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健康寿命をのばす8つの取り組みについて解説

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日本は世界でも有数の長寿国であり、平均寿命は男女ともに80歳を超えています。しかし、自分らしく元気に長生きするためには、ただ寿命をのばすだけでなく、「健康寿命」を意識することが欠かせません。

そこで今回は、健康寿命の基本と、健康寿命をのばす取り組みについて紹介します。

健康寿命とは?

「平均寿命」という言葉は多くの方が耳にしたことがあるでしょう。これは「その年に生まれた0歳があとどれくらい生きられるか」を示す指標で、日本では令和4年で男性が81.05年、女性が87.09年となっています。特に女性の平均寿命は過去40年にわたって世界第1位を誇ります。

一方で注目したいのが「健康寿命」です。健康寿命とは、「介助やサポートを受けずに、自分の力で日常生活や社会生活を送れる期間」を指します。令和4年のデータでは、男性が72.57年、女性が75.45年とされています。

この2つの指標の差は、すなわち日常生活に制限のある期間=不健康な期間が存在することを意味します。平均寿命と健康寿命の差は男性で8.48年、女性で11.64年、およそ10年前後は不自由を抱えながら過ごしている計算になります。

この「不健康な期間」は、生活の質(QOL)に大きな影響を与えるため、いかに短くできるかが、高齢化の進む日本社会で大きな課題となっています。

健康寿命をのばすことのメリット

健康寿命をのばすということは、不健康な期間をできるだけ短くし、自分らしくいきいきと過ごせる時間を増やすことを意味します。言い換えれば、健康寿命をのばすこと自体が生きがいのある人生の実現につながります。

さらに、今後は平均寿命がますますのびていくと予測されています。その一方で、健康寿命との開きが大きくなると、医療費や介護給付費が増大し、社会全体の負担が重くなることが懸念されます。

だからこそ、早いうちから健康寿命をのばす取り組みをおこなうことで、平均寿命と健康寿命の差をできるだけ縮めていくことが重要です。これにより、生活の質の低下を防ぎ、社会保障費全体の抑制にもつながります。

健康寿命をのばす取り組み

ではここからは、健康寿命をのばすための8つの取り組みを紹介します。

老化は誰にとっても避けられない自然な現象であり、体力や記憶力は年齢とともに少しずつ低下していきます。しかし、何もしないまま放置すると、フレイル(虚弱化)やサルコペニア(筋力低下)に陥り、日常生活の活動範囲が狭まってしまいます。その結果、生活の質が下がるだけでなく、病気のリスクも高まります。

一方で、あらかじめ健康づくりに取り組めば、こうした老化に伴う生活の不自由さを軽減できる可能性があります。さらに、転倒によるケガや認知症など、介護が必要になる主な原因を予防することにもつながります。

健康寿命を意識した毎日の小さな積み重ねが、将来の安心や、自分らしい暮らしにつながっていきます。

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健康寿命をのばす取り組み①習慣化と継続

「健康のために何か始めよう!」と思っても、なかなか続けられない…という方も多いのではないでしょうか。実は、脳は新しいことよりも慣れたことを好む傾向があり、習慣化は意思の力だけではなかなかうまくいきにくいものです。

新しく取り入れた習慣を長く続けるためには、まず続けやすい環境を整えることが大切です。また、一度に高いハードルを設定するのではなく、少し意識するだけでできる簡単なことから始めるのがコツです。小さな積み重ねが、やがて大きな成果につながります。

今回取り上げる方法では、具体的な取り組み例もあわせて紹介しています。「できそうだな」「やってみようかな」と思えるところから、少しずつ始めてみましょう。

健康寿命をのばす取り組み②適度な運動習慣

運動は単に体を鍛えるだけでなく、脳への血流を増やすことで脳の活性化にもつながることが、さまざまな研究で明らかになっています。健康寿命をのばすうえで、運動習慣は欠かせません。

