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物忘れがひどい人は認知症かも!早期発見の方法などを解説

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画像素材:PIXTA

日常生活の中で「今、何をしようとしていたんだっけ?」というような物忘れを経験することは、誰にでもあるものです。しかし、こうした物忘れが以前よりも頻繁になったり「ちょっとひどいかも…」と感じたりするようになると、「もしかして脳の病気?」「認知症かもしれない…」と不安になる方も多いのではないでしょうか。

しかし、すべての物忘れの原因が病気であるとは限りません。ストレスや疲労などの心身のコンディションや加齢などの影響によって一時的に記憶力が低下することはよくあります。

とはいえ、物忘れの頻度が増えたり、長引いたりして「前よりも物忘れがひどくなった」と感じるときは、念のために一度、認知症の可能性についても知っておくことが安心につながります。

今回は、物忘れがひどくなる人の特徴やその原因に加えて、認知症が疑われる場合の早期発見のポイントについてもわかりやすく解説します。

物忘れがひどい人の特徴

加齢により記憶力が低下している

年齢を重ねると、記憶力をはじめとした脳の機能は少しずつ変化していきます。これは自然な老化現象のひとつであり「人の名前がすぐに出てこない」「何を取りに来たのか忘れてしまう」といった物忘れは、加齢によって誰にでも起こりうることです。

たとえば「何を探していたのか忘れていたけど、置いてある本を見て探していたことを思い出した」といった、手がかりがあれば思い出せるケースは、加齢による一時的な物忘れであることが多く、あまり神経質になる必要はありません。

大切なのは、こうした物忘れがあっても日常生活に支障をきたしていないかどうかという点です。

うつ状態

なんとなくやる気が出ない、何をしていても気分が晴れない、このような「うつ状態」にあるとき、脳や心は大きな影響を受けています。うつ状態では記憶力や集中力が低下しやすく、意欲の低下も重なることで、日常生活での物忘れが目立つようになることがあります。

また、集中力が続かなかったり、注意が散漫になったりすることも多く、結果的にそれがひどい物忘れにつながることも少なくありません。

うつ状態が長く続くと、生活全体に支障をきたすおそれがあるため「ただの物忘れ」だと軽視せず、心の状態にも目を向けることが大切です。

疲れやストレスが溜まっている

「最近、物忘れやうっかりすることが増えたかも…」と感じたときには、心身の疲れやストレスが溜まっていないかを振り返ってみることも大切です。

疲労が溜まっているときは、体だけではなく脳も疲弊しています。その結果、集中力や注意力が低下し、いつもなら忘れないはずのことでも忘れてしまいやすくなります。

また、強いストレスが続くと脳がしっかりと休まらず、記憶力や意欲が低下しやすくなります。こうした状態では、物忘れが頻発して「以前よりひどくなった」と感じるのも自然なことだと言えます。

「ただの疲れ」と見過ごさず、意識的に休息を取ったり、ストレス解消の時間を持ったりすることが、脳のパフォーマンス回復には欠かせません。

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物忘れがひどくなる原因

一時的・環境的な原因

「最近、物忘れがひどくなった」と感じるときは、環境の変化が影響していることがあります。たとえば、転職や引っ越し、病気やケガなど、生活の中で大きな変化があると、それ自体がストレスとなり、脳の働きに一時的な影響を与えることがあります。

新しい環境に適応しようとする過程では、脳がフル稼働している状態になり、注意力や記憶力が一時的に低下して、物忘れが増えることも珍しくありません。

ただし、新しい環境に慣れてきてもなお、ひどい物忘れが続くようであれば、別の原因が潜んでいる可能性もあります。そうした場合には、早めに専門の医療機関へ相談することを検討しましょう。

加齢にともなう変化

年齢を重ねると、記憶力をはじめとした脳の働きがゆるやかに衰えていくのは自然なことです。そのため「最近ちょっと物忘れが増えたかな」と感じる程度であれば、過度に心配する必要はありません。

ただし、自分では気づかなくても、家族や周囲の人間から「最近忘れっぽくなったね」と指摘されるようになった場合は注意が必要です。本人が自覚していないうちに、物忘れの頻度や程度が変化している可能性があります。

