生活習慣を見直すべきサインとは?体調の変化から考える
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「なんとなくずっと身体がだるい」「以前は楽しめていた趣味に気持ちが向かない」「お風呂に入るのさえ億劫に感じる」――こうした不調に心当たりはないでしょうか。忙しい日々のなかで、多少の疲れや気分の落ち込みは珍しいことではありません。その結果「週末にまとめて寝れば大丈夫」「とりあえず総合感冒薬を飲んでやり過ごそう」といった、その場しのぎの対処で済ませてしまいがちです。
しかし、こうした状態が長く続いている場合、背景には生活習慣の乱れが積み重なっている可能性があります。慢性的なだるさや意欲の低下は、ある日突然あらわれるものではなく、日々の食事、睡眠、運動といった習慣の影響が少しずつ表面化した結果とも考えられます。そのため、根本的な改善を目指すには一時的な対症療法ではなく、生活習慣そのものを見直すことが欠かせません。
そこで今回は、生活習慣を見直すべきサインについて解説するとともに、今日から取り入れやすい具体的な取り組みについて紹介します。
なぜ「生活習慣の見直し」が必要なのか
ではなぜ、生活習慣の見直しが慢性的な不調と関係しているのでしょうか。その理由を理解するためには、まず人間が本来備えている「生体維持の仕組み」について知る必要があります。
私たちの身体は「一定の体温を保つ」「呼吸を絶えず繰り返す」「食べたものを消化・吸収する」といった生命を維持するための働きを、意識することなく24時間休みなく続けています。こうした機能は、外部環境の変化や体内の状態に左右されながらも、常に安定した状態を保とうと調整しています。この仕組みは「ホメオスターシス(恒常性維持)」と呼ばれ、体温、血圧、血糖値、呼吸、免疫、エネルギー代謝など、多岐にわたる生理機能を精密にコントロールしています。
ホメオスターシスは非常に優れた仕組みであり、一時的に「徹夜でドラマを見続ける」「脂っこい食事を一度に多く摂る」といった負荷がかかったとしても、すぐに大きく崩れることはありません。もしこの調整機能が弱ければ、私たちは日常生活を送ることすら難しくなってしまうでしょう。
しかし問題となるのは、負担の大きい生活習慣が「一時的」ではなく「継続的」に続く場合です。毎日の飲酒、長期的な運動不足、在宅ワークなどによる昼夜逆転といった不規則な習慣が長く続くと、少しずつ、しかし確実に身体へ影響を与えます。こうした積み重ねが、これまで安定していたホメオスターシスを乱してしまうのです。
その結果、「なんとなく身体がだるい状態が続く」「以前は楽しめていたことに興味が湧かない」「入浴や身支度が億劫に感じる」といった、病気とまでは言えないものの、心身の不調が慢性的にあらわれることがあります。例えば風邪のような一時的な不調とは異なり、これらは生活の質そのものをじわじわと下げていきます。
だからこそ、ホメオスターシスを安定させ、良好なコンディションを維持するためには日々の生活習慣を見直し、心身に過度な負担をかける要因を減らしていくことが欠かせないのです。

画像素材:PIXTA生活習慣を見直すべき体調の変化
ここからは、生活習慣を見直したほうがよいと考えられる、具体的な体調の変化について見ていきましょう。心身の不調は必ずしも特別なものではありません。仕事の繁忙期が続いたり、人間関係で強いストレスを感じたりと、現代社会には心や身体のバランスが乱れやすい要因が多く存在します。その原因がはっきりしており、気がつけば自然に解消していたといった一時的なものであれば、過度に心配する必要はないでしょう。
一方で、明確な理由が思い当たらないにもかかわらず、不調が長く続いている場合は注意が必要です。それは、気づかないうちに心身への負担が蓄積しているサインかもしれません。こうした状態を放置してしまうと、短期的には集中力の低下や疲労感の持続といった、生活の質(QOL)の低下にもつながります。
さらに長期的に見ると、肥満をはじめとする生活習慣病のリスクが高まり、それに伴って心臓疾患などの重い病気につながる可能性も否定できません。また、近年では、不健康な生活習慣の蓄積が将来的な認知機能の低下と関連することも指摘されています。不調を軽く考えて先送りにすることは、結果的に人生全体に影響を及ぼすリスクを抱えることにもなりかねません。
