トップ > 公式ブログ > 認知症の検査を嫌がる場合の対処法やおすすめの相談先を解説

認知症の検査を嫌がる場合の対処法やおすすめの相談先を解説

認知症の検査を嫌がる場合の対処法やおすすめの相談先を解説のイメージ画像
認知症の検査を嫌がる場合の対処法やおすすめの相談先を解説のイメージ画像
画像素材:PIXTA

親やパートナーが年齢を重ねるにつれて、もの忘れが増えたり、同じ話を何度も繰り返したりと、気になる様子が見られるようになります。そのようなとき、「もしかして認知症かも?」と不安を感じるご家族も多いのではないでしょうか。しかし、検査を受けてもらいたいと思っても、本人が強く嫌がって検査に進めないケースは少なくありません。

認知症の早期発見・早期対応は、その後の生活や治療の選択肢を広げるうえで非常に大切です。ただし、本人の気持ちを無視して無理に検査を勧めると、かえって信頼関係を損ねてしまうこともあります。

今回は、認知症検査を嫌がる場合の対処法や、相談できる窓口について解説していきます。

認知症の特徴

「認知症」とは、特定のひとつの病気を指す言葉ではなく、記憶力や判断力・理解力といった認知機能が低下し、日常生活に支障をきたしている状態をあらわす総称です。脳の疾患や障害が原因で起こる「症候群(シンドローム)」のひとつとされています。

認知症の原因となる病気にはさまざまなものがありますが、多くが進行性で、ゆっくりと確実に症状が進行していくのが特徴です。

認知症の初期では、記憶力や思考力などの認知機能の低下が目立ちますが、症状が進行するにつれて身体機能にも影響が現れてきます。脳は認知機能だけではなく、生命活動の基本を司る臓器でもあるため、認知症が進むことで心身にさまざまな不調がみられるようになります。

また、脳は個人差が非常に大きい臓器です。そのため、認知症の症状や進行のスピードにも個人差があります。ある人は記憶障害が強く出る一方で、別の人は感情のコントロールが難しくなるというように、症状の現れ方もさまざまです。

さらに、認知症には「本人が自分の変化に気づきにくい(病識をもちづらい)」という特徴があります。周囲が変化に気づいても、本人は「自分は問題ない」と受け入れられないケースも少なくありません。

認知症は、「誰にでも同じように進行する病気」ではなく、一人ひとり異なる経過をたどります。だからこそ、早期の気づきと本人の状態に応じたていねいな対応が大切です。

認知症を早期発見するメリット

残念ながら、現時点では認知症を完全に治す治療法はまだ確立されていません。ですが「もう手遅れかもしれない」とあきらめる必要はありません。認知症の症状がはっきり現れる前にリスクを発見できれば、できることはたくさんあります。

たとえば、認知機能の維持や進行を抑える効果が期待できる薬の使用や、食事・運動・睡眠など生活習慣の見直しによって、症状の進行を緩やかにすることが期待できます。これは本人だけではなく、家族の精神的・身体的負担の軽減にもつながります。

また、まだ働いている方であれば、仕事を続けることが難しくなる前に職場へ相談したり、生活の見直しを図ったりといった準備の時間を取ることができます。

ここでは、認知症を早期発見することで得られるメリットについて紹介していきます。

進行を遅らせることができる

認知症の早期発見にはさまざまなメリットがありますが、そのなかでも特に大きなメリットは、症状の進行を抑える、または、症状の改善が期待できる可能性があることです。

現在の医療では、認知症を完全に治す方法はまだありません。しかし、発症する前段階である軽度認知障害(MCI)や、ごく初期の段階で発見できれば、投薬や生活習慣の見直しによって認知機能を維持・改善できるケースもあります。

実際にMCIの段階で適切な介入をおこなった人のうち、約16〜41%で認知機能の改善がみられたという報告があります。また、認知症の発症を5年遅らせることができる、というデータもあります。