ただし、ハードな運動をいきなり始める必要はありません。慣れていない状態で無理な運動をすると、ケガやそれによる後遺症のリスクが高まります。まずは散歩やウォーキングなど、負荷の少ない運動から始めるのがおすすめです。激しい運動はかえってストレスにもなりやすいため、「ゆるく続けること」が効果的です。

特におすすめなのはウォーキングなどの有酸素運動です。有酸素運動は、糖尿病や心臓病、認知症といった生活習慣病の予防に役立つだけでなく、うつ症状や睡眠障害の改善にも効果があるとされています。 ウォーキングを始めるときは、いきなり目標を高く設定せず、「今より1000歩多く歩く」など、少し頑張れば達成できる目標からスタートすると続けやすくなります。

慣れてきたら歩数を徐々に増やすと良いでしょう。健康効果が期待できるのは1日約8000歩といわれています。まずは自分の平均歩数を確認し、そこから少しずつ距離をのばすことを意識してみましょう。

健康寿命をのばす取り組み③バランスの良い食生活

健康寿命をのばすうえで欠かせないのが、バランスの良い食生活です。毎日の食事で、たんぱく質や脂質、ビタミンなど必要な栄養素を幅広く摂ることで、がんや循環器疾患、さらには認知症の予防にもつながります。また、生活習慣病の抑制にも効果的です。

バランスの良い食事とは、主食・副菜・主菜を基本に、さまざまな食品を組み合わせて摂ることです。毎日の食事に、野菜や果物、牛乳・乳製品、豆類、魚、ナッツ類など効果があるとされています。

ただし、1日に必要な栄養素は性別や年齢、生活習慣によって異なるため、自分にとって何が足りていないのか、また摂りすぎているものはないかを確認することが大切です。足りない栄養素を補うために、副菜を増やしたり、主菜の量を調整するなど工夫してみましょう。

こうした取り組みは、ヘルスケアアプリや農林水産省の「食事バランスガイド」などを参考にすると、我流にならず無理なく続けられます。栄養バランスを整えたうえで、DHAやEPAを多く含む青魚や、オメガ3脂肪酸やポリフェノールなどを多く含むナッツ類などの健康にプラスになる食品を取り入れるのもおすすめです。

ただし、忘れてはいけないのは「バランスが第一」ということ。いくら健康に良い食品を多く食べても、全体の食事バランスが崩れていては効果が十分に得られません。まずは食事全体のバランスを整えることを優先しましょう。

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健康寿命をのばす取り組み④飲酒は適度に楽しむ

お酒はストレス解消や、人とのコミュニケーションを円滑にする手段として役立つことがあります。しかし、健康づくりの観点からは、過度なアルコール摂取は避けることが大切です。断酒する必要はありませんが、量を適切にコントロールすることがポイントです。

習慣的に多量の飲酒を続けると、胃や肝臓などの消化器系だけでなく、心臓や脳など全身の臓器に悪影響を及ぼす可能性があります。目安となる節度ある飲酒量は、1日あたり純アルコール20g程度(ビール中瓶1本程度)とされています。それ以上の飲酒は高血圧や肥満などの生活習慣病のリスクを高めるため、量を控えて「嗜む程度」に留めることが望ましいでしょう。

もし現在、基準以上の飲酒が習慣化している場合は、まず少しずつアルコール量を減らす「減酒」から始めるのがおすすめです。ポイントは、自分の飲酒量や飲むタイミングを把握すること。そこから「休肝日を設ける」「1日の飲酒量をセーブする」といった無理のない目標を立て、少しずつ積み重ねていくことで長期的に減酒が可能になります。

過去に減酒や禁酒に挑戦してうまくいかなかった経験がある場合は、「減酒外来」などの専門サポートを活用するのもおすすめです。減酒には、血圧の改善や肝機能の数値改善など、さまざまな健康効果が期待できます。

また、飲酒そのものを楽しむ場合は、抗酸化作用のあるポリフェノールを多く含む赤ワインなどを選ぶのもおすすめです。大切なのは適量で楽しむことです。

健康寿命をのばす取り組み⑤良質な睡眠の確保

睡眠は健康の基盤です。寝不足は脳に悪影響を及ぼすだけでなく、ネガティブな情動刺激に反応する扁桃体の活動が増大することもわかっており、精神面への影響も大きくなります。そのため、睡眠不足は体の健康だけでなく、心の健康にも良くありません。