だからこそ、こうした体調の変化に少しでも心当たりがある場合には、できるだけ早い段階で生活習慣を見直し、改善に向けた取り組みへとつなげていくことが大切です。小さな違和感に気づき行動に移すことが、将来の健康を守る第一歩となります。
以前より疲れが抜けにくくなったと感じる
「常に疲労感が残っている」「しっかり寝たはずなのに、休めた実感がない」このように、疲れが長期間にわたって付きまとっていると感じる場合は、生活習慣を見直すべきサインかもしれません。一時的な忙しさによる疲れであり、数日休めば回復するのであれば問題ありませんが、なかなか改善しない場合には注意が必要です。
私たちの回復力は、基礎体力をはじめとする身体機能に大きく左右されます。若い頃は多少無理をしても十分な睡眠を取れば自然に回復できていた、という経験がある人も多いでしょう。それは体力や回復力が充実していたからこそ可能だったと言えます。
一方で、疲れが抜けにくい状態が続くということは、回復力そのものが低下している可能性を示しています。言い換えれば、体力の衰えや生活習慣の乱れが、疲労として表面化している状態とも考えられるのです。
こうした状態を放置してしまうと、心身への負担がさらに蓄積し、長期的には気分の落ち込みや意欲の低下など、メンタル不調につながる恐れもあります。そのため「最近疲れが取れにくい」と感じた段階で、早めに休養の取り方や睡眠、運動習慣などを見直し、回復力を取り戻すための対策に取り組むことが大切です。

画像素材:PIXTAメンタルの不調が続く
メンタルの状態は、身体のコンディションと密接に関係しています。体調が優れないときに気分まで前向きになることは少なく、その逆のケースも多くはありません。そのため、メンタルの不調が慢性的に続いている場合、その背景に身体的な不調や生活習慣の乱れが隠れている可能性が考えられます。
メンタルの不調は、これまで述べてきたような身体的要因に加え、仕事の環境や人間関係など、環境的な要因とも強く結びついています。そのため、原因を一つに特定したり、すぐに解消したりすることが難しい場合も少なくありません。しかし、不調をそのままにしていると、心身のつらい状態が「いつものこと」になり、改善への意識が薄れてしまう悪循環に陥るおそれがあります。
だからこそ、メンタルの不調が長期的に続いていると感じたときには、まず自分の状態を丁寧に振り返り、不調の原因を探ることからはじめてみましょう。生活リズムや睡眠、食事、運動といった基本的な習慣に目を向けるだけでも、気づきが得られることがあります。
そのうえで、改善できる要因があれば、少しずつでも解消につなげていくことが大切です。一方で、環境的な事情など、すぐには変えられない要因については、物事の受け止め方を見直したり、意識的にリフレッシュの時間を確保したりすることで、心への負担を和らげることも期待できます。まずは自分の不調を否定せずに受け止め、少し距離を置いて俯瞰的に見つめる姿勢が、回復への第一歩です。
集中力や判断力に違和感を覚える
集中力や判断力といった認知機能は、人間の活動を支える非常に高度な働きである一方、身体的な要因や外部環境の影響を受けやすい側面も持っています。体調や生活リズムが乱れると、思考のキレや判断の正確さに影響が出やすいのはそのためです。
特に認知機能は、身体のパフォーマンスと密接に結びついています。徹夜明けに集中力が続かなかったり、些細な判断ミスが増えたりする経験があるように、身体のコンディションが万全でなければ、本来の能力を発揮することはできません。さらに近年では、ショート動画やSNSなど、強い刺激と高い依存性を併せ持つコンテンツが日常にあふれています。こうした刺激の強い情報に長時間さらされることで、集中力や判断力が乱れやすくなる可能性が国内外の研究で指摘されています。
集中力や判断力は、身体の状態を映し出す一つのバロメーターとも言えます。そのため、違和感を覚えたときには、「十分な休息を取る」「湯船に浸かりながら軽くストレッチをおこなう」といった身体のケアに加え、SNSやショート動画などの刺激の強いコンテンツから意識的に距離を置くことが大切です。あわせて、家族や友人との会話の時間を増やしたり、スマートフォンを手放して映画をじっくり観たり、音楽鑑賞を楽しんだりするなど、心を落ち着かせる時間を持つことも効果的でしょう。