この「5年間」は、とても意味のある時間です。認知症の症状に悩まされることなく、自分らしく生活できる大切な時間です。本人にとっても、家族にとっても、かけがえのない価値のある期間です。

しかし、認知症の初期症状はとてもわかりにくく、病院での診断も簡単ではないのが現実です。そのため、「少しでも早く気づこう」という意識をもつことが未来の選択肢を広げる第一歩になります。

今後の生活の準備ができる

認知症はある日突然に起こるわけではありませんが、いざ「診断」が下ると、家族やパートナーに大きな影響を与える出来事となります。そして、十分な準備ができないまま介護がスタートしてしまうケースも少なくありません。

その結果、仕事や生活・金銭管理・介護体制など、さまざまな場面で唐突に決断を迫られ、本人も家族も心身共に疲弊してしまうことがあります。介護の本番を迎える前に、すでに力を使い果たしてしまうということにもなりかねません。

だからこそ、認知症を早期に発見することは、今後の生活を整えるうえでとても大きな意味があります。

たとえば、仕事をしている方なら職場への相談や担務の調整、退職の準備などを事前に進められます。症状の進行に備えて医療や介護に関する情報を家族で共有し、精神的な備えを整えておくこともできます。

さらに、介護保険や支援サービスの申請、利用できる福祉制度の確認、財産管理や相続の準備なども、本人が判断能力を保っているうちに進めておくことができます。

このように、認知症の早期発見は「発症を遅らせる」だけではなく、これからを見すえた準備の時間をもたらしてくれます。本人にも家族にも、より穏やかで納得感のある日々を送るための大きな助けになります。

認知症の初期症状

「認知症の初期症状」と聞くと、多くの人が「もの忘れ」を思い浮かべるかもしれません。たしかに記憶力の低下はよく見られる変化ですが、初期に現れる症状は個人差が大きいことがわかっています。

なぜなら、認知症や何らかの障害によって脳がダメージを受けた場合、影響を受けた部位や範囲によって現れる認知症の症状が人それぞれ異なるからです。また、認知症の種類によっても、特徴的な初期症状は異なります。

たとえば、感情の起伏が激しくなったり、急に怒りっぽくなったり、言葉がうまく出てこなくなったりするなど、意外な変化が認知症の初期症状のサインとなることもあります。さらに、認知症とは一見関係のなさそうな下痢や頭痛などの身体の不調が目立つケースもあり、それが原因で認知機能の変化を見逃してしまうこともあります。

ただし、共通する目安として、「これまでできていたことが、できなくなった」と感じたときは注意が必要です。いつもと違う様子に気づいたら、早めの対応を検討しましょう。

ここからは、認知症の初期症状として比較的よく見られる代表的な変化を紹介していきます。

もの忘れが多い

認知症の初期症状として、身近で気づきやすいのが「もの忘れ」です。たとえば「財布をよくなくす」「鞄を置き忘れることが増えた」など、日常のなかで小さなミスが繰り返されるようになったら、少し注意して観察してみましょう。

特に、「同じ質問を何度も繰り返す」「さっき話したことをもう一度話す」といった短期記憶の障害が目立つ場合は、認知症の初期段階のサインの可能性があります。

また、「言いたい言葉がなかなか出てこない」「漢字が思い出せない」といった言語に関するもの忘れも、見逃しやすい初期症状のひとつです。加齢による自然な衰えと重なることがあるため判断が難しいですが、頻度が増えた、悪化してきたと感じた場合は注意が必要です。

認知症の検査を嫌がる場合の対処法やおすすめの相談先を解説のイメージ画像
画像素材:PIXTA

仕事や家事の段取りができなくなる

仕事や家事をしていて、「最近うまく段取りが立てられない」と感じることはありませんか。たとえば、会議準備で必要な作業を整理できなくなる、複数の料理を同時に作れていたのに一品だけで手いっぱいになる、といった変化が見られる場合、もしかすると認知症の初期症状が隠れているかもしれません。

