体調不良と脳の状態は関係している?知っておきたい脳と身体のつながり
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私たちは身体の調子が崩れると「これは不調だ」と認識しやすいものです。たとえば「胃がもたれて食欲が出ない」「お腹の調子が安定せず、下痢や便秘を繰り返す」といった体調不良は、多くの人が一度は経験したことがあるのではないでしょうか。このような身体の不調は自覚しやすく、食事を軽めにしたり、いつもより早く休むなど、比較的早い段階で対処につなげやすい特徴があります。
一方で、脳は目に見えない臓器であるため、その不調や変化に気づくことは難しいとされています。しかし、脳も他の臓器と同様に、疲労や負荷によってパフォーマンスが低下することがあります。ただし、その変化は「脳そのものの不調」として自覚されにくく、記憶力や集中力の低下、身体の違和感といった日常的な不調としてあらわれやすい傾向があります。そのため、脳の不調が見過ごされるケースも少なくありません。
そこで今回は、身体と脳の不調の関係について解説するとともに、脳のコンディションを整えるために日常生活で取り入れやすい具体的な取り組みを整理していきます。
体と脳はどのようにつながっているのか
まずは、身体と脳の不調の関係について考える前に、両者がどのようにつながっているのかを整理してみましょう。
ご存じの通り、脳は生命活動のあらゆる領域を司る、非常に重要な器官です。記憶力や言語力、計算能力といった高度な認知機能をはじめ、歩行や発声といった運動機能、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚といった五感、さらには食欲・睡眠・性欲といった三大欲求や、怒り・悲しみ・喜び・共感といった感情の働きまで、私たちが「人として生きる」ための土台となる機能のほとんどを担っています。
ここで押さえておきたいのは、脳がいわゆる「人らしさ」の土台である一方で、その働きは身体の状態に支えられているという点です。身体という生命活動の基礎が健やかに保たれているからこそ、脳の高度な働きも維持されています。脳と身体は、相互に影響し合う切り離せない関係にあるのです。
そのため、脳のパフォーマンスは身体のコンディションに強く左右されます。たとえば、徹夜明けで睡眠が不足しているときや、風邪をひいて体調を崩しているときに「考えがまとまらない」「集中できない」と感じた経験がある人も多いのではないでしょうか。これは身体の状態が整っておらず、脳が本来の力を発揮できていない状態と考えられます。
このように、脳の調子が低下している場合も、その影響は脳そのものではなく、身体の不調や日常生活での違和感としてあらわれやすいとされています。ここからは、脳が不調なときにあらわれやすい具体的な症状について見ていきましょう。

画像素材:PIXTA脳の働きが低下すると起こりやすい不調
①記憶力や判断力の低下
記憶力や判断力といった認知機能は、私たちの脳が担う働きのなかでも非常に高度なものです。その一方で、脳のコンディションの影響を受けやすい領域でもあります。
たとえば、睡眠不足が続いているときや、疲労が蓄積しているときに、うっかりミスが増えたり、判断が鈍ったり、「今やろうとしていたことを忘れてしまう」といった経験をしたことがある人も多いでしょう。こうした状態は、脳が疲労しており、本来のパフォーマンスを十分に発揮できていないことが原因と考えられます。仕事が立て込んで一時的に睡眠不足になっているなど、原因がはっきりしており、十分な休養によって体調が回復し、元の状態に戻るのであれば過度に心配する必要はありません。
しかし注意したいのは、現代の生活環境そのものが、脳にとって疲労をためやすい状況にあるという点です。私たちは日々、スマートフォンやパソコン、テレビ、SNSなどを通じて、膨大な情報にさらされています。このような環境下で脳が常に情報を処理し続けていれば、脳が疲弊し、不調に陥るのも無理はありません。そして、その影響が最もあらわれやすいのが、記憶力や判断力の低下です。