こうした違和感を放置してしまうと、「少しおかしい状態」がいつの間にか当たり前になり、さらに集中力や判断力が低下しやすくなる悪循環に陥る可能性があります。だからこそ、早い段階で気づき、適切に対処していくことが重要です。

画像素材:PIXTA見逃されがちな脳の変化と生活習慣の関係
生活習慣の影響は、身体だけでなく脳にも強く及ぶことが、これまでの多くの研究から明らかになっています。「過度なストレスは脳の萎縮を早める」といった話を耳にしたことがある方もいるかもしれませんが、これは単なるイメージではなく、強いストレスや不安が続くことで脳の一部の体積が小さくなる可能性があることが示唆されています。
脳は非常に可塑性の高い臓器で、適切に使われ、良好な環境が保たれていれば、機能の維持や向上が期待できます。一方で、強いストレスに長期間さらされ続ける環境や、定期的な大量飲酒、不規則な睡眠、慢性的な栄養不足といった生活習慣は、心身だけでなく脳にも大きな負担をかける要因となります。
脳も身体の一部であり、身体にダメージが蓄積しているのに、脳だけが無事でいられるということはありません。つまり、身体に負荷をかける生活を続けることは、そのまま脳にも負荷をかけているということなのです。
逆に言えば、身体にとって良い影響をもたらす生活習慣は、脳にとっても好影響を与えます。十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動、ストレスをため込まない工夫といった基本的な習慣が、脳機能の維持や改善につながることがさまざまな研究でも示されています。
脳は目に見えない臓器であるため、加齢や負担による変化に気づきにくいという特徴があります。しかし、脳のコンディションが良好に保たれていると、集中力が持続しやすくなり、気分が安定して物事を前向きに捉えやすくなるなど、日常の質に大きな違いが生まれます。脳の状態が良いときほど、その恩恵は自然な形であらわれるものです。
だからこそ、脳のコンディションを意識して整えることは、生活の質を高めるだけでなく、人生全体の満足度を向上させるうえでも重要な要素になります。
生活習慣を見直すと、心身と脳はどう変わるのか
前章では、脳のコンディションを良好に保つことの重要性について触れました。ここからは、生活習慣を見直し、健康的な習慣を身につけることで、身体と脳にどのような変化が期待できるのかを具体的に見ていきましょう。
生活習慣を見直し、健康習慣を身につけることには、以下のようなポジティブな効果があります。
- 集中力や判断力が高まり、仕事や家事の効率が上がる
- 疲労感が続きにくく、回復しやすくなる
- ホメオスターシスが安定することで免疫力が保たれ、体調を崩しにくくなる
- 生活のリズムが整い、毎日にメリハリが生まれる
- 気分の落ち込みやイライラが減り、心に余裕が生まれる
- 睡眠の質が向上し、精神的な安定につながる
- 生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)の予防につながる
- 加齢に伴う体力・認知機能の低下を緩やかにする可能性がある
ここで挙げた変化はあくまで一例であり、実際には人それぞれに、さまざまな形でポジティブな影響があらわれるでしょう。このように、生活習慣を見直し、健康的な習慣を身につけることは、生活の質を高めるだけでなく人生全体の満足感を高めることにもつながります。
また、健康習慣をはじめるのに「遅すぎる」ということはありません。とはいえ、早めに取り組むほどその恩恵を長く受けられるのも事実です。しかも、健康習慣の多くは特別な費用をかけずにはじめることができます。睡眠や食事、運動、休息の取り方を少し意識するだけでも、十分に効果が期待できるのです。
今日からはじめる小さな習慣が、将来の自分への「健康投資」となります。無理のないものから、ぜひ取り入れてみてください。

画像素材:PIXTA今日からはじめる健康習慣
ここからは、生活習慣を見直し、健康的な習慣を身につけるための具体的なポイントや取り組み内容について見ていきましょう。
