トップ > 公式ブログ > アルツハイマーになりやすい人の特徴は?早期発見の方法についても解説

アルツハイマーになりやすい人の特徴は?早期発見の方法についても解説

アルツハイマーになりやすい人の特徴は?早期発見の方法についても解説のイメージ画像
アルツハイマーになりやすい人の特徴は?早期発見の方法についても解説のイメージ画像
画像素材:PIXTA

高齢化が進む現代日本において、「アルツハイマー型認知症」は誰にとっても無関係ではいられない病気になりつつあります。

そのため、「どんな人がアルツハイマー型認知症になりやすいのか?」という点に、関心や不安を抱いている方も多いのではないでしょうか。近年の研究の進展により、アルツハイマー型認知症にはいくつかの「なりやすい人の傾向」や「発症リスクを高める因子」が明らかになってきています。

今回は、アルツハイマー型認知症の基礎知識に加え、なりやすい人の特徴や早期発見の方法について紹介します。

アルツハイマー病とは

アルツハイマー病は、「アミロイドβ」と「タウたんぱく」という異常なたんぱく質が脳の神経細胞に過剰に蓄積されることにより、周囲の神経細胞や神経細胞同士をつなぐシナプスに機能障害を起こす脳の病気です。

この障害が進行すると、脳の神経細胞が徐々に死滅し、記憶力・判断力・言語能力・空間認識といったさまざまな認知機能の低下に加え、脳そのものの萎縮を引き起こします。

現時点では、アルツハイマー病を完治させる治療法は確立されていません。そのため、現在の医療では症状の進行を遅らせることを目指した治療やケアが中心となっています。

アルツハイマー型認知症とは

アルツハイマー型認知症は、アルツハイマー病の進行による認知機能の低下により、「日常生活に支障をきたすほど症状が顕著になった段階」での診断名です。認知症と診断された方のうち、約60~70%がこのアルツハイマー型認知症で、認知症のなかでは最も多いタイプとされています。

アルツハイマー病とアルツハイマー型認知症は別の病気ではなく、同一の病気が進行していく過程で名称が使い分けられています。

アルツハイマー型認知症の症状

アルツハイマー型認知症は、発症してからの症状の進行が緩やかであることが特徴で、初期段階では介護やサポートを必要としないケースも少なくありません。しかし、症状が進行していくにつれて、日常生活の多くの場面でサポートが必要となり、最終的には寝たきりになるケースも多く見られます。

ここでは、症状の進行段階を初期・中期・後期に分け、それぞれの代表的な症状を解説していきます。

初期症状

初期には、ごく最近の記憶に関する「もの忘れ」が目立ちます。たとえば、その日の朝食のメニューを思い出せない、同じ質問を何度も繰り返すといった症状があらわれます。

これらは、加齢にともなう自然な物忘れと見分けがつきにくいこともありますが、アルツハイマー型認知症の場合、本人に「忘れている自覚」が乏しいことが特徴です。

そのため、自分の認識と現実のズレを無意識に補おうとする「取り繕い」行動がみられることもあります。たとえば、答えに困ったときに場当たり的な返答でつじつまを合わせる、といった様子がこれに該当します。

中期症状

中期になると、場所や時間の判断がつかなくなる「見当識障害」が進み、当事者の混乱が大きくなります。

また、道具や手足がうまく使えなくなる「実行機能障害」も目立つようになり、食事や歯磨きといった基本的な日常動作がひとりでできなくなります。

しかし、身体はまだ健康なことが多く、家の外に出て目的もなく動き回る「徘徊」をたびたび起こすこともあります。本人にとっては何か目的がある行動と考えていても、周囲からは危険な迷子行動としてみえることがあります。

後期症状

後期になると身体機能そのものが低下し、寝たきりの状態になることが多くなります。そのため、食事や排せつなどの日常動作のほとんどに他者からのサポートが必要になります。

認知機能の障害も高度になり、言葉でのコミュニケーションが難しくなるほか、話しかけても反応せず、表情が非常に乏しくなるケースが多くみられます。

また、身体活動機能の著しい低下により、肺炎などの合併症のリスクも高まります。

画像素材:PIXTA

アルツハイマー型認知症になりやすい人の特徴

アルツハイマー型認知症を引き起こしやすくする「リスク因子」がいくつか知られており、これらの条件に多く当てはまる方はアルツハイマー型認知症の発症リスクが高くなりやすいと考えられています。

ただし、アルツハイマー型認知症の発症については個人差が大きいため、リスク因子に当てはまっていても必ずしも発症するとは限りません。あくまで「なりやすさの傾向」としてとらえることが大切です。