こうした状態を「年齢のせい」「忙しいから仕方がない」と放置してしまうと、記憶力や判断力が低下した状態が当たり前になり、さらに回復しにくくなる可能性もあります。だからこそ、脳の疲れに早めに気づき、休養や生活習慣の見直しでこまめに整えていくことが重要です。
②寝ても寝足りない
睡眠は生命を維持するうえで欠かすことのできない基本的な営みです。適切に睡眠をとることによって、私たちは数十年という長い人生を通して、身体と脳の健康を保つことができるのです。
睡眠中には、覚醒している間に蓄積された記憶や情報の整理、脳内にたまった老廃物の排出といった「脳のメンテナンス」がおこなわれます。さらに、身体の疲労回復や、体内環境を一定に保つ「ホメオスターシス(恒常性)」の維持・調整など、生きていくために必要なメンテナンスの多くが睡眠中におこなわれているのです。
このように睡眠は極めて重要な営みである一方で、忙しく時間に追われる現代人にとって、真っ先に削られやすい時間でもあります。特に日本人は慢性的な睡眠不足に陥りやすいことが知られており、主要先進国のなかでも睡眠時間が短い傾向にあることが指摘されています。
一方で、近年の研究から「必要な睡眠が満たされると、それ以上眠り続けることは難しい」という考え方も示されています。つまり、眠れる時間そのものが、身体と脳が必要としている睡眠量であり、十分に回復できている状態であれば、それ以上長く眠ることは難しいということです。
言い換えれば、身体と脳が健康で、必要な睡眠がきちんと取れている状態では「いくらでも眠れてしまう」という状況は起こりにくいと考えられます。にもかかわらず、毎日しっかり寝ているつもりなのに「いくら寝ても足りない」と感じる場合、身体や脳が不調に陥っており、通常より多くのメンテナンス時間を必要としている可能性があります。
また「寝ても寝足りない」という状態の背景には、生活習慣の乱れだけでなく、何らかの病気が関係しているケースもあります。一定期間、睡眠時間を十分に確保しているにもかかわらず、強い眠気や疲労感が続く場合には、放置せず医療機関への相談も検討することが大切です。

画像素材:PIXTA③メンタルヘルスの不調が続く
メンタルの状態は、脳と身体のコンディションの影響を受けやすいとされています。特に、脳は感情や気分といった情動を司る器官であるため、脳の調子が崩れれば、メンタルヘルスに不調があらわれるのも自然なことだといえるでしょう。
ここで一度「メンタルヘルス」の意味を整理しておきましょう。厚生労働省では、メンタルヘルスを「こころの健康状態」と定義しています。本ブログでも、この定義に基づいて話を進めていきます。
私たちの精神や心理に大きな影響を与えているのが「感情(情動)」です。この情動は、大脳の内側に広がる「大脳辺縁系」と呼ばれる領域で生まれると考えられています。大脳辺縁系は、喜びや怒り、悲しみといった感情だけでなく、理性や共感など、いわゆる「人間らしさ」を支える重要な役割を担っています。実際に、脳の病気によってこの領域の働きが低下すると、感情の起伏が激しくなったり、行動のコントロールに変化が生じることが知られています。つまり、脳のコンディションが低下し、その働きが鈍ると、感情が不安定になりやすく、結果としてメンタルヘルスの不調が続く状態に陥りやすくなるのです。
さらに注意したいのは、メンタルヘルスの不調を長期間放置することのリスクです。気分の落ち込みや意欲の低下が続くと、生活習慣が乱れやすくなり、セルフケアへの意識も低下しがちです。その結果、生活習慣病や、うつ病などの精神疾患につながる可能性があることも指摘されています。
特に、一度メンタルが落ち込み、パフォーマンスが低下した状態が続くと、その状態が「当たり前」になってしまい、さらに不調から抜け出しにくくなるという悪循環に陥ることもあります。だからこそ、メンタルヘルスの不調は「気の持ちよう」や「甘え」として片づけるものではありません。身体や脳からの大切なサインとして受け止め、早めに休養を取る、生活習慣を見直すなど、回復に向けた行動をとることが健康維持のために欠かせません。