しかしその前に、ぜひ知っておいていただきたい大切な前提があります。それは、健康習慣は一朝一夕で身につくものではない、ということです。運動や食事、睡眠といった健康的な行動は、意識しはじめてから習慣として定着するまでに、ある程度の時間と根気が必要になります。数日や数週間の取り組みだけで完全に身につくことは難しく、多くの場合、数か月から数年という長い時間をかけて、少しずつ自分のものになっていきます。
しかし、一度しっかりと定着した習慣は、簡単には失われません。長期的に見れば、それは自分自身の健康を守る大切な「資産」となります。例えば、運動習慣において、一時的に運動から離れる期間があったとしても、筋肉にはいわゆる「マッスルメモリー」が残ることが知られています。そのため、再開した際には、以前よりも短い時間で元の動きや体力を取り戻しやすいことが、国内外の研究から示されています。
だからこそ、途中で思うように続かない期間があっても、過度に自分を責める必要はありません。短期的に休んだからといって、それまでの積み重ねが無駄になるわけではないのです。大切なのは、完璧を目指すことではなく、あきらめずに続けていくことです。
無理のないペースで、楽しみながら取り組むことが、健康習慣を長く続ける最大のコツです。今日できる小さな一歩を重ねながら、自分に合った形で健康習慣を育てていきましょう。
健康習慣①自分の違和感を見逃さない
「そんな基本的なことでいいの?」と感じるかもしれませんが、自分自身の違和感に早く気づき、速やかに対処することは、不調が悪化していく負の連鎖を防ぐうえで、最も重要かつ欠かせない健康習慣のひとつです。そして実は、この「違和感に気づく」という行為そのものが、思っている以上に難しいものでもあります。
なぜなら、人の脳は同じ状態が繰り返されると、それに慣れてしまう性質を持っているからです。最初は「いつもと違う」「少しおかしい」と感じていた違和感も、時間が経つにつれて当たり前の状態として受け入れてしまい、気づきにくくなっていきます。特に不調が慢性的になっている場合、違和感を察知するアンテナが鈍くなってしまうのは、ある意味自然なことだと言えるでしょう。
しかし、繰り返しになりますが早期発見・早期対応は心身の不調だけでなく、風邪や生活習慣病、さらにはがんや心臓病、認知症といった、生活を大きく変えてしまう可能性のある疾患においても基本となる考え方です。早い段階で気づいて対処できるかどうかで、その後の経過は大きく変わってきます。早期対応を実現するためには、まず早期発見が欠かせません。その第一歩が「自分の違和感を見逃さないこと」です。
では、具体的にどのような変化がサインとなるのでしょうか。一つの目安として挙げられるのが「これまで当たり前にできていたことが、できなくなる、または強い負担に感じるようになる」という変化です。
仕事や人間関係への向き合い方だけでなく、歯磨きや入浴、買い物といった日常生活を支える基本的な行動が億劫に感じられる場合も、心身の不調を知らせる重要なサインです。そうした変化に気づいたときは、「そのうち良くなるだろう」と放置せず、早めに立ち止まり、生活習慣や心身の状態を見直すことが大切です。

画像素材:PIXTA健康習慣②日常の中の見直しを増やす
自分の違和感を見逃さないことに加えて、普段の生活そのものを見直し、少しずつ改善していくことも、健康習慣を定着させるうえで欠かせません。日常の環境を整えることは、健康習慣の土台づくりそのものであり、習慣化において環境が果たす役割は非常に大きいことが、さまざまな研究から示されています。この考え方は、これから紹介するどの健康習慣にも共通しています。
環境を整える第一歩は「見直す機会を増やす」ことです。例えば、寝室が明るすぎる、枕の高さが合っておらず肩こりが続いている、といった状態は、知らず知らずのうちに睡眠の質を下げている可能性があります。こうした小さな違和感を見過ごさず、自分にとって心地よい環境になるように整えていくことが大切です。
見直すべきなのは、物理的な環境だけではありません。自分のメンタルの状態や思考のクセにも目を向けてみましょう。「人に嫌われていないか必要以上に気にしてしまう」「過去の失敗を何度も思い返してしまう」「完璧にやり切らなければならないと自分を追い込んでしまう」といった思考に、とらわれていないでしょうか。