このような「段取り力」の低下は、初期の認知症によく見られる特徴のひとつです。マルチタスクが難しくなった、ものごとを順序立てて進めることが難しくなった場合は、「実行機能」と呼ばれる認知機能の働きが低下している可能性があります。

もちろん、疲れやストレスによる一時的な影響ということもありますが、こうした変化が明らかに増えてきた、あるいは頻繁に起こるようであれば、早めに専門医や医療機関に相談することをおすすめします。

道に迷いやすくなる

認知症の初期症状のひとつに、「道に迷う」「通路がわからなくなる」といった空間認識の低下が挙げられます。たとえば、長年通っている病院の帰り道で迷う、通勤途中に道を間違えるなど、これまで通い慣れていた場所で迷うようになったときは注意が必要です。

初めて訪れた場所や馴染みのない道で迷うのは自然なことですが、日常的に使っている道や何年も繰り返してきたルートで迷うようになった場合は、認知症の兆候が疑われます。また、「ここで曲がるのは覚えているけれど、右か左かが思い出せない」といった部分的な記憶の混乱も、見逃せないサインのひとつです。

こうした空間認識のトラブルは、本人にとっても強い不安や混乱につながります。いつも通りの行動がうまくできなくなってきたと感じたら、早めに専門機関に相談することが大切です。

新しいことが覚えられない

「仕事で新しく引き継いだ業務をなかなか覚えられない」「最近始めた習い事の場所に行くたびに迷ってしまう」などの状況が続くと、不安を感じるかもしれません。このように、新しい情報をうまく記憶できなくなることも、認知症の初期症状のひとつとして知られています。

誰でも加齢とともに記憶力が少しずつ衰えていきますが、一般的な加齢によるもの忘れと認知症による記憶障害には違いがあります。一般的な加齢によるもの忘れでは、時間はかかっても繰り返すことで新しいことが覚えられます。一方、認知症では何度繰り返しても、新しい内容を覚えることが非常に難しくなります。

「歳のせい」と見過ごしがちな変化もありますが、「いつもより覚えが悪い」「新しいことがなかなか身につかない」と感じたときは、認知症のサインとして注意しておくことが大切です。

感情がコントロールできない

感情の起伏が激しくなったり、ちょっとしたことで怒ったり泣いたりする場面が増えてきた場合、認知症の初期症状の影響である可能性が考えられます。

これまで穏やかだった人が怒りっぽくなったり、ささいな言葉で感情的になったりするような変化は、家族や身近な人が最初に気づくきっかけにもなります。認知症では、感情や行動を抑える働きを持つ脳の前頭葉がダメージを受けることで、感情のコントロールが難しくなることがあります。

特に、普段はそんな行動をしなかった人が、以前のイメージとかけ離れた言動を繰り返す場合は注意が必要です。本人も自分の変化に気づいていないことが多いため、周囲が早めに気づいて医療機関に相談することが大切です。

認知症の検査を嫌がる場合の対処法やおすすめの相談先を解説のイメージ画像
画像素材:PIXTA

人格が変わったような変化が起こる

「以前は教育熱心だったのに、急に子どもに関心を示さなくなった」「おしゃれにこだわりが強かったのに、身だしなみがだらしなくなった」など、まるで別人のように感じるような変化が見られる場合は認知症の初期症状のひとつかもしれません。

また、職場や日常生活で「勝手に仕事を抜け出して休憩をとる」「注意されても気にしない」など、その場にふさわしくない行動や反社会的ともとれる言動が増えた場合も注意が必要です。

特に、自分のわがままな行動が周囲に迷惑をかけているにもかかわらず、本人に深刻さの自覚がない場合は、認知症以外の病気が関係している可能性もあります。こうした変化を感じたらできるだけ早く専門医に相談してみましょう。

無口・無気力になる

「会話の回数が減った」「長く続けていた趣味の音楽に興味を失った」と感じることはありませんか。こうした変化も認知症の初期症状のひとつとして現れることがあります。

もちろん、趣味をやめる理由は人それぞれです。新たにやりたいことができた、仕事が忙しくなって時間が取れない、体調や疲労のせいで集中できないなど、生活環境の変化がある場合は特に心配する必要はありません。