ストレスが脳と体に与える影響
脳の健康を考えるうえで、ストレスがもたらす影響は見過ごすことができません。現代社会に生きる私たちは、知らず知らずのうちに多くのストレスにさらされていますが、その影響は脳だけでなく、全身に及ぶことがわかっています。
まずは、「ストレス」とは何かを整理しておきましょう。ストレスとは、外部からの刺激(ストレッサー)によって、身体や精神にさまざまな反応が起こる一連の状態を指します。私たちが日常的に「ストレスを感じる」と表現しているものの多くは、このストレス反応のことを指しています。
社会生活を送るうえで、外部からの刺激によるストレス反応を完全にゼロにすることは不可能です。また、適度な緊張やプレッシャーは、集中力を高めたり、より良いパフォーマンスを引き出すこともあるため、必ずしもストレスは悪いだけのものではありません。一方で、問題となるのは強いストレスに長期間さらされ続けることです。
慢性的なストレスは、脳の働きを低下させることが指摘されています。強いストレスによって抑え込まれた感情は、ホルモン分泌を司る脳の視床下部や脳下垂体といった重要な領域の働きを乱し、神経系に負担をかける可能性があります。さらに、脳下垂体から分泌される、いわゆるストレスホルモンが過剰になると、自律神経のバランスが崩れ、自律神経失調症をはじめとするさまざまな不調を引き起こす要因となります。
特に、ストレスと自律神経は非常に密接な関係にあります。自律神経は、日中に活発になる交感神経と、夜間に優位になる副交感神経から構成されており、呼吸や血流、消化、睡眠など、全身の臓器の働きを調整する重要な役割を担っています。ところが、強いストレスによってこのバランスが乱れると、睡眠障害や食欲不振といった一時的な不調があらわれやすくなります。さらにその状態が長期化すると、ストレス関連疾患へと進行し、気管支喘息などの呼吸器系疾患や、肥満、糖尿病といった生活習慣病のリスクを高めることも知られています。
これらの疾患は、短期的には深刻な症状としてあらわれにくい場合もありますが、長期的に見ると、うつ病などの精神疾患のほか、中年期以降には認知症リスクを高める要因にもなり得ます。その意味で、慢性的なストレスは決して軽視できない存在だと言えるでしょう。

画像素材:PIXTA脳の調子を整える習慣
ここまで、脳の不調によって起こりやすい変化や、そのまま放置した場合のリスクについて見てきました。ここからは、それらへの有効なアプローチの一つとして、脳の調子を整えるための習慣について紹介していきます。
まず前提として忘れないでいただきたいのは、脳も身体の一部であるということです。脳は直接目で見ることができない器官ですが、身体から切り離された存在ではありません。そのため「脳の調子を整える」ということは、言い換えれば「身体の調子を整える」こととほぼ同義だといえます。逆に考えれば、身体のコンディションを整えることで、脳の働きも自然と整いやすくなるということです。つまり、脳の調子を整えるために特別なことが必要というわけではありません。
一方で、現代人を取り巻く環境には注意が必要です。私たちは、歴史上類を見ないほど多くの情報に日々さらされており、脳は常にフル稼働を求められる状態にあります。しかも、その情報のすべてが心身にとって前向きで有益なものとは限りません。情報を処理する行為そのものが脳にとってストレスになることもあれば、触れた情報によって不安や恐怖といった感情が引き起こされ、それ自体が大きな負担になることもあります。
だからこそ、身体の調子を整えることに加えて、脳に過剰な負担をかけない環境を意識的につくることが、脳のコンディションを整えるうえで非常に重要になります。日々の習慣を少し見直すだけでも、脳は回復しやすくなるのです。
デジタルデトックスでリフレッシュ
現代人にとって、特に効果的な脳のリフレッシュ方法の一つが「デジタルデトックス」です。これは、意識的にスマートフォンやパソコンなどのデジタルデバイスに触れる時間を減らし、脳にかかる負荷を軽減する取り組みを指します。近年ではメディアでも頻繁に取り上げられており、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