こうした自分ではどうにもならないことに思考のエネルギーを費やすのは、建設的とは言えません。それでも多くの人がこうした考えを繰り返してしまうのは、思考そのものが習慣化しているからです。このような思考の「クセ」は、気づいて見直さなければ、なかなか手放すことができません。楽しくも前向きでもない思考に気づいたときこそ、それを修正するチャンスです。
同じことは、行動の習慣にも当てはまります。長期間の喫煙、過度な飲酒、不規則な就寝といった健康的とは言えない生活習慣も、繰り返されることで当たり前になってしまいます。だからこそ、自分の習慣を客観的に見直し、やめやすい環境を整えることが重要です。日常の中に「見直す視点」を増やすことが、健康習慣を無理なく育てていくためのカギになります。
健康習慣③食生活に気をつかう
私たちの身体は、脳や心臓といった重要な臓器はもちろん、骨格や筋肉、皮膚に至るまで、すべて日々の食事によってつくられています。つまり、何を口にするかを意識することは、そのまま自分の身体を大切にすることとほぼ同じ意味を持つと言えるでしょう。
一方で、食事は日常の楽しみの一つでもあるため、どうしても「おいしさ」が優先されがちです。特にラーメンや揚げ物、菓子類といった多くの人に好まれる食品は、味が濃く、脂質や糖質が多い傾向があります。こうした食事を頻繁に摂り続けることが、身体にとって大きな負担になることは想像に難くありません。
また、アルコールについても、近年の大規模研究から、少量飲酒で心疾患などのリスク低下を示す結果もある一方で、がんなど他の病気のリスクは飲酒量に比例して高まることが報告されています。そのため、総合的に見ると「適量なら健康に良い」とは言い切れず、少量であっても健康リスクが増える可能性があると考えられています。一方で、お酒そのものに気分転換やリラックスといった心理的なメリットを感じる人がいることも事実です。そのため、健康面のメリットではなく、あくまで嗜好としてどう付き合うかを考えることが大切です。
もちろん、おいしいものやお酒が気分転換になり、心身の回復のきっかけになることもあるでしょう。ただし、その裏で生じる身体へのダメージは、少しずつ蓄積していきます。健康習慣として大切なのは、完全にやめることではなく、摂取する頻度を意識的に減らすことです。
一つの目安として味の濃いものや脂っこい食事、お酒を楽しむのは「週に1回程度」にし、それ以外の日は、たんぱく質・脂質・炭水化物(PFCバランス)を意識した、栄養バランスの整った食事を心がけてみましょう。はじめは物足りなく感じるかもしれませんが、続けていくうちに素材本来の味わいや、身体が軽くなる感覚を実感しやすくなります。
どんな食事にも、その食材ならではの滋味があります。健康を意識した食生活に慣れてくることで、そうした穏やかな「おいしさ」を楽しめるようになるはずです。

画像素材:PIXTA健康習慣④身体を動かす時間を作る
身体を動かすことには、非常に多くのポジティブな効果があります。基礎体力の維持・向上をはじめ、心肺機能の強化、それに伴う睡眠の質や集中力の向上、さらに筋肉に適度な負荷をかけることで肩こりや腰痛の改善が期待できるなど、運動ほど幅広い恩恵をもたらす習慣はそう多くありません。
一方で、近年の筋トレブームの影響から「運動=きついことをしなければならない」というイメージを持っている方もいるかもしれません。しかし、健康習慣としての運動に、必ずしもハードなトレーニングは必要ありません。
実際には、1日1回のラジオ体操や、20分程度の散歩(ウォーキング)といった、身体への負担が少ない運動でも、健康状態に良い影響を与えることがさまざまな研究から示されています。大切なのは運動の強度よりも「ケガをせずに続けられること」です。
運動習慣がない状態で、いきなり強度の高い運動をはじめるのは、かえって挫折やケガにつながりやすく、逆効果になることもあります。まずは「朝にラジオ体操をする」「通勤や帰宅の途中で少し遠回りをして歩く距離を増やす」といった、今の生活に無理なく取り入れられる軽い運動からはじめてみましょう。