また、睡眠不足は重大な健康リスクにつながるだけでなく、高血圧や肥満などの生活習慣病を引き起こす要因にもなります。加えて、十分な睡眠が取れていないと、アルツハイマー型認知症のリスクが高まることも明らかになっています。

年齢を重ねると、まとまった睡眠時間が取りにくくなったり、夜中に目が覚めやすくなったりします。そのため、良質な睡眠を確保するための工夫がより重要になります。具体的には、「寝る前に部屋を暗くする」、「ショート動画やゲームなど刺激の強いコンテンツを控える」、「アルコールは就寝の3時間前から摂取を控える」といった寝る前のリラックス習慣が効果的です。

これらの工夫をしても、「寝つきに30分以上かかる」「夜中に3回以上目が覚める」「十分寝たはずなのに寝足りない」といった場合は、睡眠時無呼吸症候群などの病気や、心身の不調のサインかもしれません。眠れない負の循環に陥る前に、専門家に相談するのも良いでしょう。

健康寿命をのばす取り組み⑥ストレス管理と心の健康

健康寿命をのばすためには、心の健康を保ち、高めることも欠かせません。

ストレスと聞くとネガティブな印象がありますが、実はすべてが悪いわけではありません。適度なストレスは、それを乗り越えたときに達成感をもたらし、自信や成長の糧にもなります。しかし、過剰なストレスは心身にさまざまな不調をもたらすことがわかっています。

体にあらわれる不調としては、頭痛や肩こり、下痢のほか、胃・十二指腸潰瘍や円形脱毛症などもあります。心にあらわれる症状としては、不安やイライラ、気分の落ち込み、不眠などがあり、重症化するとうつ病など深刻な心の病につながることもあります。さらに、ストレスは飲酒量や喫煙本数の増加、過食などの行動面にも影響し、生活習慣の乱れが生活習慣病の発症や悪化につながることもあります。加えて、ストレス自体が高血圧や糖尿病のリスクを高めることも知られています。

こうしたリスクを減らすためには、ストレスとうまく付き合うことが大切です。まずは、自分がどんなストレスを感じているのかを書き出してみましょう。書き出すことで原因を明確にし、対処法を考えやすくなります。

さらに、笑うこともストレス改善に効果的です。笑うことで脳が活性化し、ストレスが軽減されるという研究データもあります。お笑い動画や落語、コメディ映画、ライブなど、思いっきり笑える時間を作ることは、心の健康を保つために良い方法です。

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健康寿命をのばす取り組み⑦脳の活性化

健康づくりには、心身だけでなく脳の健康を維持することも欠かせません。

私たちの生活のほとんどは脳の働きによって支えられています。文章を読む、次に話すことを考える、さらには普段何気なく行っている歩行や自転車の運転といった身体動作も、すべて脳が指令を出して実行しています。つまり、生活の質を保つためには脳の健康も非常に重要です。

脳は同じ部位ばかりを使うと刺激に慣れてしまいます。そこで、定期的に新しいことに挑戦することで、脳を活性化させることができます。ここで重要なのは、大胆なことをする必要はないということ。日常の中で半歩先の新しいこと、つまり少しだけ挑戦してみることが、脳にとってちょうど良い刺激になります。

たとえば、新しい趣味を始めたり、今まで通らなかった道を歩いてみたり、普段使わない手で作業をしてみたりするだけでも、脳の活性化につながります。日々の生活の中に、少しだけ「はじめてのこと」を取り入れてみましょう。

健康寿命をのばす取り組み⑧定期的な健康チェック

自分の健康状態は意外と気づきにくいものです。加齢とともにリスクが高まる疾患も増えてくるため、年齢を重ねた今だからこそ、定期的に自分の健康をチェックする習慣をつけることが、健康寿命をのばすために非常に重要です。