では、なぜデジタルデバイスから距離を置き、触れる情報量を制限することが、脳のリフレッシュにつながるのでしょうか。言い換えれば、デジタルデバイスを通じて常に情報に触れ続けることには、どのような負担があるのでしょうか。
スマートフォンで次々と表示されるショート動画、世界中の出来事が瞬時に流れ込んでくるSNS、絶えず情報が切り替わる街頭広告など、私たち現代人は、かつてないほど情報があふれる環境で生活しています。しかし、その中に「今この瞬間に本当に必要な情報」が含まれているケースは、決して多くありません。
それにもかかわらず、私たちは大量の情報にさらされ、無意識のうちに処理し、感情的な反応を繰り返しています。実際、ショート動画やSNSのような短時間で強い刺激を与えるコンテンツは、依存性が高いことが複数の研究で指摘されています。
こうした刺激の強い情報に長時間触れ続けることで、本来は必要のないはずの負荷が脳にかかり続け、脳が慢性的な疲労状態に陥る可能性があります。その結果、集中力や記憶力の低下といった、脳のパフォーマンス低下を引き起こすリスクも高まります。
このように、「自分が求めていない情報」を処理し続けることは、想像以上に脳へ負担をかけ、疲労を蓄積させる行為なのです。だからこそ、デジタルデトックスによって意識的に情報量を減らすことは、脳への負担を和らげ、心身をリフレッシュさせる有効な手段となります。

画像素材:PIXTA運動習慣をつける
脳の回復におすすめしたい習慣の一つが、意外に感じるかもしれませんが「運動」です。
「脳を休ませるには、じっと休養を取るほうがよいのでは?」と感じる人もいるかもしれません。しかし、適度に身体を動かし、ほどよい疲労感を得ることは、心身のリフレッシュにつながり、結果として脳のコンディションを整えることにも役立ちます。
もとより運動がもたらす効果は非常に多岐にわたります。適度な強度の運動を継続することで、基礎体力や心肺機能の向上、筋力や骨格の強化が期待できるだけでなく、適度な疲労によって睡眠の質が高まり、集中力の改善にもつながることが知られています。さらに、運動習慣の優れた点は、自然とデジタルデトックスができることです。身体を動かしている間は、スマートフォンやパソコンから離れる時間が生まれ、脳を情報過多の状態から解放することができます。
特に注目したいのは、脳や心身の不調を整えるための運動は、必ずしもハードなものである必要がないという点です。ラジオ体操や散歩(ウォーキング)、軽いストレッチ、エスカレーターを使わずに階段を使うといった工夫など、日常生活の中で身体を動かす時間を少し増やすだけでも、心身と脳に良い影響を与えることが多くの研究から示されています。
むしろ最初から激しい運動を習慣にしようとすると、それ自体が心理的な負担になり、継続が難しくなってしまうことも少なくありません。無理をしなくても、軽く身体を動かすだけで十分な効果が期待できるのです。
だからこそ、「頑張る運動」ではなく、「気持ちよく続けられる運動」を意識することが大切です。楽しく動けて、心地よい疲労感を感じられる強度と時間を目安に、日常の中で身体を動かす習慣を少しずつ取り入れてみましょう。それが、心身と脳の調子を整える第一歩になります。
ストレスを溜め込まないケア習慣
ストレスが心身や脳に与える影響については、これまでに触れてきました。こうした影響を抑えるために大切なのは、意識的にストレスケアをおこない、ストレスが蓄積する前に解消することです。
まず押さえておきたいのは、「ストレスそのものを完全になくすことはできない」という事実です。人は外部からの刺激に対して反応することでストレスを感じます。そのため、社会の中で生活している限り、ストレスを感じないようにすることは現実的ではありません。