そうした運動を習慣として続けていくうちに、「もう少し身体を動かしたい」と感じるようになることもあります。元より身体を動かすこと自体には楽しさがあり、運動の習慣がつくことでその感覚に気づけるようになるのです。そのタイミングで、ランニングや水泳、筋力トレーニングなど、興味のある運動に挑戦してみるのもよいでしょう。
どんなことも、最初の一歩が大切です。これから先も長く付き合っていく自分の身体だからこそ、焦らず、時間をかけて身体を動かす習慣を育てていきましょう。
健康習慣⑤意識して休息の時間を作る
身体を動かすことと同様に、意識して休息の時間を確保することも健康を維持するうえで欠かせません。休息は、運動の効果を高めるという意味でも重要な役割を果たします。筋肉は、運動している最中に成長するのではなく、刺激を受けた後に適切な休息を取ることで育つことが知られています。この性質は、運動効果を維持・向上させるうえでも共通しています。
また「休んでいる間に成長する」という特徴は、筋肉だけでなく脳にも当てはまります。以前は難しくて諦めてしまったゲームや小説に、時間を置いてから再挑戦したところ、意外とスムーズに進められた――そんな経験がある人も多いのではないでしょうか。これは脳の働きによるものです。
このように、適切な休息は決して「怠けること」ではありません。むしろ、学習効率を高め、心身の回復を促す、非常に合理的で効率的な行動です。無理を重ねることが、必ずしも成果につながるとは限らないのです。疲労が限界に達する前に意識的に休むことで、回復もしやすくなり、その後の集中力やパフォーマンスの向上にもつながります。そのため、休息の時間を意識して確保することは、自分自身のコンディションを整えるうえで重要な健康習慣の一つと言えるでしょう。
健康習慣⑥睡眠時間を確保する
数百キロの距離を飛び続ける渡り鳥や、世界中を回遊するクジラでさえ必ず睡眠を取ります。私たち人間とは大きく異なる昆虫や、脳を持たないクラゲでさえ「眠る」ことが明らかになっており、生命である以上、睡眠は切っても切り離せない営みだと言えます。
このように、睡眠は生命を維持するための根本的かつ重要な活動であり、進化の過程においても一度たりとも不要とされなかった、欠かせない要素です。睡眠と健康の関係については、国内外で数多くの研究が行われており、睡眠不足が健康状態を損なうことには明確な相関があることが示されています。睡眠を軽視することは、決して賢明な選択とは言えません。
また、睡眠不足は集中力や判断力、思考力といった高度な認知機能を低下させることも分かっています。一説では、睡眠不足による経済損失は年間15兆円規模と試算されており、その影響は個人の健康にとどまらず社会全体にも及ぶ可能性があります。
さらに、「睡眠負債」が存在する可能性も指摘されています。これは、慢性的な睡眠不足が蓄積し、一時的に長く眠っただけでは十分に解消できない状態を指します。つまり、休日にまとめて寝るだけでは、根本的な解決にはなりにくいのです。
重要なのは「日中に眠気を感じずに過ごせる睡眠時間」を、継続して確保することです。一般的な目安としては、1日7時間前後の睡眠を基準に、自分にとって必要な睡眠時間を把握し、意識的に確保するよう努めましょう。睡眠不足のない状態が「当たり前」になったとき、はじめて睡眠がもたらす本来の効果を実感できるはずです。

画像素材:PIXTA健康習慣⑦『認知症と向き合う365』の活用
これまで紹介してきた健康習慣は、年代や性別といった属性を問わず、誰にとっても普遍的かつ重要な取り組みです。そのうえで、40代以上の方には、これらの習慣に加えて「脳の健康」をより意識した取り組みをはじめることをおすすめします。
その理由のひとつが、日本人の要介護要因の第3位が「認知症」であるという現実です。そのため、認知症への備えは、そのまま要介護予防に直結します。そして認知症対策において重要なのは、発症後の対応ではなく、発症リスクを高める要因をいかに減らすかという、より根本的な取り組みです。認知症は発症の15〜20年前から脳内で変化が始まっているといわれており、40代という比較的健康な時期から脳の状態を意識することは、将来の発症リスクを抑えるうえで非常に効果的です。
そこでぜひ活用してほしいのが、『認知症と向き合う365』というサービスです。このサービスでは認知機能セルフチェックに加えて、AIがMRI画像を詳細に解析する「BrainSuite®」がセットになっており、脳を「機能」と「構造」の両面からチェックすることで認知症の兆候の可能性がある変化に早期に気づくためのサポートをします。
