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アルツハイマー病の予防・対策として行うべきこと8選!

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画像素材:PIXTA

日本では高齢化が進むにつれ、認知症は誰にとっても身近な課題となっています。なかでもアルツハイマー病は加齢と深い関わりがあり、早い段階から予防に取り組むことが、将来の安心につながります。

そこで今回は、アルツハイマー病の基本的な知識とともに、日常生活の中で取り入れられる予防のための8つの方法を紹介します。

アルツハイマー病とは

アルツハイマー病は、脳に異常なたんぱく質が蓄積することで、記憶力や判断力といった認知機能が少しずつ低下していく病気です。こうした病気は「神経変性疾患」と呼ばれ、脳や脊髄にある神経細胞が少しずつ壊れて減っていくことが特徴です。

日本における認知症の原因疾患の中では最も多く、全体の約7割を占めています。つまり、認知症の予防を考えるうえで、アルツハイマー病を知り、予防を意識することが欠かせません。

アルツハイマー病の発症原因

現在、アルツハイマー病の発症原因として有力視されているのが「アミロイドβ仮説」です。これは、脳にアミロイドβというたんぱく質が過剰にたまり、「老人斑」と呼ばれるしみのような沈着物をつくるというものです。

さらに、この蓄積によって神経細胞の働きを支えるタウたんぱく質にも異常が生じ、繊維状に絡み合って蓄積します。これが「神経原線維変化」と呼ばれる状態で、神経細胞の死滅を引き起こし、結果として、脳の萎縮や、記憶力・判断力などの認知機能の低下につながると考えられています。

最大のリスク要因は「老齢化」です。加齢とともに、異常なたんぱく質を排出する力が衰え、長年の蓄積も重なることから、アルツハイマー病の発症の可能性が高まるといわれています。実際に、65歳を過ぎると有病率は急激に上昇し、90代になると約半数の方がアルツハイマー病を発症しているとの報告もあります。

ただし、アルツハイマー病のすべてがこの仮説だけで説明できるわけではありません。血管障害や炎症、生活習慣なども関与している可能性があり、世界中で研究が続けられています。将来的には、予防や治療につながる新しいメカニズムが解明されることが期待されています。

アルツハイマー病の対策方法8選!

現時点では、発症してしまったアルツハイマー病を完全に治す方法は確立されていません。だからこそ大切なのは、できる限り発症を防ぎ、予防に取り組むことです。

予防の基本は「心身の健康を整えること」と「脳を積極的に使うこと」。日々のちょっとした習慣の積み重ねが、将来の自分や家族の安心につながります。

ここからは、今日から取り入れられるアルツハイマー病予防のための8つの方法を紹介します。どれも難しいものではなく、生活の中で工夫しながら実践できる内容です。無理なくできることから始めてみましょう。

アルツハイマー対策①脳を活性化させる

脳の成長は20歳前後をピークとなり、それ以降は少しずつ萎縮が始まり、65歳を過ぎると脳画像でも変化が確認できるようになります。いわゆる「脳の老化」です。

しかし、脳は年齢とともに萎縮する一方で、使い続けることで機能を維持・発達させられることがわかっています。つまり、アルツハイマー病の予防には「脳を積極的に使い、活性化させること」が重要です。

ポイントは「わくわくすることに挑戦する」こと。新しい趣味を始めたり、興味のある分野を学んでみたりすることで、脳に良い刺激が与えられます。新しいことに挑戦できる意欲そのものが、心身の健康状態を示すバロメーターにもなります。

もちろん、長年続けてきた趣味を継続するのも効果的です。さらに、旅行や散策など新しい場所を訪れることも、脳を刺激する良い方法です。遠出でなくても、普段行かない場所を歩くだけで新しい発見があり、十分な活性化につながります。しかも大きな費用はかからず、手軽に始められる取り組みです。

アルツハイマー対策②栄養バランスの良い食事

健康の土台は、毎日の「食事」です。脳や体の働きを守るためには、栄養バランスを意識した食生活が欠かせません。アルツハイマー病の予防を考えるうえでも、食習慣の見直しは非常に重要です。