ここでは、アルツハイマー型認知症の代表的なリスク因子を紹介します。

認知症になりやすい人の特徴①:高齢であること

アルツハイマー型認知症の発症リスクにおいて、もっとも大きなリスク因子のひとつとされているのが「加齢」です。年齢を重ねるほど発症の可能性は高まり、高齢になるにつれてアルツハイマー型認知症の有病率は顕著に上昇します。

たとえば、80歳を過ぎると10年ごとにリスクが約2倍になるとされており、85歳を超えると有病率が大きく跳ね上がります。さらに、90歳になると、アルツハイマー型認知症やそのほかの認知症を発症していない人のほうが少数派になるというデータもあります。

認知症になりやすい人の特徴②:糖尿病

糖尿病も、アルツハイマー型認知症の発症リスクを高める因子として知られています。

糖尿病は、血糖値を調整するホルモン「インスリン」の量や働きに異常が生じる病気ですが、この糖尿病の原因であるインスリンは、アミロイドβの分解にも関与していることがわかっています。インスリンの働きが悪いとアミロイドβも分解されにくくなり、脳に蓄積しやすくなります。その結果、アルツハイマー型認知症の発症リスクを高めると考えられています。

実際に、糖尿病があるとアルツハイマー型認知症の発症リスクが約2倍に上昇するという報告もあります。

認知症になりやすい人の特徴③:肥満

中年期における肥満は、アルツハイマー型認知症の発症リスクを高めることが知られています。なかでも、体脂肪が多く筋肉量が少ない「サルコペニア肥満」と呼ばれる状態の方は注意が必要です。

また、大脳の高次機能に関わるたんぱく質の減少や、脳容量の低下・脳の萎縮を引き起こすことがあるとされており、認知機能への悪影響が懸念されています。

認知症になりやすい人の特徴④:高血圧

高血圧は、アルツハイマー型認知症の発症リスクを高める生活習慣病のひとつです。

特に中年期から慢性的に高血圧の状態が続くと動脈硬化が進行し、血管障害を引き起こすことで脳の神経細胞にアミロイドβが溜まりやすくなり、アルツハイマー型認知症になりやすくなるとされています。

また、高血圧は脳血管障害のリスクも高めるため、アルツハイマー型認知症だけではなく、血管性認知症などのほかの認知症のリスクにもつながります。

認知症になりやすい人の特徴⑤:慢性的な短時間睡眠

睡眠は、脳の健康維持にとって不可欠な要素です。特に、慢性的に短い睡眠が続くと、アルツハイマー型認知症の発症リスクが高まることが分かっています。

睡眠中には、脳内に蓄積された老廃物やアミロイドβなどの有害なたんぱく質が排出されるとされており、睡眠不足はこの排出機能を妨げる可能性があります。

具体的には、1日あたり5時間未満の睡眠が続くと、アルツハイマー型認知症になるリスクが約2.6倍高まるという研究データがあります。一方で、10時間以上の過剰な長時間睡眠も認知症リスクを高める可能性があるため、短すぎず、長すぎない睡眠時間を意識することが大切です。

認知症になりやすい人の特徴⑥:社会とのつながりが少ない

社会的なつながりが少ない、いわゆる「社会的孤立」も、アルツハイマー型認知症のリスク因子のひとつとされています。

人とのコミュニケーションは脳の機能を幅広く使うため、人との交流が減ると脳への刺激が少なくなり、認知機能の低下を引き起こしやすくなります。

さらに、うつ状態が長期間続くことで、認知症へと進行するケースもあります。うつ病とアルツハイマー型認知症は初期症状が似ていることがあり、社会的孤立によるうつ状態が長引くことでそのまま認知症へ移行するケースも少なくありません。

アルツハイマーになりやすい人の特徴は?早期発見の方法についても解説のイメージ画像
画像素材:PIXTA

アルツハイマー型認知症を早期発見する重要性

アルツハイマー型認知症は進行性の病気であるため、症状が本格化する前に発見し、早期に治療へとつなげることがとても重要です。

近年では、認知機能の低下を抑え、進行を緩やかにする効果がある薬剤も登場しています。できるだけ症状が軽い早期のうちに発見して治療を開始することで、進行を遅らせる効果に期待できます。

こうした治療効果を最大限に引き出すためにも、日ごろからアルツハイマー型認知症に関する正しい知識をもち、症状が本格的にあらわれる前の段階で異変に気づくことが大切です。