さらに、人間は「ストレスを感じている自分」に対してもストレスを感じてしまう、少し不思議な側面を持っています。「こんなことで疲れてはいけない」「気にしすぎだ」と自分を責めるほど、かえってストレスが増してしまうことも少なくありません。だからこそ大切なのは、「ストレスを感じないようにする」ことではなく、引き起こされたストレス反応を適切にケアし、長引かせないことです。
ストレス解消法は人それぞれですが、健康を目的としたストレスケアを意識することが重要です。暴飲暴食や過度な飲酒といった方法は、一時的に気が紛れることがあっても、結果的に身体へ負担をかけてしまうためおすすめできません。
ストレスケアは、必ずしもまとまった時間を必要とするものではありません。たとえば、「スマートフォンを置いて目を閉じ、1分間ぼーっとする」「ニュースやSNSから少し距離を置く時間をつくる」といった、日常の隙間時間にできる小さな休息でも、十分に効果があります。
ストレスは根本的にゼロにすることが難しいものだからこそ、こうした対処法をいくつか持っておくことが大切です。その時々の状況に応じて使い分けることで、ストレスをため込みにくくなります。

画像素材:PIXTA質の良い睡眠
睡眠は、私たちの生活と生命を支える基盤ともいえるものです。そのため、睡眠の質を高めることは、脳のコンディションを整えるだけでなく、心身全体の調子を整えるうえでも非常に重要です。実際、睡眠と健康のあいだには深い相関関係があることが、国内外のさまざまな研究によって示されています。睡眠が十分にとれていない状態では、健康を維持すること自体が難しくなると言っても過言ではありません。
「ぐっすり眠れた翌日は、驚くほど元気で、いつもよりパフォーマンスが高かった」という経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。これは、良好な睡眠によって、本来備わっている力がきちんと発揮されている状態だと考えられます。つまり、意識して睡眠の質を高めることで、これまで十分に発揮できていなかった能力が引き出され、生活の質(QOL)そのものも向上していくのです。
一説によると睡眠は「減点方式」と表現されることがあります。これは、睡眠の質を高めるためには、まず質を下げる要因をできるだけ減らすことが重要、という考え方です。もちろん、睡眠の質のためには睡眠時間の確保も欠かせません。目安として成人では8時間程度の睡眠が適切と考えられています。8時間前後眠っているにもかかわらず日中に強い眠気を感じる場合は、睡眠時間そのものが足りていないか、睡眠の質や病気の影響が関わっている可能性があります。日中に強い眠気を感じない状態を一つの目安に、自分にとって十分な睡眠時間を確保するよう心がけましょう。
さらに、睡眠の質を高めるためには就寝前の過ごし方や環境づくりも大切です。たとえば、就寝の3時間前までに食事を済ませる、寝酒を控える、寝室の温度や湿度を快適に保つといった取り組みで睡眠の質が高まりやすくなります。こうした小さな工夫を積み重ねることが、脳と心身のコンディションを整えます。

画像素材:PIXTA不調を放置すると脳に何が起こるのか
ここまで、脳の不調によって引き起こされるさまざまな変化と、それらに対する具体的なアプローチについて見てきました。ここからは、それらに適切に対処せず、脳の不調を放置した場合に、脳にどのような変化が起こりうるのかを見ていきましょう。
まず前提として知っておいてほしいのは、脳は非常に可塑性の高い臓器であるということです。脳は、良好な環境のもとで適切な刺激(負荷)と十分な休息が与えられれば、長期にわたって良いコンディションを保ち続けることができます。確かに、脳の構造的な容量は20歳前後をピークに少しずつ減少していきますが、脳の「機能」そのものは、年齢を重ねても成長し続けることがさまざまな研究から明らかになっています。
しかしその一方で、不安や心配が多い環境に置かれ、常に過剰な負荷がかかり、息をつく間もないような緊張状態が続くとどうなるでしょうか。本来発揮できるはずのパフォーマンスが出せない状態が次第に「普通」になってしまい、気づいたときには、元の良好な状態に戻りにくくなっていることも少なくありません。
