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認知症かも?でも病院に行きたがらない…そんなときの対処法と相談先を紹介

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画像素材:PIXTA

2025年には、認知症とその予備軍を合わせると、推計で700万人を超えるといわれています。今や認知症は、国民病ともいえるほど誰にとっても身近な課題になっています。

こうした現状のなかで、親やパートナーの様子を見て「もしかして認知症かもしれない」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。しかし、いざ受診を勧めても、病院に行きたがらない本人に、どう対応すればよいか悩む家族も少なくありません。

家族が認知症の可能性を心配して検査を勧めても、本人が強く拒否し、病院に行きたがらないケースはよくあります。しかし、認知症の早期受診にはさまざまなメリットがあり、何よりも家族の心理的な負担を軽くするためにも、できるだけ早く受診につなげることが大切です。

とはいえ、本人が嫌がっているのに無理に検査を勧めたり、強引に受けさせたりすると、今後の関係に亀裂が入ってしまう恐れがあるため注意が必要です。

そこで今回の記事では、本人が病院に行きたがらないときの対処法や、認知症における早期受診・早期発見の重要性について紹介していきます。

認知症において早期受診・早期発見が望ましい理由

認知症については、いまだに誤解されている点も少なくありません。「認知症と診断されても治らないから意味がない」「歳をとれば誰でもなるもの」といったイメージをもっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし実際には、認知症と診断されたあとでもできることはたくさんあります。何より大切なのは、できるだけ早く気づき、早い段階でサポートにつなげることです。

認知症は、早期に発見して適切な治療やケアを受けることにより、進行をゆるやかにしたり、症状を軽くしたりできる可能性があります。また、本人や家族が将来への準備を整えるためにも、早期受診は大きな意味をもちます。

誰にとっても認知症が身近な時代だからこそ、「気づいたときに動く」ことが重要です。

治る認知症の可能性がある

あまり知られていませんが、身体の病気が原因で認知症のような症状が出ることがあります。たとえば、「正常圧水頭症」「ビタミンB群欠乏症」「甲状腺機能低下症」などが原因で引き起こされている症状は、適切な治療によって改善が期待できる「治る認知症」です。

しかし、こうした治る認知症も、発見が遅れると症状が重くなってしまい、回復に時間がかかってしまうことがあります。回復のチャンスを逃さないためにも、早期受診・早期発見が大切です。

発症・進行を遅らせることができる

認知症は、前段階である「軽度認知障害(MCI)」のうちに気づくことで、進行を抑えることができる場合があります。リハビリや生活習慣の改善といった介入によって、症状の改善や認知機能の維持に期待できるのです。

実際に、MCIと診断された方のうち、4人に1人は健常な状態まで回復したという報告があります。さらに、MCIの段階で治療や支援につながることで、認知症の発症を約5年遅らせられるという研究結果もあります。

この5年という時間は、自立した生活を保つ重要な期間です。家族にとっても、介護や今後の暮らしを見据える貴重な準備期間になります。

早期に気づいて行動することが、その後の認知症との向き合い方に大きな違いを生みだします。

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介護の計画に余裕が持てる

認知症には、生活習慣の見直しなどによって予防できる側面もありますが、発症を完全に防ぐことはできません。だからこそ、「もし認知症になったらどうするか」を早いうちから考えておくことが心のゆとりにつながります。

また、認知症は一度発症すると、長く付き合っていくことになる病気です。個人差はありますが、発症後の平均余命は5〜12年とされており、決して短い時間ではありません。

早期受診・早期発見によって、これからの暮らし方や介護について計画的に準備する時間が確保できます。たとえば、必要な支援サービスを調べたり、家族で今後の方針について話し合ったりと、将来に備えるステップを着実に進められます。

さらに、本人の判断能力が十分に保たれている段階であれば、相続の手続きや成年後見制度の活用など、大切なことを自分の意思で決められるというメリットがあります。

早くから異変に気づいて動きだすことで、認知症と共に生きる未来に落ち着いて向き合うことができるようになります。

病院に行きたがらない理由

ここからは、認知症を疑われる方が病院に行きたがらない、よくある理由について解説していきます。

病院に行きたがらない理由①認知症の可能性を受け入れられない

認知症には、いまだに根強い誤解や偏見が残っています。特に高齢の方のなかには、「認知症=恥ずかしいこと」「認知症=迷惑をかける存在」という否定的なイメージをもっている方も少なくありません。