現時点では、発症した認知症を完全に元の状態に戻す治療法は確立されていません。だからこそ重要なのが、発症前の段階で異変に気づき、早期対応につなげることです。
比較的若く、まだ大きな不調を感じにくい段階から『認知症と向き合う365』を活用し、自身の脳の状態を「定点観測」していくことで、些細な変化にも気づきやすい環境を整えます。
まとめ
今回は、生活習慣を見直すべきサインについて解説するとともに、今日から始められる健康習慣について紹介しました。
忙しい日々の中では、自身の健康状態は極端に悪化しない限り、どうしても後回しにされがちです。しかし、健康的で良好な状態を維持することは、日々の生活の質を高め、そこで生まれた心身の余裕が、結果として人生全体の質を向上させる可能性を秘めています。
健康的な状態を維持するうえで重要なのは、自身の生活習慣を見直し、健康習慣として定着させていくことです。その取り組みは地味で、すぐに成果が見えるものではなく、根気や継続する意志が求められます。
それでも、人生100年時代といわれる現代において、こうした健康習慣は間違いなく将来への投資になります。健康習慣とは、「今」のためだけではなく、「将来」に向けて種をまき、水を与え続ける営みです。劇的な変化は期待できなくとも、その積み重ねは確実に将来の自分を支える基盤となるはずです。
- 画像素材:PIXTA
【参考文献(ウェブサイト)】
- 厚生労働省(n.d.). ホメオスターシスについて. [オンライン]. 2026年1月28日アクセス,
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000123635.pdf - 日本経済新聞(2021). 睡眠不足で経済損失15兆円 寝ずに頑張るは時代遅れ. [オンライン]. 2026年1月28日アクセス,
https://bizgate.nikkei.com/article/DGXZQOLM246XB024092021000000
【参考文献(書籍)】
- アダム・オルター・著/上原裕美子・訳(2019). 僕らはそれに抵抗できない. ダイヤモンド社.
- アンナ・レンブゲ・著/恩蔵絢子・訳(2022). ドーパミン中毒. 新潮社.
- 飯田薫子/寺本あい(2019). 一生役立つきちんとわかる栄養学 西東社.
- 伊藤裕(2025). 老化負債. 幻冬舎.
- 浦上克哉(2021). 科学的に正しい認知症予防講義. 翔泳社.
- 大平哲也(2025). 健康な人の小さな習慣. ダイヤモンド社.
- 加藤俊則(2021). ビジュアル図解 脳のしくみがわかる本. メイツ出版.
- 加藤洋平(2023) 成人発達理論から考える成長疲労社会への処方箋. 日本能率協会マネジメントセンター.
- 上村理絵(2024). こうして、人は老いていく. アスコム.
- 櫻井武(2017). 睡眠の科学・改訂新版. 講談社.
- 佐藤成美(2022). 本当に役立つ栄養学. 講談社.
- 杉晴夫(2008). ストレスとはなんだろう. 講談社.
- 坪井貴司(2024). 「腸と脳」の科学. 講談社.
- 樋口満(2025). 健康寿命と身体の科学. 講談社.
- 堀田秀吾(2025). 科学的に証明されたすごい習慣大百科. SBクリエイティブ.
- 堀田秀吾(2026). 考えてはいけないことリスト. フォレスト出版.
この記事の監修者
佐藤俊彦 医師
福島県立医科大学卒業。日本医科大学付属第一病院、獨協医科大学病院、鷲谷病院での勤務を経て、1997年に「宇都宮セントラルクリニック」を開院。
最新の医療機器やAIをいち早く取り入れ、「画像診断」によるがんの超早期発見に注力、2003年には、栃木県内初のPET装置を導入し、県内初の会員制のメディカル倶楽部を創設。
新たに 2023年春には東京世田谷でも同様の画像診断センター「セントラルクリニック世田谷」を開院。
著書に『ステージ4でもあきらめない 代謝と栄養でがんに挑む』(幻冬舎)『一生病気にならない 免疫力のスイッチ』(PHP研究所)など多数。