必要な栄養素は、年齢や生活習慣によって変わります。自分に合ったエネルギーを確保しつつ、次のポイントを意識すると、よりバランスの取れた食事に近づけます。

  • たんぱく質は1日の必要エネルギーの約20%を目安にする
  • 地中海食を参考に、野菜・果物・穀類・魚を中心に、肉や加工食品は控えめにする
  • 炭水化物や塩分は摂りすぎず、適量を守る
  • 野菜・果物・海藻・穀物を毎食意識的に取り入れる
  • 旬の食材や多種類の食材をバランスよく食べる
  • 甘いお菓子や加工食品は控えめにする(月に数回程度が目安)
  • 食事の際はよく噛んで咀嚼する

「これを食べればアルツハイマーを防げる」という特効食材は存在しません。大切なのは、日々の食事全体でバランスを取ることです。まずはできる範囲から、食生活を少しずつ見直すことが、アルツハイマー病予防への第一歩になります。

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アルツハイマー対策③適度な運動

適度な運動は脳を刺激し、アルツハイマー病の予防につながるといわれています。さらに、運動によって筋力を保つことは、加齢によるフレイル(虚弱)やサルコペニア(筋力低下)の予防にも効果的です。これらは生活の質の低下だけでなく認知症のリスクとも関わるため、運動は脳と体の両面から予防につながります。

近年の研究では、運動によって「マイオカイン」と呼ばれるホルモンが分泌され、認知機能の維持に役立つことも報告されはじめています。

特別にハードな運動をする必要はありません。たとえば、1回20〜30分程度の散歩を週に3回取り入れるだけでも十分効果があります。すでに運動習慣がある方は、軽く息が上がるくらいのやや強めの運動をおこなうと、より効果的だといわれています。

ただし、無理をしてけがをしてしまっては逆効果です。関節や足腰に不安がある方には、水中ウォーキングなど体への負担が少ない運動がおすすめです。安全に続けられる運動を、自分の体調に合わせて取り入れましょう。

アルツハイマー対策④良質な睡眠

アルツハイマー病の原因とされる異常なたんぱく質は、睡眠中に排出されると考えられています。そのため、十分な睡眠時間と質の良い眠りを確保することが、アルツハイマー病の予防に直結します。

実際に、1日の睡眠時間を5〜7時間の基準とした場合、5時間未満の睡眠ではアルツハイマー病の発症リスクが高まるという研究データもあります。睡眠不足はアルツハイマー病だけでなく、生活習慣病やストレスの原因にもなるため、できるだけ早めに改善することが大切です。

良質な睡眠のために、次のポイントを意識してみましょう。

  • 目覚ましをかけずに眠ったときの睡眠時間を数日間記録し、自分に必要な睡眠時間を把握する
  • 就寝3時間前からは明るすぎる照明を避け、寝室は暗めに整える
  • 寝る前のスマホ利用は控え、ゲームやショート動画など刺激の強いコンテンツは避ける
  • 寝室の温度や湿度を翌朝まで快適に保つ(エアコンのタイマー設定に注意)
  • 「寝酒」は睡眠の質を下げるため控える
  • 長期間にわたり「寝つきが悪い」「極端に短い、あるいは長い」といった問題が続く場合は医師に相談する

睡眠は誰にとっても自然に取れるものとは限りません。だからこそ、自分に合った睡眠環境を整え、休養を大切にすることが、アルツハイマー病予防につながります。

アルツハイマー対策⑤生活習慣病の管理

高血圧・糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病は、アルツハイマー病の発症リスクを高めることが国内外の多くの研究で明らかになっています。つまり、生活習慣病を予防・管理することは、そのままアルツハイマー病の予防にもつながるのです。

生活習慣病は、不規則な生活や偏った食事、運動不足など「日々の習慣」の積み重ねから生じます。放置すると心筋梗塞や脳卒中といった重大な病気を引き起こすだけでなく、アルツハイマー病、さらには認知症のリスクも高めてしまいます。

一方で、遺伝的に糖尿病や高血圧になりやすい体質を持っていても、医師の指導のもとで適切に治療をおこなえばリスクを抑えることがわかっています。悲観せず、できることから取り組むことが大切です。

また、生活習慣病は長い年月をかけて進行し、発症まで自覚しにくいという特徴があります。だからこそ、日常生活では次のような習慣を心がけましょう。

  • 禁煙・節煙を心がける
  • 食事は腹八分目を基本にする(過度な食事制限も控える)
  • アルコールは少量を嗜む程度にする(目安としてビール中瓶1本程度)
  • 日常生活の中で体を動かす時間を増やす
  • ストレスを溜めないよう、リフレッシュする時間を持つ
  • 適正体重(BMI22前後)を維持し、肥満や痩せすぎを避ける

