡眠ですが、長期的に見れば大きな代償を払うことになりかねません。

健康管理において重要なのは、単に「寝ること」ではなく、質の良い睡眠をとることです。ここで言う睡眠の質には、睡眠時間も含まれます。質の良い睡眠とは、「朝までぐっすり眠れ、日中に強い眠気を感じずに過ごせる状態」を指します。私たちは眠っている最中の自分の状態を直接確認することはできません。そのため、起床後や日中の体調を手がかりに、自分の睡眠の質を判断することが重要になります。

睡眠の質を高めるために意識したいポイントは、大きく分けて三つあります。
一つ目は「入眠時間をばらつかせないこと」。
二つ目は「十分な睡眠時間を確保すること」。
三つ目は「入眠前に、睡眠の質を下げる行為を避けること」です。

特に注意したいのが、入眠時間のばらつきです。就寝時間が日によって大きく変わると生体リズムが乱れ、本来であれば、一定の睡眠時間で回復できていたはずの疲労が十分に解消されず、疲労が蓄積していく原因になります。

入眠の3時間前までに食事を済ませ、部屋を暗くして室温を整えるなど、リラックスできる環境を整えることも大切です。就寝時間のばらつきを30分程度に抑え、日中に強い眠気を感じずに過ごせる睡眠時間を確保することで、睡眠の質の向上が期待できます。

質の良い睡眠は、脳と身体を回復させ、記憶力を支える土台となるものです。今日からできる小さな工夫を積み重ね、睡眠を「整えるもの」として見直していきましょう。

その物忘れ、大丈夫?気をつけたい記憶力の変化とはのイメージ画像
画像素材:PIXTA

まとめ

今回は、物忘れが生じるメカニズムや記憶力が変化する要因について解説するとともに、記憶力を良好に保つために日常の中でできる取り組みを紹介しました。

見てきたように、記憶力は加齢の影響を受けやすく、疲れやストレスなどによって一時的にうまく働かなくなることもあります。そのため「最近、物忘れが増えた」と感じること自体は、必ずしも珍しいことではありません。

一方で、物忘れの中には心配のいらないものもあれば、注意が必要なものが含まれている場合もあります。注意が必要な物忘れの背景には、認知症をはじめとした脳の変化が隠れている可能性もあるため、深刻な状態に進行する前に気づき、早期に対処することが重要です。早期発見・早期対応につなげることで、症状の進行を抑えられる可能性も期待できます。

そこでおすすめしたいのが、『認知症と向き合う365』です。このサービスは、認知機能セルフチェックに加え、MRIによる脳画像撮影とAI解析をおこなう「BrainSuite®」を組み合わせ、脳を「機能」と「構造」の両面からセルフモニタリングできる仕組みとなっています。

現時点では、発症した認知症を完全に元の状態へ戻す方法は確立されていません。しかし、症状が表れる前の「超早期」から自身の脳の状態を把握し、変化に気づきやすい環境を整えておくことで、早期発見・早期対応につながる可能性が高まります。

認知症は、要介護となる主な原因の一つでもあり、認知症への対策はそのまま要介護予防にも直結します。人生100年時代と言われる今だからこそ、少し先の未来を見据えて、早めに取り組むことが将来の安心につながるはずです。これからの健康を支える「健康投資」として、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。


【参考文献(ウェブサイト)】

【参考文献(書籍)】

  • 朝田隆/森進(2023). 認知症を止める「脳ドック」を活かした対策. 三笠書房.
  • 石井直明(2021). アンチエイジングの教科書. 東海教育研究所.
  • 伊藤裕(2025). 老化負債. 幻冬舎.
  • 加藤俊則(2021). ビジュアル図解 脳のしくみがわかる本. メイツ出版.
  • 上村理絵(2024). こうして、人は老いていく. アスコム.
  • 櫻井武(2017). 睡眠の科学・改訂新版. 講談社.
  • 杉晴夫(2008). ストレスとはなんだろう. 講談社.
  • 高島明彦/村上もとか(2022). JIN-仁-と学ぶ認知症「超」早期発見と予防法. 集英社クリエイティブ.
  • 中西真/新井康通(2024). 今と未来がわかる 老化の科学. ナツメ社.
  • 樋口満(2025). 健康寿命と身体の科学. 講談社.
  • 柳沢正史(2024). 今さら聞けない 睡眠の超基本. 朝日新聞出版.
  • 山川みやえ(2022). 認知症Plus若年性認知症. 日本看護協会出版会. 渡辺恭良/水野敬(2018). 疲労と回復の科学. 日刊工業新聞社.

この記事の監修者

佐藤俊彦 医師

佐藤俊彦 医師

福島県立医科大学卒業。日本医科大学付属第一病院、獨協医科大学病院、鷲谷病院での勤務を経て、1997年に「宇都宮セントラルクリニック」を開院。
最新の医療機器やAIをいち早く取り入れ、「画像診断」によるがんの超早期発見に注力、2003年には、栃木県内初のPET装置を導入し、県内初の会員制のメディカル倶楽部を創設。
新たに 2023年春には東京世田谷でも同様の画像診断センター「セントラルクリニック世田谷」を開院。
著書に『ステージ4でもあきらめない 代謝と栄養でがんに挑む』(幻冬舎)『一生病気にならない 免疫力のスイッチ』(PHP研究所)など多数。