加齢による変化を正しく理解して、上手につき合うためには日々の生活の中で「以前との違い」に気づくこと、そして、必要に応じて専門家に相談する姿勢が大切です。

肥満

あまり知られていませんが、肥満も一時的な物忘れの原因になることがあります。肥満状態が続くと、血流や代謝に悪影響を及ぼし、脳の認知機能が一時的に低下しやすくなります。その結果、記憶力や注意力に影響が出て、物忘れが増える場合があります。

こうした変化は、生活習慣の見直しや体重管理を行うことで改善が期待できます。実際に、肥満の改善によって集中力や記憶力が回復した例も報告されています。

また、肥満と相関性が高い糖尿病と認知症には明確な関連があり、糖尿病は認知症の発症リスクを高める要因のひとつです。

糖尿病患者は、アルツハイマー型認知症の発症リスクが約1.5倍、脳血管性認知症の発症リスクが約2.5倍高いことが、複数の研究で報告されています。高血糖状態が続くと動脈硬化が進行し、脳への血流が悪化することで脳神経の機能障害や認知機能の低下を招き、血管性認知症のリスクが上昇します。高血糖だけでなく、重症低血糖や血糖値の大きな変動も認知機能低下のリスクとなります。

糖尿病の方が認知症を発症すると、薬の飲み忘れや血糖コントロールの困難化などにより、糖尿病自体の悪化にもつながるため、相互に悪影響を及ぼします。適切な血糖コントロールや生活習慣の改善によって、認知症のリスクを下げることが可能です。

物忘れがひどい時に意識すること

栄養バランスの取れた健康的な食事を心がける

物忘れがひどくなったと感じたとき、まず見直したいのが毎日の食生活です。食事は心と体の健康の基本であり、脳の働きにも深く関わっています。

たとえば、DHAやEPAを多く含む青魚(サバ・イワシ・サンマなど)は、記憶力や認知機能の維持に役立つとされています。栄養バランスを意識した食事を続けることで、脳のパフォーマンスの改善が期待できます。

栄養はまず食事からしっかり摂ることを基本にしつつ、必要に応じてサプリメントを取り入れるのもひとつの方法です。忙しい毎日でも栄養が偏らないよう、できる範囲で工夫を重ねることが大切です。

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生活習慣を見直す

生活習慣の乱れは、物忘れがひどくなる一因になることがあります。特に、睡眠不足や昼夜逆転などの不規則な生活は、脳が十分に休息を取れない状態を生み出し、記憶力や集中力の低下につながります。

さらに、生活リズムの乱れが続くと、糖尿病や高血圧といった生活習慣病のリスクも高まります。こうした慢性的な疾患は、将来的に認知症の発症リスクを上昇させる要因にもなり得ます。

忙しい毎日でも、十分な睡眠や規則正しい生活を意識することが、脳の健康を保ち、物忘れの悪化を防ぐための第一歩になります。

気分をリフレッシュする

ストレスを溜め込むことは、物忘れが増えるだけではなく、意欲の低下や生活の質(QOL)の低下にもつながります。特に現代は、スマートフォンやパソコンから絶え間なく情報が流れ込む環境にあり、自覚がないままストレスを抱えていることも少なくありません。

だからこそ、意識的にリフレッシュする時間をもつことが大切です。趣味に没頭したり、運動したりするのはもちろん効果的ですが、特別なことをしなくても、軽い散歩をするだけでもリフレッシュ効果があります。また、家でゆっくり過ごす場合でも、窓を開けて空気を換気するだけで気分がリセットされることもあります。

日々の小さな工夫が心と体のバランスを整え、物忘れの予防にもつながります。

脳を使う習慣をはじめる

物忘れが気になってきたら、脳を意識的に使う習慣を取り入れてみましょう。脳は、同じ作業を繰り返していると、次第に脳への刺激が減り、使われる範囲が特定の領域に偏るようになります。その状態が長く続くと、脳の働き全体が鈍くなり、物忘れがひどくなる一因となることがあります。

そこでおすすめなのが、日常の中にちょっとした「新しい刺激」を取り入れることです。

たとえば、

  • 資格の勉強に挑戦する
  • 新聞や読書を習慣にする
  • パズルやゲームを楽しむ

といった取り組みは、どれも脳をバランスよく使うよいきっかけになります。ただし、無理のない範囲で続けることが大切です。

また、慣れないことにチャレンジするのも脳にとって効果的な刺激になります。旅行に出かけたり、初めての場所を訪れたりすることで五感が刺激され、記憶力や判断力のトレーニングにもつながります。