これらの積み重ねが、生活習慣病の予防につながり、結果としてアルツハイマー病のリスク低減にも役立ちます。

アルツハイマー対策⑥ストレスケア

ストレスは心身に大きな影響を与え、生活習慣病やうつ病などのリスクを高めるだけでなく、アルツハイマー病をはじめとする認知症のリスク因子にもなると考えられています。心の健康を守ることは、脳と体の健康を守ることにつながります。

ストレスそのものをなくすことはできませんが、上手に付き合い、悪い影響を減らす工夫が大切です。特に、疲れや不調を感じたときに適切なセルフケアをおこなうことが予防につながります。

日常生活の中で取り入れられるストレスケアの方法には、次のようなものがあります。

  • 疲れを感じたら、しっかり休養を取る
  • ストレッチ・運動・趣味など、自分に合ったストレス解消法を持つ
  • 1日の終わりにストレスを持ち越さず、その日のうちにリセットする
  • 信頼できる家族や友人に話を聞いてもらう
  • 自分だけで解決が難しい場合は、早めに医師やカウンセラーに相談する

ストレスと上手に付き合う習慣を身につけることで、心身が安定し、アルツハイマー病予防にも良い効果を期待できます。

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アルツハイマー対策⑦社会的なつながりを大切に

社会的孤立は、アルツハイマー病の発症リスクを高める要因のひとつです。独居や人との交流が少ない人は、そうでない人に比べて発症リスクが高いと報告されています。

大人になると人間関係が固定されがちですが、意識的に新しいつながりを持つことは脳への刺激になり、心の健康にも役立ちます。取り入れやすい方法としては、次のようなものがあります。

  • 地域のサークルやボランティア活動に参加する
  • 趣味や習い事を通じて、新しい人間関係を築く
  • 定期的に家族や友人と会話する機会を持つ
  • オンラインでの交流を活用する(離れて暮らす家族や友人との交流の手段に)

新しいことに挑戦することは脳の活性化にもつながり、孤立の解消とストレス軽減の両方に効果が期待できます。社会とのつながりを大切にすることは、アルツハイマー病の予防に欠かせないポイントです。

アルツハイマー対策⑧早期発見のための定期的なチェック

アルツハイマー病は、早期に発見することで症状の進行を遅らせたり、認知機能の改善が期待できる病気です。特に、発症の前段階である軽度認知障害(MCI)の段階で早期に気づければ、適切な治療やリハビリによって健常レベルまで改善するケースも報告されています。

早期発見には、治療の選択肢が広がるだけでなく、今後の人生設計や介護の準備を早めに始められるというメリットもあります。本人だけでなく、家族や周囲の安心にもつながります。

アルツハイマー病の初期症状は、加齢による自然な変化と区別がつきにくく、脳の状態も日々少しずつ変わっていきます。だからこそ、次のような定期的なチェックを取り入れることがおすすめです。

  • 健診センターや人間ドックのオプションで、脳MRIなどの認知症関連検査を受ける
  • 自治体や医療機関が提供する認知機能チェックを活用する
  • 『認知症と向き合う365』のようなサービスを利用して、定期的に脳の状態を確認する

「年齢を重ねたから不安になってから受ける」のではなく、「まだ元気なうちから定期的に確認する」ことが、アルツハイマー病の予防と安心につながります。

アルツハイマー病が疑われる時の対処法

ここまでは、アルツハイマー病の予防のためにできることを紹介してきました。ここからは、アルツハイマー病が疑われる場合の対処法について説明します。

アルツハイマー病は、早期に発見することで症状の進行を抑えたり、適切な治療やサポートにつなげられる可能性があります。本人だけでなく家族にとっても、将来の準備や安心につながるため、気になるサインがあれば早めの行動が大切です。

チェックリストで確認する

アルツハイマー病の初期症状は、加齢によるもの忘れと区別がつきにくいことがあります。しかし、いくつかのサインが同時にあらわれる場合は、注意が必要です。アルツハイマー病が疑われるときに見られやすいサインには、次のようなものがあります。

  • 約束の日時や場所を間違えることが増える
  • 今日が何月何日か、時間の感覚があいまいになる
  • さっき聞いたことを繰り返し尋ねる
  • 通い慣れた道や場所で迷う
  • ATMや家電など、使い慣れた機械の操作に戸惑う
  • 怒りっぽくなったり、気分の変化が激しくなる
  • 不安を口にすることが増える、気持ちが落ち込みやすくなる
  • 以前より活動意欲が低下し、面倒と感じる場面が増える
  • 会話の途中で話の筋がずれて、つじつまが合わなくなる