しかし、生活リズムや環境が変わらないのに、以前楽しんでいたことへの関心が薄れてやる気が出ない場合には注意が必要です。これまでの様子と明らかに違う無口・無気力の状態が続くようであれば、認知症の兆候かもしれません。

認知症の検査を嫌がる理由

実際に認知症と診断された方の多くは、「おかしいな?」と感じてから専門機関を受診し、正式に診断されるまで、平均して約4年もかかっているというデータがあります。多くのケースで受診までに時間がかかり、結果的に検査が遅れてしまう傾向があるのです。

では、なぜ認知症の検査を嫌がる人が多いのでしょうか。理由はいくつかありますが、今回はそのなかでも特に多くみられるケースを紹介します。

嫌がる理由①自分は問題ないと思っている

認知症の大きな特徴のひとつに、本人が自分の症状に気づきにくい「病識の欠如」があります。それにより、認知症ではもの忘れや失敗が増えても、本人が「特に問題はない」と感じてしまうことが多くあります。そのため本人と周囲の人との間で症状への認識にズレが生じやすく、家族や友人が心配して声をかけても、なかなか理解されないことがあります。

さらに、指摘されることへの反発から、「自分は問題ない」と頑なになってしまうことも少なくありません。このような心理も理解したうえで、周囲は焦らず、温かく支えていくことが大切です。

嫌がる理由②認知症と診断されるのが怖い

認知症という言葉には、「寝たきりになる」「人と話せなくなる」といった深刻なイメージをもっている人も少なくありません。「自分もいずれそうなるのでは」と想像し、不安や恐怖を感じてしまうのも無理はないでしょう。

その結果、現実と向き合うのを避けようとして検査自体を拒むのも理解できます。まずは、そうした気持ちを受け止め、安心できる環境をつくることが重要です。

嫌がる理由③プライドや尊厳が傷つくように感じる

これまでの人生で積み重ねてきた経験や社会的な立場をもつ人にとって、認知症と診断されることは、これまでの功績や自分の価値が否定されるように感じられることがあります。つまり「今」の認知症という課題が、「過去」の努力や成果まで傷つけてしまうのではないか、と恐れることで認知症であることを受け入れにくくなってしまうのです。

また、プライドや自尊心により、たとえ介助や介護が必要になったとしても自分のイメージが損なわれることを嫌がり、なかなか現実を受け入れられない場合があります。本人のこうした気持ちも理解したうえで、周囲が否定せずに、そっと寄り添うことが大切です。

嫌がる理由④認知症以外の身体的な症状と勘違いしている

認知症の初期段階で、身体的な症状が現れるケースは決してめずらしくありません。たとえば、下痢や頭痛、高血圧など身体的な不調が見られることがあります。

そのため、本人や家族が「これは体調の問題だ」と考えてしまうことがあります。特に、これまでの不調や持病と似た症状であれば、「年齢のせい」「疲れのせい」と誤って判断しやすく、認知症の可能性を見落としてしまうケースも少なくありません。

身体の症状と認知機能の変化が重なっている場合でも、認知症の可能性はゼロではありません。少しでも違和感があれば、念のため検査を検討してみることが大切です。

認知症の検査を嫌がる場合の対処法

ここまで、認知症の検査を嫌がる理由について紹介してきました。では、実際に検査を拒む場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

何よりも大切なのは、本人の気持ちにしっかり寄り添うことです。たとえ明らかに認知症の兆候があるとしても、無理に検査を受けさせようとしたり、批判的な言い方をしたりすることは逆効果になってしまいます。認知症かもしれないという不安を抱えているのは、家族や周囲の人だけではなく、本人も同じです。そのため、検査を嫌がる場合には無理強いせず、ゆっくりと時間をかけて向き合うことが重要です。

また、忘れてはならないのが「早期発見=早期絶望」ではないという視点です。認知症は、早く気づくことで生活の見直しや将来への備えがしやすくなり、結果的に安心につながります。本人にもその前向きな側面を少しずつ伝えていくことが大切です。