アルツハイマー型認知症を早期発見するためにできること

アルツハイマー型認知症は、症状が現れる前から脳内で変化が始まっていると考えられています。

近年の研究では、発症の10~20年前から、脳にアミロイドβやタウたんぱく質といった原因物質が蓄積し、神経細胞の変性や脳内の異常がすでにはじまっていることが明らかになっています。たとえば、65歳で発症した場合、その兆候は40代半ばからすでにみられている可能性があるということになります。そのため、初期の段階で変化に気づき、適切な対応につなげることが進行の抑制や生活の質の維持につながります。

では、こうした異変にどのように気づけばよいのでしょうか。ここからは、アルツハイマー型認知症を早期発見するために、私たちができる具体的な取り組みを紹介していきます。

認知機能の検査を受ける

認知症の早期発見において、認知機能の変化に気づくことは非常に重要です。

代表的な認知機能検査としては、「MMSE(Mini-Mental State Examination)」や「長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」などがあり、注意力・記憶力・言語能力などを簡単に評価することができます。

また、最近ではインターネット上で手軽にできる簡易的なスクリーニングテストもあるため、そのようなものを定期的に受けて、ご自身の認知機能の「ベンチマーク(基準)」を把握しておくのも有効です。

小さな変化に早く気づければ、医療機関での精密検査につなげることもできます。

MRIなどの脳画像検査を受ける

認知機能の検査に加えて、脳の構造的な変化を可視化できる画像検査もアルツハイマー型認知症の早期発見に役立ちます。

なかでも代表的なのが「MRI(磁気共鳴画像)検査」です。MRIでは、脳の萎縮や病変の有無を高精度に確認することができるため、アルツハイマー型認知症に特徴的な脳の変化をとらえるに適しています。さらに、近年のAIによる画像解析技術の進展により、従来では見逃されがちだった微細な脳の萎縮やわずかな変化も検出できるようになり、より早期の段階で異常をとらえることが可能になっています。

また、診断時には、MRIで撮影した脳画像を同年代の平均的な画像と比較することが一般的ですが、脳は個人差が大きい臓器であるため、他人との比較だけでは早期の異常を見逃してしまうこともあります。そのため、健康な状態のご自身の脳画像を記録しておくことで、将来的な比較がしやすくなり、診断の精度向上にもつながります。

そのほかにも、「CT(コンピューター断層撮影)」や「PET(陽電子放出断層撮影)」、「SPECT(単一光子放射断層撮影)」などの画像検査もあり、医療機関の設備や目的に応じて使い分けられています。

特に、がん検診などでPET検査を受ける機会がある方は、あわせて脳のPET検査を受けることで、アルツハイマー型認知症の早期変化を確認できる可能性があります。検査を受ける際には、医師や技師に脳のPET検査について相談してみるのも一つの方法です。

専門医に相談する(もの忘れ外来の活用)

「最近もの忘れが増えた気がする」「これは年齢のせいなのか、それとも何かの病気かわからない」、そんな不安を感じたときには、専門医による診断が受けられる「もの忘れ外来」の受診を検討してみましょう。

もの忘れ外来では、現在のもの忘れが加齢にともなう自然な現象なのか、あるいは認知症などの病気によるものなのかを、医師が専門的に判断します。問診や神経心理検査(例:MMSE・長谷川式など)に加えて、MRIやCTなどの画像検査を組み合わせることで、より客観的かつ正確に評価することができます。

特に、自分では「まだ大丈夫」と思っていても、家族や周囲が気づくような違和感がある場合には、早めの相談が大切です。早期に相談し、必要に応じて検査を受けることで認知症の早期発見と適切な対処につながります。

認知症については、脳神経内科・脳神経外科・老年内科・内科・精神科などで対応している医療機関が多く、地域によっては専門外来として設けられていることもあります。

アルツハイマーになりやすい人の特徴は?早期発見の方法についても解説のイメージ画像
画像素材:PIXTA

アルツハイマー型認知症に関するよくある質問

アルツハイマー型認知症になりやすい人の口癖は?

アルツハイマー型認知症の初期症状には、うつ病に似た症状がみられることがあります。たとえば、「面倒くさい」といった口癖は、意欲や興味の低下を反映したもので、注意が必要なサインのひとつかもしれません。このような変化はアルツハイマー型認知症の初期段階に多く見られ、早期に気づいて適切な対応をおこなうことで、症状の進行を抑えられる可能性があります。

また、うつ状態が長期化することで認知症へと移行するケースも少なくありません。気分の落ち込みや、やる気の低下が続く場合には、早めに専門の医療機関での相談や検査を検討することが大切です。

アルツハイマー型認知症になりやすい職業は?