つまり、脳の不調を放置していると、自分では気づかないうちに、本来の力が発揮できない「調子の悪い状態」が当たり前になってしまい、そこからさらに衰えやすくなる、そんな悪循環に陥る可能性があるのです。
また、こうした脳の不調は、身体の不調とも密接に関係しています。最初は疲れや違和感としてあらわれていたものが、知らぬ間に身体の不調へと広がり、気づけば全身のコンディション低下につながっている、というケースも決して珍しくありません。さらに、脳の不調を放置することは、認知機能の低下を招きやすく、長期的には認知症のリスクを高める要因にもなります。認知症は、要介護となる主要要因のひとつであり、要介護状態へ移行する可能性を大きく高めます。
このように、脳の不調によって生じる変化を放置することは、長期的に健康を損ねるだけでなく、人生の充実度そのものを下げてしまいかねません。だからこそ、「まだ大丈夫」と思わずに、できるだけ早い段階で気づき、対処していくことがとても大切なのです。
まとめ
今回は身体と脳の不調の関係について解説するとともに、脳のコンディションを整えるための具体的な取り組みを紹介しました。
現代人は、これまでの人類史上に例を見ないほど膨大な情報にさらされ、日々、絶え間なく流れ込んでくる情報を処理し続けています。そのような環境下では、脳が疲弊し不調に陥って本来のパフォーマンスを発揮できなくなるのも、決して不思議なことではありません。
こうした変化は、初期のうちは「年齢のせい」「疲れているだけ」と見過ごされがちです。しかし、定期的に状態を確認する習慣があれば、変化に早く気づき、対処につなげることができます。特に40代以降の方は、定期的に脳のコンディションをチェックすることで、認知症などにつながる可能性のある変化に早期に気づきやすくなります。より深刻な状態に進む前に適切な対応をおこなうことで、将来的なリスクを抑えることにもつながります。
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- 画像素材:PIXTA
【参考文献(ウェブサイト)】
- 厚生労働省(n.d.). ホメオスターシスについて. [オンライン]. 2026年2月4日アクセス,
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000123635.pdf - 厚生労働省(n.d.). メンタルヘルスとは. [オンライン]. 2026年2月4日アクセス,
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https://www.saiseikai.or.jp/medical/column/hypersomnia/
【参考文献(書籍)】
- アダム・オルター・著/上原裕美子・訳(2019). 僕らはそれに抵抗できない. ダイヤモンド社.
- アンナ・レンブゲ・著/恩蔵絢子・訳(2022). ドーパミン中毒. 新潮社.
- 大平哲也(2025). 健康な人の小さな習慣. ダイヤモンド社.
- 加藤俊則(2021). ビジュアル図解 脳のしくみがわかる本. メイツ出版.
- 櫻井武(2017). 睡眠の科学・改訂新版. 講談社.
- 杉晴夫(2008). ストレスとはなんだろう. 講談社.
- 坪井貴司(2024). 「腸と脳」の科学. 講談社.
- 堀田秀吾(2025). 科学的に証明されたすごい習慣大百科. SBクリエイティブ.
この記事の監修者
佐藤俊彦 医師
福島県立医科大学卒業。日本医科大学付属第一病院、獨協医科大学病院、鷲谷病院での勤務を経て、1997年に「宇都宮セントラルクリニック」を開院。
最新の医療機器やAIをいち早く取り入れ、「画像診断」によるがんの超早期発見に注力、2003年には、栃木県内初のPET装置を導入し、県内初の会員制のメディカル倶楽部を創設。
新たに 2023年春には東京世田谷でも同様の画像診断センター「セントラルクリニック世田谷」を開院。
著書に『ステージ4でもあきらめない 代謝と栄養でがんに挑む』(幻冬舎)『一生病気にならない 免疫力のスイッチ』(PHP研究所)など多数。