認知症の検査を嫌がる場合の対処法やおすすめの相談先を解説のイメージ画像
画像素材:PIXTA

嫌がる場合の対処法①検査ではなく、まずは対話から始める

「もしかして認知症かも?」と感じたら、すぐに検査を受けさせたくなるかもしれません。しかし、認知症であることを受け入れるのは、本人にとって非常に心の負担が大きいものです。

そのため、いきなり検査を勧めると、たとえ悪意がなくても、「自分は認知症だ」と決めつけられたように感じてしまい、強い拒否反応を起こす場合があります。

まずは、最近の変化について、落ち着いた雰囲気のなかで話し合ってみましょう。本人も「うまくいかない」「なぜか思い出せない」といった戸惑いを感じていることが多いため、その気持ちに寄り添いながら、困っていることを共有することが大切です。

本人の気持ちを無視して無理に検査を受けさせようとすると、信頼関係が損なわれるだけではなく、今後の対応にも支障が出る可能性があります。まずはゆっくり対話の時間をもつことが大切です。

嫌がる場合の対処法②信頼している第三者に協力してもらう

家族の言葉には耳を貸さないのに、信頼している友人や親戚、元同僚の言葉には素直に反応する、といったケースも少なくありません。

本人が強く信頼している第三者に協力をお願いすることで、検査への心理的ハードルを下げられる場合があります。たとえば、第三者から「最近ちょっと心配なことがあって、一緒に検査を受けてみない?」というような形で誘ってもらう方法です。また「最近、もの忘れが気になって検査を受けたよ」と話すことで、本人の警戒心を和らげるきっかけになることもあります。

ポイントは、本人の意思を尊重して無理強いをしないことです。強引に勧めるのではなく、信頼関係をベースにした穏やかな働きかけが次の行動につながることもあります。

嫌がる場合の対処法③健康診断のオプション検査を活用

認知症検査を嫌がる方でも、定期的な健康診断を受けている方は多いのではないでしょうか。

多くの健診センターでは、健康診断に加えて受診者が自由に選べる「オプション検査」が用意されています。このオプション検査から「脳MRI検査」「脳FDG-PET検査」など、実際の認知症の検査にも用いられる画像検査を追加できる場合があります。健康診断と合わせて、これらのオプション検査の受診をすすめてみるのも、検査への心理的ハードルを下げるうえで効果的です。

また、がん検診など別の目的で健診を受ける際にも、同様の検査をオプションで追加できる場合があります。認知症検査を嫌がる場合には、こうしたタイミングを活用して、自然な形で認知症のチェックをおこなってみるのもひとつの方法です。

認知症の検査を嫌がる場合のおすすめの相談先

「検査を受けてほしいけれど、本人がどうしても嫌がる」「健康診断と合わせてオプション検査を勧めてみたけれど拒否された」というような状況に直面して、どうすればいいか分からず悩んでいる人も多いかもしれません。

認知症は長期間にわたり付き合っていく病気です。早い段階で疲弊してしまうと、本人も周囲も大変です。ですので、初期の段階から外部の支援先を活用して、負担を分散させることが重要です。身近な医師や地域の窓口、オンラインで気軽に使える民間サービスなど、いざというとき頼れる場があることは大きな安心につながります。

ここでは、相談先として代表的な3つの選択肢を紹介します。

嫌がる場合の相談先①かかりつけ医

かかりつけ医は日頃の健康状態や普段の様子をよく知っているため、些細な違和感にも気づきやすく信頼関係が築かれていることから、医師の指摘が本人や家族にとっても受け入れやすいことがあります。

また、具体的な症状や違和感がはっきりしていなくても、気になる点をメモにまとめておくと説明がスムーズです。さらに、ご本人や家族だけではなく、同僚や友人など周囲の人が感じている違和感も共有できれば、より正確な状況把握につながります。

認知症の兆候は小さな変化の積み重ねです。早めの相談が今後の対応をスムーズにしますので、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。