アルツハイマー型認知症は、特定の職業に偏って発症するものではありません。肉体労働に従事する方もいれば、大学教授や政治家といった知的職業に就く方が発症する例も多く報告されています。

しかし、日ごろ脳をよく使い、さまざまな刺激を受けている人は、認知症の進行が比較的緩やかだったという報告もあります。ここで重要なのはいわゆる学歴ではなく、日々の脳の使い方です。脳を活発に使う習慣をもつことが認知機能の維持や認知症予防につながっていくと考えられています。

アルツハイマー型認知症になりやすい環境は?

高齢になると、環境の変化に適応しにくくなるため、急激な環境の変化がアルツハイマー型認知症のリスクを高めることがあります。特に、ライフステージの大きな転換点では注意が必要です。

たとえば、退職後に日常の活動量が減少し、外出の機会や人との関わりが少なくなると、脳への刺激が不足しがちになります。こうした生活の変化が認知機能の低下につながり、結果としてアルツハイマー型認知症を引き起こすケースも珍しくありません。

そのため、環境が変わっても積極的に社会活動や趣味に取り組み、生活に刺激を取り入れることが、認知症の予防に重要です。

アルツハイマー型認知症と勘違いされる病気は?

極度の肥満によって一時的に認知機能が低下し、その症状がアルツハイマー型認知症と誤解されるケースがあります。しかし、この場合は肥満を解消することで認知機能が回復することも確認されています。

また、「正常圧水頭症」や「うつ病」など、認知症と似た症状を示すものの、適切な治療によって回復が期待できる「治る認知症」も存在します。これらは見分けが難しいこともあるため、専門医による診断が欠かせません。

少しでも違和感や不安を覚えたら、できるだけ早く医療機関を受診し、正確な診断を受けることが大切です。

女性の方がアルツハイマー型認知症になりやすい?

統計的に見ると、アルツハイマー型認知症の患者数は女性の方が多い傾向があります。これは、女性が男性よりも平均寿命が長く、高齢になるほど発症リスクが高まるためと考えられています。

ただし、高齢になると男女を問わず発症率は上昇するため、「女性だからなりやすい」というよりも、加齢こそが最大のリスク因子であるといえるでしょう。

まとめ

今回は、アルツハイマー型認知症の概要についてご説明するとともに、なりやすい人の特徴や早期発見のためにできることについて解説してきました。

アルツハイマー型認知症は、誰にでも起こりうる病気です。しかし、発症リスクを高める生活習慣や身体の状態を知り、対策を講じることで予防や早期発見につなげることができます。

『認知症と向き合う365』は、認知症リスクの早期発見と生活習慣の改善をサポートする認知症対策のオールインワンサービスです。自宅で手軽に受けられる認知機能チェックや、MRI画像をAI解析してより詳細に脳の状態を確認できる「BrainSuiteⓇ」を含む検査メニューを提供しています。これにより、認知機能と脳の状態の両面から、ご自身の脳の健康状態をチェックすることが可能です。

さらに、医師や心理士などの専門スタッフによるフォローアップメニューも備えており、認知症や脳の健康に関する不安や悩みに寄り添ったサポートを提供しています。

年齢や体調の変化に不安を感じたときこそ、ご自身の脳の状態に目を向けるよいきっかけになります。将来に備えた一歩として、今日からできる認知症対策を『認知症と向き合う365』で始めてみませんか。

アルツハイマーになりやすい人の特徴は?早期発見の方法についても解説のイメージ画像
画像素材:PIXTA

【参考文献(書籍)】

  • 秋下雅弘(2023). 目で見てわかる認知症の予防.成美堂出版.
  • 朝田隆(2023). 認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること.アスコム.
  • 朝田隆/森進(2023). 認知症を止める「脳ドック」を活かした対策.三笠書房.
  • 旭俊臣(2022). 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症.幻冬舎.
  • 森勇磨(2023). 認知症は予防が9割 ボケない7つの習慣.マガジンハウス.

この記事の監修者

佐藤俊彦 医師

佐藤俊彦 医師

福島県立医科大学卒業。日本医科大学付属第一病院、獨協医科大学病院、鷲谷病院での勤務を経て、1997年に「宇都宮セントラルクリニック」を開院。
最新の医療機器やAIをいち早く取り入れ、「画像診断」によるがんの超早期発見に注力、2003年には、栃木県内初のPET装置を導入し、県内初の会員制のメディカル倶楽部を創設。
新たに 2023年春には東京世田谷でも同様の画像診断センター「セントラルクリニック世田谷」を開院。
著書に『ステージ4でもあきらめない 代謝と栄養でがんに挑む』(幻冬舎)『一生病気にならない 免疫力のスイッチ』(PHP研究所)など多数。