メモ・ToDoリストの活用

物忘れが気になったときには、メモやToDoリストを活用するのも効果的です。仕事でタスク管理ツールを使っている方も多いかもしれませんが、日常生活でも取り入れてみるのもおすすめです。

スマートフォンやタブレットのアプリは、手軽に使えてデータの整理もしやすいので、はじめての方にもおすすめです。一方で、紙の手帳やメモ帳の「書く」動作そのものも、記憶の定着につながるという利点があります。また、紙とデジタルを組み合わせる方法も有効です。たとえば、スマートフォンで入力した予定を手帳にも記録することで、自然と内容が頭に入りやすくなるという人もいます。

自分に合った方法や、ツールを使ったメモやToDoリストを日常に取り入れることで、物忘れを防ぐ対策につなげていきましょう。

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加齢による物忘れと認知症の違い

これまでご紹介してきたような物忘れは、加齢やストレスによる一時的なものが多く、生活に支障がなければ過度に心配する必要はありません。一方で、認知症による物忘れは、本人が自覚しにくく、少しずつ進行していくという特徴があります。

たとえば、家族や職場の同僚から物忘れを指摘されることが日を追うごとに増えているにもかかわらず、自分では物忘れが増えたと感じていない場合は、専門的な検査を検討すべき段階にきているのかもしれません。

また、認知症は高齢者だけのものというイメージがありますが、実は若い世代で発症する「若年性認知症」も存在します。実際に、20代で発症した例も報告されており、若いからといって絶対に無縁とは言い切れません。物忘れがひどいと感じているものの、心身の健康には特に問題がないと思っている場合でも、早めに医療機関で相談することをおすすめします。

認知症のチェックリスト

認知症の中で最も多いのが「アルツハイマー型認知症」です。その初期症状として多く見られるのが、前述のような物忘れです。

なかでも、以下の項目に複数あてはまる場合は、認知症の兆候が現れている可能性があります。

  • 同じ話を何度も繰り返すようになった
  • 置き忘れや探し物が増えた
  • 今、何をしようとしていたのか忘れることが多くなった
  • ドアの開けっぱなしや、水の出しっぱなしが目立つようになった
  • 簡単な漢字が思い出せず、書けなくなった
  • 会話中に言葉が出てこないことが増えた
  • 新聞や本を読む機会が減った
  • ATMや券売機など、機械の操作が不安になってきた

こうした変化に複数あてはまる場合は、認知症の初期症状が始まっている可能性があります。自分では気づきにくいことも多いため、家族や身近な人にも確認してもらうことが大切です。早期に気づくことで、適切なケアや治療につなげることができます。

認知症を早期発見するためにできること

認知症は、早期に気づいて対応することで、進行を遅らせることや生活の質(QOL)を維持することが可能になります。そのためにも、以下のような点に意識することが大切です。

違和感を見逃さない

認知症の兆候か、単なる加齢による物忘れかを見分けるポイントは、前述のとおり「本人が自覚しづらいこと」「症状が徐々に進行していくこと」です。

さらに、「意欲の低下」も認知症の重要なサインのひとつとされています。記憶力の低下より先に、好きだった趣味への関心が薄れたり、身だしなみに気を使わなくなったりすることがあります。

日常の中で「いつもと様子が違うな」と感じたとき、その違和感を見逃さず、少し注意を向けてみることが大切です。小さな変化に気づくことが、認知症の早期発見につながります。

認知機能のテストを活用する

認知症を早期に発見するためには、記憶力・判断力・注意力などの認知機能の状態を把握することが大切です。そのための手段として活用されるのが「認知機能テスト」です。

医療機関では、医師による問診に加えて「神経心理学検査」と呼ばれるスクリーニングテストが行われることがあります。なかでもよく使われているのが、「MMSE(Mini-Mental State)」や「長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」といった検査です。

最近では、自宅でもできるオンライン形式のチェックツールやスクリーニング検査があり、これらを活用することで気軽に認知機能の状態を確認できます。

また、一度の検査やセルフチェックで問題が見つからなかった場合でも、認知機能の低下は自分の知らないところで少しずつ進んでいる可能性があります。そのため、定期的に検査やセルフチェックをおこない、変化がないかを継続的に確認することが大切です。

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物忘れがひどい方からのよくある質問

物忘れがひどい場合は何科を受診する?