そのため、「もしかしたら自分が認知症かもしれない」と感じたとしても、それを認めることに強い抵抗を抱くのは、ごく自然な心理といえます。

さらに、認知症は人生の後半に差しかかってから向き合うことが多く、それまで築いてきた自分自身の生き方や価値観と深く関わる問題でもあります。「ずっと健康に気をつけてきたのに」「家族に迷惑をかけたくない」といった思いから、自責の念や後悔の気持ちを抱える方も多くみられます。

病院に行きたがらない理由②認知症が発覚することを恐れている

「もし認知症と診断されたらどうしよう」という不安から、病院に行きたがらない方も少なくありません。その背景には、「認知症の診断によって、生活が大きく変わってしまうのではないか」という恐れが隠れていることがあります。

たとえば、認知症と診断されると、運転免許の返納や停止といった影響がでることもあります。車での移動が日常生活に欠かせない地域では、移動手段を失うことが自由や自立を奪われることと同じ意味をもつかもしれません。このような不安は、本人の口から明確に語られることが少なく、周囲が気づきにくいこともあります。

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病院に行きたがらない理由③認知症だった際にプライドや尊厳が傷つく

認知症になると、もの忘れが増えたり、道に迷ったりと、それまで当たり前にできていたことが少しずつ難しくなっていきます。こうした変化は本人にとって受け入れにくく、大きなショックをともないます。「こんなはずじゃなかった」「情けない」と気落ちしてしまい、自分自身に対する誇りや尊厳が傷ついている可能性があります。

そのようなときに認知症の検査を勧められると、本人は「自分のことを理解してくれない」「尊重されていない」と感じてしまうことがあります。すでに自尊心が揺らいでいる状態では、家族の言葉でさえ否定や非難のように受け取られてしまうこともあるのです。

病院に行きたがらない場合の対処法

ここからは、本人が病院に行きたがらない場合に役立つ具体的な対処法を紹介していきます。

まず大切なのは、本人の気持ちにしっかり寄り添うことです。無理に説得しようとして、明らかにわかる嘘をついたり、だまして連れて行こうとしたりするのは避けましょう。信頼関係が崩れてしまうと、かえって受診への道のりが遠のいてしまいます。

また、周囲の人は怒ったり否定したりせず、本人の話に共感する姿勢を心がけることがポイントです。「そうだよね」「不安だよね」と気持ちを受け止めるだけでも、本人は安心感を得られやすくなります。こうした接し方が、受診への一歩を踏み出す助けになるはずです。

対処法①認知症を知ることから始める

認知症について正しい知識を身につけることで、不安を和らげたり、誤解を解いたりできる場合があります。どのような性質の病気なのか、どのような症状があらわれやすいのかをあらかじめ理解しておくことで、本人だけではなく、家族の心配も軽くなります。

できれば、本人と一緒に学びながら進めることで、互いの理解を深め、支え合う力を育むことができます。認知症への第一歩は、「知ること」から始まります。

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対処法②家族だけで医師に相談する

本人が強く病院に行くことを拒む場合は、家族だけで専門医に相談してみるのもひとつの方法です。最近の様子や気になる変化を医師に伝えることで、どの程度注意が必要か、今後どう対応すべきかの目安がつきやすくなります。

相談の際には、本人の行動や生活上の変化をあらかじめメモしておくとスムーズです。些細なことでも、日常生活での変化を積み重ねて伝えることは医師にとって重要な判断材料になります。

対処法③信頼している第三者に協力してもらう

家族の言葉に耳を傾けてもらえない場合でも、親しい友人やご近所の方、昔からの知人など、本人が信頼している第三者の言葉なら素直に聞き入れてくれることがあります。

その際には、「最近、もの忘れが増えて心配だから、検査を受けようと思っているんだ」「よかったら一緒に受けてみない?」といった、本人が前向きに検査を受ける気持ちになれるような、配慮のある声かけが効果的です。

また、最近では認知症についてわかりやすく解説している書籍や動画も増えています。こうした情報を一緒に見てみることで、本人が前向きな気持ちになるきっかけになることもあります。家族だけで抱え込まず、信頼できる第三者や身近な情報を活用しながら、無理のない形で受診への一歩を後押ししましょう。