こうした症状は、加齢によるもの忘れと混同されやすいですが、頻度が増えたり生活に支障が出ている場合は、アルツハイマー病の初期段階の可能性があります。チェックリストを活用し、日々の変化に気づくことが早期発見につながります。

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もの忘れ外来を受診する

チェックリストに複数当てはまる場合は、自己判断せず医療機関を受診することが大切です。特に「もの忘れ外来」では、アルツハイマー病を含む認知症や、その前段階である軽度認知障害(MCI)の可能性を総合的に調べてもらえます。

診察では、問診や認知機能検査に加えて、必要に応じて脳画像検査(MRIやCT)などを組み合わせて行います。これにより、加齢による単なるもの忘れか、病気によるものかを多角的に評価することが可能です。

もの忘れ外来は全国の脳神経内科、精神科、老年科などに設置されています。気になる症状がある場合は、早めに相談してみましょう。早期に受診することで、治療や生活支援の選択肢が広がり、本人や家族の安心にもつながります。

アルツハイマー病に関するよくある質問

アルツハイマー病になりやすい遺伝はありますか?

アルツハイマー病に関連する遺伝子は存在しますが、遺伝要因が発症を決定づけるわけではありません。遺伝子を持っている人は発症リスクがやや高まるものの、必ずアルツハイマー病になるというものではありません。

それよりも、加齢や生活習慣のほうが大きな影響を及ぼすといわれています。家族に発症した人がいる場合でも、悲観せずに生活習慣を整えることが大切です。

アルツハイマー病は治りますか?

現時点では、発症したアルツハイマー病を根本的に治す方法は確立されていません。

ですが、最近ではアルツハイマー病の進行を遅らせる薬や症状を和らげる治療法が開発されており、研究も日々進んでいます。将来的には治療可能な病気になる可能性も期待されています。

とはいえ、何より重要なのはアルツハイマー病を発症させないことです。日々の生活習慣や脳の使い方に気を配り、予防を心がけることが大切です。

まとめ

今回は、アルツハイマー病の基本的な情報と予防方法について解説しました。

アルツハイマー病は一度発症すると完治が難しい病気ですが、生活習慣や日々の工夫によって発症リスクを下げたり、進行を遅らせることは可能です。そのために以下の8つのポイントを意識していきましょう。

  1. 脳を活性化させる
  2. 栄養バランスの良い食事
  3. 適度な運動
  4. 良質な睡眠
  5. 生活習慣病の管理
  6. ストレスケア
  7. 社会的なつながり
  8. 早期発見のための定期的なチェック

もちろん、すべてを完璧におこなう必要はありません。できることから少しずつ生活に取り入れ、継続することが将来の健康につながります。継続のコツは、楽しんで取り組むことです。無理や我慢ばかりでは続かないので、前向きに工夫することが大切です。

日々の小さな工夫が、アルツハイマー病の予防や心身の健康維持に大きな効果をもたらします。まずは、自分の生活の中で無理なく取り入れられることから始めてみましょう。


【参考文献(ウェブサイト)】

【参考文献(書籍)】

  • 秋下雅弘(2023). 目で見てわかる認知症の予防. 成美堂出版.
  • 朝田隆(2023). 認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること. アスコム.
  • 北原逸美/ながさき一生(2025). 認知症の教科書増補改訂版. ニュートン.
  • 長尾和宏(2023). コロナと認知症~進行を止めるために今日からできること~. ブックマン
  • 森勇磨(2023). 認知症は予防が9割. マガジンハウス.

この記事の監修者

佐藤俊彦 医師

佐藤俊彦 医師

福島県立医科大学卒業。日本医科大学付属第一病院、獨協医科大学病院、鷲谷病院での勤務を経て、1997年に「宇都宮セントラルクリニック」を開院。
最新の医療機器やAIをいち早く取り入れ、「画像診断」によるがんの超早期発見に注力、2003年には、栃木県内初のPET装置を導入し、県内初の会員制のメディカル倶楽部を創設。
新たに 2023年春には東京世田谷でも同様の画像診断センター「セントラルクリニック世田谷」を開院。
著書に『ステージ4でもあきらめない 代謝と栄養でがんに挑む』(幻冬舎)『一生病気にならない 免疫力のスイッチ』(PHP研究所)など多数。