認知症の検査を嫌がる場合の対処法やおすすめの相談先を解説のイメージ画像
画像素材:PIXTA

嫌がる場合の相談先②地域包括支援センター

地域包括支援センターは、高齢者やそのご家族が利用できる生活全般の困りごとを相談できる総合窓口です。まだ認知症と診断されていなくても、気になることがあれば気軽に相談できます。また、生活のなかで困っていることや支援が必要な場合には、専門のスタッフが適切なサービスの紹介やサポートしてくれます。

地域包括支援センターはおおよそ中学校区ごとに設置されているので、お住まいの地域のセンターを調べてみましょう。窓口で直接相談を受け付けているだけではなく、センターによっては電話相談の利用も可能です。認知症に関する不安や疑問があれば、まずは相談してみるのがおすすめです。

嫌がる場合の相談先③『認知症と向き合う365』

本人が検査に強く抵抗しているときには、「医療機関に行く」という選択肢以外のアプローチも有効です。『認知症と向き合う365』は、認知症リスクのチェックや生活改善の支援を自宅で始められるオンライン型サービスです。

オンラインや電話で実施する認知機能のセルフチェックなど、ハードルが低いメニューを通して、本人にも自然な形で認知症対策を促すことができます。医師や心理士などの専門スタッフにオンライン相談も出来るので、「医療機関の受診にはまだ抵抗がある」と感じている方や、相談相手がいない方にも使いやすいサービスです。

まとめ

今回は、認知症の検査を本人が嫌がる場合の対処法や相談先について紹介してきました。

認知症の兆しに気づいたとき、早めに検査を受けて確認することはとても大切です。しかし、本人が「認知症」という言葉に強い抵抗感を抱き、検査を嫌がるケースは少なくありません。

大切なのは、無理に検査を勧めるのではなく、本人の気持ちに寄り添いながら、できることから少しずつ前へ進むことです。無理に説得しようとするのではなく、「健康のチェック」や「生活の相談」といった前向きな言葉に言い換えたり、信頼できる第三者の力を借りたりすることで、心のハードルを下げられることもあります。

無理に押しつけることではなく、「一緒に考える」姿勢から認知症と向き合う第一歩が始まります。焦らず、ていねいに少しずつ前へ進んでいきましょう。


【参考文献(ウェブサイト)】

  • 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(2024). あたまとからだを元気にするMCIハンドブック. [オンライン]. 2025年7月29日アクセス,
    https://www.mhlw.go.jp/content/001272358.pdf

【参考文献(書籍)】

  • 秋下雅弘(2023). 目で見てわかる認知症の予防. 成美堂出版.
  • 朝田隆(2023). 認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること. アスコム.
  • 朝田隆・森進(2023). 認知症を止める「脳ドック」を活かした対策. 三笠書房.
  • 北原逸美(2025). 認知症の教科書. ニュートンプレス.
  • クリスティーン・ボーデン/桧垣陽子(2003). 私は誰になっていくの?――アルツハイマー病者からみた世界. クリエイツかもがわ.
  • 山川みやえ・繁信和恵・長瀬亜岐・竹屋泰(2022). 認知症plus若年性認知症. 日本看護協会出版会.

この記事の監修者

佐藤俊彦 医師

佐藤俊彦 医師

福島県立医科大学卒業。日本医科大学付属第一病院、獨協医科大学病院、鷲谷病院での勤務を経て、1997年に「宇都宮セントラルクリニック」を開院。
最新の医療機器やAIをいち早く取り入れ、「画像診断」によるがんの超早期発見に注力、2003年には、栃木県内初のPET装置を導入し、県内初の会員制のメディカル倶楽部を創設。
新たに 2023年春には東京世田谷でも同様の画像診断センター「セントラルクリニック世田谷」を開院。
著書に『ステージ4でもあきらめない 代謝と栄養でがんに挑む』(幻冬舎)『一生病気にならない 免疫力のスイッチ』(PHP研究所)など多数。