対処法④健康診断や検診の機会を活用する

病院に行きたがらない方でも、健康診断やがん検診などは定期的に受けていることが多いのではないでしょうか。

多くの健診センターでは、「MRI検査」や「脳PET検査」など、実際の認知症の診断にも使われる検査をオプションで追加することができます。そのため、健康診断やがん検診のタイミングに合わせて、これらのオプション検査を勧めてみるのも効果的です。

「ついで」に検査を受けることで、病院に行くことへの心理的なハードルが下がり、よりスムーズに受診につなげやすくなります。こうした機会を上手に活用するのもひとつの方法です。

病院に行きたがらない際の注意点

注意点①無理に連れて行かない

家族が「何か変だな」と感じているということは、本人も「これまで通りにできない」「自分らしくない」といった違和感を抱いている可能性があります。認知症の初期には、本人が自分の変化にとまどい、受け止めきれずに混乱している状態が多くみられます。

このような不安定な精神状態のとき、信頼している家族に無理やり病院に連れて行かれると本人にとっては大きな精神的ダメージになります。その結果、かえって認知機能の低下を進める一因になってしまうこともあります。だからこそ、無理に連れて行くことは絶対に避け、本人の気持ちを尊重することが大切です。

注意点②本人を責めない

認知症の初期には、もの忘れが増える、慣れた道に迷うといった変化がみられ、本人自身も混乱やとまどいを感じていることが少なくありません。一方で、家族にも手がかかることが増え、将来への不安やストレスを感じやすくなります。

そのような状況で、つい本人を責めたくなってしまうことがあるかもしれません。ですが、誰にでも認知症になる可能性はあります。本人を責めることも、自分を責めることも避けましょう。

責められた本人は「なぜわかってもらえないのか」と深く傷つき、よりふさぎ込んでしまうことがあります。だからこそ、お互いの気持ちを尊重し、責め合わないことがとても大切です。家族が支え合う姿勢を示すことで、本人の心の安定にもつながります。

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まとめ

今回は、認知症の早期受診・早期発見の重要性や、病院に行きたがらない場合の対処法について解説してきました。

認知症が疑われるとき、家族は不安や心配で気持ちがいっぱいになるかもしれません。ですが、本人も同じように自分の変化にとまどい、混乱していることを忘れずにいてください。相手を自分の都合で動かそうとすると、信頼関係にヒビが入る恐れがあります。だからこそ、「怒らない・否定しない・共感する」の姿勢を保つことが大切です。寄り添う気持ちを大切にしましょう。

また、たとえ今は大きな問題がなくても、早めに異変に気づけるように体制を整えておくことで、不安を軽くすることができます。そのようなときにおすすめなのが、『認知症と向き合う365』です。電話やオンラインで手軽に認知機能の状態を確認できるため、ちょっとした変化にも気づきやすくなります。

さらに、全国の提携医療機関でMRI検査を受け、その結果の画像をAIで分析する「BrainSuiteⓇ」も利用できるので、本格的な検査への第一歩としてもハードルが低いのが特徴です。

早くから準備をしておくことで、将来に対する心配をぐっと減らすことができます。ご自身はもちろん、大切な親やパートナーがこれからも自分らしく健やかに過ごせるよう、今日できることから少しずつ始めてみてください。


【参考文献(ウェブサイト)】

【参考文献(書籍)】

  • 秋下雅弘(2023). 目で見てわかる認知症の予防. 成美堂出版.
  • 旭俊臣(2022). 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症. 幻冬舎.
  • 長尾和宏(2023). コロナと認知症~進行を止めるために今日からできること~. ブックマン.
  • 山川みやえ・繁信和恵・長瀬亜岐・竹屋泰(2022). 認知症plus若年性認知症. 日本看護協会出版会.
  • 若井克子(2022). 東大教授、若年性アルツハイマーになる. 講談社.

この記事の監修者

佐藤俊彦 医師

佐藤俊彦 医師

福島県立医科大学卒業。日本医科大学付属第一病院、獨協医科大学病院、鷲谷病院での勤務を経て、1997年に「宇都宮セントラルクリニック」を開院。
最新の医療機器やAIをいち早く取り入れ、「画像診断」によるがんの超早期発見に注力、2003年には、栃木県内初のPET装置を導入し、県内初の会員制のメディカル倶楽部を創設。
新たに 2023年春には東京世田谷でも同様の画像診断センター「セントラルクリニック世田谷」を開院。
著書に『ステージ4でもあきらめない 代謝と栄養でがんに挑む』(幻冬舎)『一生病気にならない 免疫力のスイッチ』(PHP研究所)など多数。