将来の健康と健康寿命をのばすために、まずは会社や自治体で受けられる健康診断を活用しましょう。それに加えて、歯科・耳鼻科・眼科などの定期健診もおすすめです。歯周病や難聴、白内障など、高齢になるとリスクが高まる病気を早期に発見し、予防や治療につなげやすくなります。

さらに、心身の健康チェックに合わせて脳の健康状態も確認しておくとより安心です。そこでおすすめなのが『認知症と向き合う365』というサービスです。このサービスでは、AIがMRI画像を解析する最新のAI画像解析サービス「BrainSuite®」を受けられるほか、心理士や看護師などの専門スタッフに24時間相談できます。MRIは全国の提携医療機関で受診でき、その他は基本的にオンラインで完結するため、無理なく始めやすいのもポイントです。

日々の生活習慣改善とあわせて、こうした定期的な健康チェックを取り入れることで、健康寿命をより長く保つことが期待できます。

健康寿命と認知症の関係

一般的に、認知症は発症後、症状はゆるやかに進行していきます。しかし、診断を受けてからおおむね3〜4年程度で中等度まで進行することが多く、この段階になると着替えや歯磨きなど、日常生活を自分ひとりでおこなうことが難しくなります。

そのため、認知症になることは「健康寿命」を縮めることにつながり、日常生活に制限のある不健康な期間を長くしてしまう可能性があります。健康寿命をのばすためには、認知症の予防や早期発見も重要な取り組みのひとつといえるでしょう。

健康寿命をのばすことが認知症予防に

これまでの研究から、認知症の発症リスクは、人生を通した生活習慣に深く関係していることがわかっています。

つまり、健康寿命をのばすための生活習慣の改善は、そのまま認知症予防にもつながります。運動習慣やバランスの良い食生活、十分な睡眠、ストレス管理など、日々の取り組みを積み重ねることが、心身の健康だけでなく、脳の健康を守ることにもつながります。

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まとめ

今回は、健康寿命の基本的な情報と、健康寿命をのばすための取り組みや習慣化のコツについて紹介しました。

健康寿命をのばすことは、単に長生きすることではなく、「自分らしくいきいきと生活できる時間を増やすこと」を意味します。そして、健康寿命をのばすための取り組みは、心身の健康にプラスになるだけでなく認知症予防にもつながり、健康で質の高い生活を支えてくれます。

加齢は誰にでも訪れる自然な現象ですが、早めに健康習慣を積み重ねることで、老化による生活の制限や病気のリスクを抑えられます。毎日の小さな工夫と継続が、将来の健康寿命を左右します。今日から少しずつ自分に合った取り組みを始めてみましょう。健康寿命を意識した生活は、より豊かで充実した人生への第一歩です。


【参考文献(ウェブサイト)】

【参考文献(書籍)】

  • 秋下雅弘(2023). 目で見てわかる認知症の予防. 成美堂出版.
  • 朝田隆(2023). 認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること. アスコム.
  • 旭俊臣(2022). 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症. 幻冬舎.
  • 北原逸美/ながさき一生(2025). 認知症の教科書増補改訂版. ニュートン.
  • 堀田秀吾(2025). 科学的に証明されたすごい習慣大百科. SBクリエイティブ.

この記事の監修者

佐藤俊彦 医師

佐藤俊彦 医師

福島県立医科大学卒業。日本医科大学付属第一病院、獨協医科大学病院、鷲谷病院での勤務を経て、1997年に「宇都宮セントラルクリニック」を開院。
最新の医療機器やAIをいち早く取り入れ、「画像診断」によるがんの超早期発見に注力、2003年には、栃木県内初のPET装置を導入し、県内初の会員制のメディカル倶楽部を創設。
新たに 2023年春には東京世田谷でも同様の画像診断センター「セントラルクリニック世田谷」を開院。
著書に『ステージ4でもあきらめない 代謝と栄養でがんに挑む』(幻冬舎)『一生病気にならない 免疫力のスイッチ』(PHP研究所)など多数。