物忘れが気になるとき、何科を受診すればよいのか迷う方は少なくありません。

基本的には「もの忘れ外来」や「認知症外来」などの専門外来がある医療機関が最適です。これらの外来では、認知機能検査や画像検査、必要に応じて神経内科や精神科と連携した診療を受けることができます。専門外来が近くにない場合は、まずかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門的な診療科へ紹介してもらうのもよい方法です。

「受診するほどではないかも」と迷っている場合でも、不安な気持ちを抱えたままにせず、早めに専門家に相談することが大切です。

50代から物忘れが激しくなった気がするけど大丈夫?

50代に入ってから、急に物忘れが増えたと感じる方は少なくありません。加齢やストレスが原因で一時的に物忘れが増えることもあるため、すぐに深刻な病気を疑う必要はありません。

しかし、若年性認知症は40〜50代に多くみられ、発症の平均年齢は50代前半とされています。物忘れが長期間続いていたり、あるいは日常生活に支障を感じたりする場合は、念のため認知症の可能性も視野に入れ、早めに専門の医療機関を受診することをおすすめします。

不安をそのままにしておくよりも、一度専門家の意見を聞いておくことでこれからの生活に対する備えや安心感にもつながります。気になることがあれば、一人で悩まずに相談してみましょう。

まとめ

今回は、物忘れがひどくなる人の特徴や原因に加えて、認知症との違い、早期発見のためにできることについて解説してきました。

物忘れは、加齢やストレスなど一時的な要因でも起こり得るため、必ずしも病気であるとは限りません。しかし、その頻度や内容、本人の自覚の有無によっては、認知症のサインである可能性もあります。日々の生活の中で「前より物忘れがひどくなったかも」と感じたら、まずは生活習慣を見直すとともに、認知機能のチェックなどを通じて今の自分の状態を客観的に確認してみることが大切です。

『認知症と向き合う365』は、認知症リスクの早期発見をサポートする認知症対策のオールインワンサービスです。オンラインや電話で定期的に認知機能チェックを受けられるほか、MRI検査とAIによる画像解析で、今の脳の状態をより詳しく把握することができます。さらに、ご希望に応じて医療機関の紹介もおこなっています。医師や心理士などの専門スタッフに直接相談できる環境も整っているので「病院に行くかどうか迷っている」といった段階でも安心してご利用いただけます。

物忘れが気になり始めた今こそ、ご自身やご家族の未来の安心のために一歩踏み出してみませんか。ぜひ『認知症と向き合う365』を活用し、将来の脳の健康に備えていきましょう。


【参考文献(ウェブサイト)】

【参考文献(書籍)】

  • 秋下雅弘(2023). 目で見てわかる認知症の予防. 成美堂出版.
  • 朝田隆(2014). まだ間に合う!今すぐ始める認知症予防. 講談社.
  • 朝田隆(2023). 認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること. アスコム.
  • 旭俊臣(2022). 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症. 幻冬舎.
  • 森勇磨(2023). 認知症は予防が9割 ボケない7つの習慣. マガジンハウス.
  • 山川みやえ・繁信和恵・長瀬亜岐・竹屋泰(2022). 認知症plus若年性認知症. 日本看護協会出版会.

この記事の監修者

佐藤俊彦 医師

佐藤俊彦 医師

福島県立医科大学卒業。日本医科大学付属第一病院、獨協医科大学病院、鷲谷病院での勤務を経て、1997年に「宇都宮セントラルクリニック」を開院。
最新の医療機器やAIをいち早く取り入れ、「画像診断」によるがんの超早期発見に注力、2003年には、栃木県内初のPET装置を導入し、県内初の会員制のメディカル倶楽部を創設。
新たに 2023年春には東京世田谷でも同様の画像診断センター「セントラルクリニック世田谷」を開院。
著書に『ステージ4でもあきらめない 代謝と栄養でがんに挑む』(幻冬舎)『一生病気にならない 免疫力のスイッチ』(PHP研究所)など多数。